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CGコード改訂が示すサステナビリティ経営の新機軸

2026年に改訂されたコーポレートガバナンス・コード(CGコード)は、形式的な順守から実効性のあるガバナンスへの転換を強く打ち出しました。サステナビリティに関する規定が「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」から「取締役会等の責務」へ移されたことは、その象徴です。サステナビリティは、もはや社会への配慮にとどまらず、取締役会が中長期的な企業価値の向上に向けて担うべき経営課題として位置付けられたのです。 近年、日本企業ではESG評価への対応や統合報告書などの情報開示が進みました。一方で、質問票への回答や開示資料の作成が目的化し、サステナビリティ部門は「開示」、経営企画部門は「戦略」、事業部門は「事業」と役割が分断されるケースも見られます。しかし、開示そのものが企業価値を生み出すわけではありません。今回の改訂が求めるのは「開示の高度化」ではなく、社会課題への対応を事業ポートフォリオや研究開発、人材戦略、設備投資、資本配分に組み込む「経営の高度化」です。 その実践に有効なのが、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)です。

「サステナビリティ2.0」の必要性-サステナビリティは、会計モデルなどの現在の5つの主要モデルを超えて、新しいビジョンを構想する必要がある。

TRELLISの記事より。 サステナビリティは転換点を迎えている。現在主流となっている5つのモデル―会計的アプローチ、ロールバック、権力政治、反企業的アプローチ、キャリア志向型―には、それぞれ重大な限界がある。「サステナビリティ2.0」では、基本原則を再確認し、インセンティブを創出し、サステナビリティを事業戦略や業務に統合すべきである。 サステナビリティの5つの主要モデル 「会計モデル」 このモデルの「変革の理論」とは、「測定(および報告)したものを管理する」というものだ。これにより、サステナビリティの実践に会計的な考え方が取り入れられる。その公式は、「データ+情報開示/透明性=環境・社会・ガバナンス(ESG)パフォーマンスの向上に向けた説明責任」だ。 このモデルに基づく一連の報告基準、規制、格付けは、サステナビリティを主流に押し上げる一助となった。しかし、優れた会計は不可欠ではあるが、それだけでは不十分だ。財務会計は、損益を左右したり、ビジネスケースを構築したりするものではない。公認会計は、プラスのインパクトをもたらすものではない。さらに、反対

幸福感を高めるお金の使い方とCSVの機会

幸福感を得るためのお金の使い方について纏めた「Happy Money: The Science of Smarter Spending」という書籍があります。 この本では、幸福感を上げるためのお金の使い方として、①「物ではなく体験を購入しよう(Buy Experiences)」、②「特別なご褒美にしよう(Make it a Treat)」、③「心に余裕を持てるよう時間を買おう(Buy Time)」、④「先に支払って楽しみを倍増させよう(Pay Now, Consume Later)」、⑤「他人のためにお金を使おう(Invest in Others)」の5つを挙げています。このうち、①③⑤は、CSVの機会となります。 ①「物ではなく体験を購入しよう」は、同じ金額を使うのであれば、物を買うよりも、コンサート、旅行などの体験に使ったほうが、幸福度が高いというものです。この理由としては、体験のほうが、他者との交流を伴い、他人に語れるストーリーになりやすいということがあるようですが、直感的にも納得できます。また、モノではなくコト(体験)を買うことは、大量の

中小企業でもサステナビリティ経営は可能なのか?

「中小企業では、サステナビリティにどう取り組めば良いのか?」という質問を受けることがある。サステナビリティは、リソースに余裕のある大企業が取り組むもので、中小企業では対応が難しいという印象があるようだ。 基本的には、中小企業でも、自社事業・バリューチェーンの正負の影響、機会・リスクを評価してマテリアリティを特定し、KPI/目標を設定してPDCAを回すといった基本的なサステナビリティ経営を実践することが望ましいが、体系的に取り組むリソースがないという場合は、まずは、今後、顧客からの要請がさらに強まるであろう、脱炭素や人権への対応、そして業界として特に重要な課題がある場合は、その課題に対応することで良いのではないか。 また、サステナビリティの動きが、産業構造やサプライチェーンを大きく変革し、長期的に事業に大きな影響を及ぼすこともあるので、業界への長期的影響に対しては、感度を高めておくべきだ。 気候変動については、まず温室効果ガス排出量を把握する必要がある。主要な排出源を特定し、排出量を計測または概算する。そのうえで、排出削減の取り組みが可能か考える。

サステナビリティ、気候変動に関連する小説4冊

TRELLISでサステナビリティ、気候変動に関連する小説が紹介されていました。今年紹介されていたものと、昨年紹介されていたもののうち、邦訳されているものは以下4冊です。夏期休暇の読み物としていかがでしょうか。 『オービタル:ある一日の16回の夜明け』サマンサ・ハーヴィー著(早川書房、2026年) 本書は、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在する6人の宇宙飛行士が、1日で16回も地球を周回し、眼下に繰り返される日の出と日の入りを眺める様子を追った作品だ。ハーヴェイは、ISSからの生中継映像を見て、地球の美しさと異様さに圧倒されたと語っており、その想いがこの2024年ブッカー賞受賞作に凝縮されている。この薄手で瞑想的な一冊は、私たちの環境システムと社会システムがいかに密接に絡み合っているかを、思慮深く思い出させてくれる。 『惑う星』リチャ−ド・パワ−ズ著(新潮社、2022年) 妻を亡くした後、遠く離れた惑星で生命の兆しを探る宇宙生物学者はある日、地球に残された、環境問題に深い不安を抱える幼い息子との距離を縮めようと苦闘する。2021年ブッカー賞の最終

サステナビリティの専門家必読の9冊(2026年版)

TRELLISで「サステナビリティ専門家必読の9冊」が紹介されていました。5冊は邦訳されています(加えて1冊は11月に邦訳出版予定)ので、夏期休暇などに読んでみてはいかがでしょうか。 『これからの地球のつくり方: データで導く「7つの視点」』ハナ・リッチー著(早川書房、2025年) 2024年に原書が出版された本書は、リッチーが「Our World in Data」の副編集長兼元リサーチ責任者、およびオックスフォード大学マーティン・グローバル開発プログラムの上級研究員という立場から執筆したものである。大気汚染、気候変動、森林破壊、食糧システム、生物多様性、海洋プラスチック汚染、乱獲という7つの主要な環境問題に関するデータを基に、リッチーは気候変動に対する悲観論と安易な楽観論の両方に異議を唱え、数字は不完全ではあるものの、確かな進展を示していると論じている。ビル・ゲイツはこの本を「目から鱗が落ちるような、必読の一冊」と評した。現状がどれほど悪いのか、あるいは良いのかについて、二極化した世論の議論を乗り切ろうとする専門家にとって、本書は有益な指針とな

コーポレートガバナンス・コード改訂が求めるCSV経営

先般、「日本の稼ぐ力を取り戻す」ことを目的として導入されたコーポレートガバナンス・コード(CGコード)が改訂された。今回の改訂では、コードへの形式的な対応が目的化していることが課題として認識され、原則数を大幅に削減するなど、「実質化」を重視した内容となっている。 サステナビリティに関する規定も大きく見直された。従来は「第2章 株主以外のステークホルダーとの適切な協働」に位置付けられていたが、「第4章 取締役会等の責務」に移され、原則では「取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティを巡る課題に積極的・能動的に取り組むべき」と規定された。 従来の「上場会社は、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題について、適切な対応を行うべき」という規定と比べると、サステナビリティを企業価値向上のための経営課題として位置付ける姿勢がより明確になったといえる。 その背景には、サステナビリティが中長期的な企業価値を左右する重要な経営課題であり、投資家による企業評価においてもサステナビリティ情報の重要性が高まっていることがある。また、

サステナビリティ経営を考える6つのフレーム: 資源制約、時間軸、価値、全体設計、変革および道徳の視点

サステナビリティ経営の創始者の1人、ジョン・エルキントン氏が提唱した「サステナビリティ経営の6つのフレーム」というものがあります。提唱したのは10年くらい前ですが、今でも有効なフレームワークです。 サステナビリティ経営では、財務的リターンと社会課題の解決を両立させることを目指していますが、大部分のビジネスパーソンが、財務リターン中心の思考回路を持っており、なかなか社会課題解決との両立と結び付けることができません。そこには、思考のフレームが必要です。ジョン・エルキントン氏は、以下の6つの思考フレームがあるとしています。 【リソース・フレーム(資源制約の視点)】 1970年代の「成長の限界」以来、「資源の限界」は、サステナビリティ思考の基本フレームです。人口の増大、生産・消費の拡大により資源が不足するとの予測は、昔からあります。1990年代頃からは、3Mなどの企業が、資源・エネルギーの効率利用がコスト削減を通じて、企業利益に貢献するという考えを取り入れるようになりました。その後、それが進化しておりサーキュラー・エコノミーなどのビジネスモデルも生まれて

持続可能なデータセンターを構築するには何が必要か?エネルギーや水などの持続可能性に加えて、地域との丁寧なエンゲージメントが不可欠

世界的なAIブームの中でデータセンターへの投資が急増しています。AIインフラへの設備投資額は、早ければ2027年にも1兆ドルを突破する見通しで、これはルイジアナ購入以来、GDPに占める割合として米国史上最大のインフラ整備規模となります。すでに、石油・ガスの上流部門への年間投資額を上回っています。 しかし、大量のエネルギー、水を使用するデータセンターの持続可能性には懸念があります。TRELLISが主催する「サステナブルAIインフラフォーラム」で、ハイパースケーラー、電力会社、開発業者、金融関係者、認証機関、投資家、コミュニティ・エンゲージメントの専門家などが、「持続可能なデータセンターとはどのようなものか、そしてそれを大規模に実現するには何が必要なのか?」を議論しました。TRELLISの記事でその概要が紹介されています。 米国ではデータセンター建設への反対意見は過去1年間で急激に高まっており、超党派的な政治問題となっています。地域社会の反対により現在停滞しているプロジェクトの総額が約1,560億ドルに上り、6か月で2倍以上に膨れ上がっているとの指摘

サステナビリティ経営の要諦。「先導する価値」「スケールの重要性」「トータルの価値」「ビジネスとの統合」など

拙著「サステナビリティ-SDGs以後の最重要生存戦略」から「サステナビリティの要諦」を示す。 サステナビリティは、「先導」してこそ価値がある。  もし社内に、「競合より先に取り組むと損をする」という考えがあるとすると、基本的にサステナビリティをコストと考えているという証左ではないか。確かに、サステナビリティの取組みは、短期的には利益を生まないことも多い。しかし、これは未来に向けた投資と考えるべきだ。サステナビリティの取組みが自社にとって将来的にどのような価値を生み出すかを理解した上で投資をすることが大事だ。長期的にサステナビリティに向けて世界が動く中で、CSVとして価値を生み出せれば、先導した企業が先行者利益を獲得できる。  また、サステナビリティを推進するための取組みは、業界をあげて、場合によっては業界や企業という枠組みを超えて実施することが有効な場合もある。サステナビリティを促進するためのルールやインフラを整備するような場合だ。こうした場合は、自社だけで対応するのではなく、「他者を巻き込む」ことが必要となる。この場合も、他者との協働を先導する

2026年、サステナビリティはどのように再定義されつつあるか?

今年、グローバルでサステナビリティがどのように変化しているか。TRELLISの記事の内容を紹介します。 2026年、サステナビリティは、AI、エネルギー需要の増加、サーキュラーエコノミーに関する法規制といった要因を受けて、目標設定やコミュニケーションではなく、実践的な取り組みに注力するようになっています。 サステナビリティの新たな時代が到来しつつあり、その焦点は、業務の実行、インフラ、そしてその両方を構築するための組織的な権限に置かれています。これは、自主的なコミットメントや野心的な目標、広報戦略が主流だった昔に比べ、はるかに困難な課題です。 ここ数カ月の間で、金融、製造、物流、不動産、消費財など、さまざまな業界の企業のサステナビリティ担当責任者たちは、その取り組みに関する情報発信は以前と変わらないものの、現場での実務はますます忙しくなっている、と言っています。 彼らは、何をしようとしているかというよりも、具体的にどのように実行するかという点に焦点を絞っています。問われるべき課題や、その解決に向けた取り組みは、より難しく、より具体的なものになって

ワールドカップサッカーのファンは、サステナビリティ意識が強い

サッカーワールドカップが始まりました。7/20の決勝まで寝不足の人も増えるでしょう。 ワールドカップの度に話題になるのが日本サポーターのゴミ拾いです、青いゴミ袋を手に、スタンドに散らばったペットボトルや紙コップなどのごみを黙々と回収する姿が世界的に賞賛されています。 「清掃員の仕事を奪う」などの声もありますが、実際に雇用の脅威として清掃員からクレームがあるわけでなければ、第三者がコメントする必要もないでしょう。ゴミをどんどん増やして、それを清掃する仕事をどんどん増やすべきと考えている人がいるわけでもないでしょう。仮にそういう考えの人がいえれば、サステナビリティとは真逆の思想と言えます。 サッカーは、スポーツの中ではサステナビリティの優等生とされています。スポーツハラスメント対策に先行的に取り組んでおり、Jリーグでは各クラブの気候変動対策を数値化し、順位付けする取り組みを始めたりしています。 また、GlobeScanの最近の調査によると、ワールドカップサッカーのファンは、一般の人々に比べて、社会的責任を果たしているブランドから商品を購入したり、天然

螺旋的に発展するサステナビリティ経営

世の中は螺旋的に発展しているという。対立する2つの考え方の間を行ったり来たりしながら、それぞれの良いところを取り入れつつ螺旋的に発展する。 サステナビリティに関連するところでは、利益・株主重視の経営と、環境・社会への影響やマルチステークホルダーに配慮する経営の間を行ったり来たりしている。完全にどちらかに振り切ることはないが、どちらへの意識が高いかは時代により変化している。 サステナビリティ経営は、単純化すると以下のように変遷してきている。 -1990年代の環境経営:企業活動が生み出す負の影響としての環境問題に対応 -2000年代のCSR経営:環境に加え人権などの社会側面の負の影響にも社会的責任として対応 -2010年代前半のCSV経営:環境・社会問題解決と事業利益・成長を両立させ、正の影響を生み出すことを目指す -2010年代後半以降のESG経営:環境・社会問題への対応を経営に統合に統合することを含め、人的資本など非財務資本の強化により企業価値向上を目指す ESG経営においても、2015年のパリ協定合意、SDGs採択から暫くは、環境・社会問題への

「CSOが影響力を高めるための4つの方法」:予算や権威の限られるChief Sustainability Officerは、どのように影響力を高められるか?4つの方法を示します。

サステナビリティ部門の予算は、通常、マーケティングや研究開発(R&D)部門の予算のほんの一部に過ぎない。どうすれば目標を達成できるだろうか?TRELLISの記事を紹介します。 主なポイント: ・サステナビリティ担当者のうち、企業戦略に大きな影響力を持っていると回答したのは約4分の1にとどまる。 ・大きな変革は、権限と同じくらい影響力によってもたらされるものであり、当初は権限が限られているCSO(サステナビリティ責任者)こそ、影響力を最も必要としている。 ・重要なポイントの一つは、サステナビリティの財務的価値を定量化し、ビジネス部門が既に使用している指標を用いて提示することである。 「十分に長い『てこ』と、それを置く『支点』さえあれば、私は世界をも動かすことができる」と、ギリシャの数学者であり物理学者であるアルキメデスは言った。今日のCSO(Chief Sustainability Officer)たちは、世界を変える責任を任されているが、そのための『てこ』は与えられていない。 かつてCSOの役割は、企業の環境負荷が世界の問題にどのような影響を与え

無形資産/非財務資本を評価し融資する制度がスタート。新しい制度が広く活用され、サステナビリティ経営を促進することに期待

先般、「企業価値担保権」制度が始まりました。事業の将来性や技術力といった目に見えない価値を担保に、銀行などの金融機関が企業に融資する制度です。事業の将来性や技術力といった目に見えない価値を担保に、銀行などの金融機関が企業に融資する制度です。 銀行が企業に融資する場合、土地や建物などの有形資産を担保として設定するのが主流ですが、今後は知的財産、ブランド、顧客基盤などの無形資産を含む事業全体を担保にする「企業価値担保権」が認められるようになります。これまで融資を受けにくかった新興企業の成長や中小企業の再生のための資金需要などに応えやすくなると期待されています。 この無形資産価値の向上は日本企業の課題となっています。1990年代くらいからのポスト産業資本主義社会では、企業の差別化の源泉は知識となり、知的資本やそれを生み出す人的資本の重要性が高まりました。 そのため近年では、企業価値の多くを無形資産が占めるようになり、米国企業(S&P500)では、1975年に17%だった企業価値に占める無形資産の割合が2005年には80%、2020年には90%となってい

レアアースリスクがサーキュラーエコノミーを加速し、イラン戦争がカーボンニュートラルを加速する。地政学とサステナビリティが絡み合う時代には、サステナビリティ経営にもより高度なインテリジェンスが求められる。

サステナビリティ経営においては、“フォーカシング・イベント(Focusing Event)”への感度の高さが重要だ。 フォーカシング・イベントとは、マスコミや市民、政策担当者が急速に社会課題に注目し、対策を進めるきっかけとなる出来事のことで、日米の政権交代なども含む。 サステナビリティを促進することにつながるこれまでのフォーカシング・イベントとしては、以下のようなものがあった。 2018年、鼻にストローが突き刺さったウミガメの動画、餓死したクジラの胃の中から大量のプラスチックごみが出てきた画像などがSNSで広く共有されたことで、海洋プラスチック問題が急速に注目されるようになった。 2017年、フォルクスワーゲンのディーゼル不正問題を受けて、欧州自動車メーカーが、ディーゼル車でCO2規制に対応する戦略が狂い、EVシフトを進めざるを得ない状況になったため、欧州で、2035年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止する合意がなされるなど、急速に自動車の脱化石燃料化、EVの化の動きが進んだ。 2013年、バングラデシュのラナ・プラザ崩落事故で、アパレル

ジョン・コッターの「変革のための8段階のプロセス」は、企業のサステナビリティ経営に向けた変革、国際社会や国家のサステナビリティ推進に向けた変革、人口減少の中で地域を持続可能にしていくための変革など、様々な変革に応用できる。

リーダーシップ論で有名なジョン・コッター、ハーバードビジネススクール名誉教授は、多くの企業が変革に失敗している理由とその成功確率をどう高めるかを研究しました。市場環境の変化が不確実で急速な現代では、組織はそれに適応するために変革していかなければなりません。コッターは、研究結果を「変革のための8段階のプロセス」としてまとめています。 8段階のプロセスは、以下です。 ①危機意識を高める 企業の場合は、市場や競合の状況などのファクトを分析し、自社にとってのリスクや機会を可視化するなどして「危機意識」を共有します。 ②変革推進のための連帯チームを築く 変革をリードするためのスキル、人脈、信頼、評判、権限を備えたチームを築きます。 ③ビジョンと戦略を生み出す 変革に導くためにビジョンを生み出し、ビジョンを実現するための戦略を立案します。簡潔で心躍るビジョンや戦略を描けるかが、変革の成否を左右します。 なお、コッターはビジョンを「将来のあるべき姿を示すもので、なぜ人材がそのような将来を築くことに努力すべきなのかを明確に、あるいは暗示的に説明したもの」と定義し

社会課題解決イノベーションを生み出すインドの価値観「ジュガードの6原則」

先日、私の故郷の氷見市出身の藤子不二雄Ⓐ氏の代表作「忍者ハットリくん」がインドで大人気だと聞いて、何故だろうと調べてみました。 理由としては、 ① 大家族、ご近所関係中心、子どものいたずらなどの内容がインドの多世代同居文化と親和性が高かった。 ② ハットリくんが披露する術は、身近な道具で窮地を脱する創意工夫に満ちており、「限られたリソースの中で知恵を絞る(ジュガード)」インドの価値観と共鳴した。 などがあるようです。 ここで出てきた「ジュガードの精神」は、サステナビリティ経営で重要な社会課題解決イノベーションと親和性の高いものです。ジュガードの精神は、インドで多く生まれている社会課題を創造的に解決するイノベーションの源泉となっていると考えられています。 ジュガードとは、ヒンディー語で「革新的な問題解決の方法」とか「独創性と機転から生まれる即席の解決法」という意味です。ジュガードには、6つの基本原則があります。これら6つの原則は、インド以外でもイノベーション創出のために重要なものです。 原則1【逆境を利用する】 ジュガード起業家は、様々な社会問題な

アップルのサステナビリティはけん引役がいなくなっても進んでいる。経営合理性の観点からオペレーションに埋め込まれたとも言えるが、サステナビリティのリーダーで居続けられるかは不透明だ。

アップルが環境進捗報告書を公開した。2013年にEPA(米国環境保護局)長官からアップルに転じてアップルのサステナビリティを牽引してきたリサ・ジャクソン氏が本年1月に退任し「アップルがサステナビリティから撤退した」と言われていたが、報告書の内容はその見方に反するものだ。 「製品全体のリサイクル素材比率が史上最高の30%に達した。」「全製品パッケージからプラスチックを完全に排除した。」「2015年比で温室効果ガス排出量を60%超削減しながら、同期間に売上が78%成長した。」など、アップルのサステナビリティは着実に進んでいる。 米国の反ESGのトレンドの中で、アップルは役員報酬のESG指標連動部分を廃止し、リサ・ジャクソン氏も退任した。ESGの政治リスクを避けているようにも見える。一方で、これまでにオペレーションに埋め込んだサステナビリティは進んでいる。 アップルはサステナビリティを推進することで、資源使用量を削減しコストを低減している。バージョン素材の使用量を減らしたことで地政学リスクの影響も受けにくくなっている。サステナビリティが経営的にも合理性

シナリオ分析は特定のシナリオに掛けるものではなく、すべてのシナリオに備えたうえで、変化の兆しを感度良く捉えて対応すべきもの

地政学リスク、AIの進化や気候変動の影響など、世界の不確実性は高まる一方です。こうした不確実性の高い状況において、意思決定のツールとして有効なのが、長期シナリオ分析です。未来を確実に予測することは不可能としつつ、自社に影響を及ぼす要因の変化を想定しつつ、起こりうる可能性のある複数の未来(シナリオ)を策定し、意思決定のガイドとします。 シナリオ策定の基本的流れは、以下の通りです。 ① 社会の変化動向をとらえるための情報をPESTLE(Politics, Economy, Society, Technology, Legal, Environment)などのフレームに基づき収集し、その中から自社事業に影響を与える変化要因(ドライビングフォース)を抽出 ②ドライビングフォースの中から、自社事業へのインパクトが特に大きく、不確実性の高いものをシナリオの骨格となるキードライビングフォースとして設定 ③キードライビングフォースの変化の組合せにより複数のシナリオを策定 ④現実がどのシナリオに近づいているかを理解するための先行指標を設定しつつ、各シナリオに対応し

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