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「京浜工業地帯の父」浅野総一郎は、サーキュラーエコノミーの先駆者でもあった

私の故郷である富山県氷見市出身の偉人として真っ先に名前があがるのは浅野総一郎です。明治維新から日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦という激動の時代に、この先日本にとって必要となる事業は何か考え、石炭、セメント、海運、造船などの事業を次々と立ち上げ、京浜工業地帯の礎を築き、「京浜工業地帯の父」と呼ばれています。 浅野総一郎は、「九転十起の人」とも呼ばれ、失敗してもくじけない、不屈の精神でも知られています。浅野総一郎はまた、「世の中には無用なモノはない」という精神も持っていました。総一郎は、「大根の切れ端でも漬物になる。この世で利用価値のないものはない。自分は廃棄物利用の天才だ」と言っていたそうです。今でいえばサーキュラーエコノミーにつながる考え方です。 浅野総一郎が事業家として飛躍するきっかけとなったのは、この精神にもとづく廃棄物の活用、石炭の営業先である横浜ガス局が処理に困っていたコークスの活用です。ガスを製造するために石炭を蒸し焼きにすると残骸としてコークスが大量に発生します。また石炭から出るガスを精製する際にはコールタールが残留物となります。横

2026年のサステナビリティ戦略。サステナビリティが企業価値につながる事例が増える一方で逆風も吹く時代、企業は全力疾走すべき時、減速すべき時、小さな一歩を踏み出すべき時を見極めて柔軟に対応することも必要

サステナビリティが企業価値につながる事例は増えているが、一方で反ESGの動きもある。こうした時代において、企業はどのようにサステナビリティ戦略を舵取りすべきか。TRELLISの記事を紹介する。 2025年が明らかにし、2026年がすでにサステナビリティに関して再確認していることは、「緊張とトレードオフ」が常にサステナビリティ経営の核心であり、そして近い将来もそうあり続けるだろうことだ。 サステナビリティは常に浮き沈みを繰り返してきた。しかし、2020年代初頭の主流化から現在の極端な政治的反発への移行は、基盤を揺るがすものとなっている。 昨年、我々は 『2025年のサステナビリティ戦略の立て方』 を発表し、この分野が経験したことのない時代に企業がいかに戦略的であるべきかを考察した。調査の結果、我々が「Sustainability Tension Management」と呼ぶ能力—利益(Profit)、環境(Planet)、人々の幸せ(People)のバランスを最適化する方法について戦略的な選択を行う能力—が不可欠であることが明らかになった。リーダー

サーキュラーエコノミーの不都合な真実

先日の日経ビジネスに「循環型経済の『不都合な真実』」という記事が掲載されている。同記事によれば、サーキュラーエコノミーは、以下のような課題を抱えている。 リサイクルは環境負荷を増やすことがある。 製品や資源を回収して再利用するには、エネルギーと新しい資源が必要で、リサイクルするより新しく作ったほうが環境負荷の低い場合もある。コンクリートについて、EUは解体廃棄物のリサイクルによってセメント需要を5~15%減らせると想定していた。しかしケンブリッジ大学の報告によれば、「コンクリートを砕いて骨材として再利用すると、従来の骨材を使うよりも多くのセメントが必要になることが多い」「リサイクルによる資源節約効果は、品質の低い材料を再加工するために投じる追加エネルギーコストで帳消しにされる」という。 リサイクルが増えても資源の消費量は減らない 現状では、廃棄物の総量よりも消費資源の総量のほうが多く、すべての廃棄物100%リサイクルできたとしても、新しい資源の投入が必要となる。リサイクルは、消費拡大という根本問題の解決策にはならず、「リサイクルしているから大丈夫

マイクロソフトがデータセンターの負の影響に対応し、地域の電力料金を上昇させない、水使用を最小限とし使用する以上の水を補充するなどのコミットメントを発表。負の影響がもたらすリスクへの迅速な対応はサステナビリティ経営の参考となる。

AIが急速に普及する中、そのインフラとしてのデータセンターの建設も急速に進んでいる。しかし急速な変化は必ず負の影響ももたらす。データセンター建設に関しては、日本国内でも排熱、排気、排水、騒音、日照権などへの懸念から一部地域で反対運動が起こり、計画が頓挫している。 米国では、2025年に25件のデータセンタープロジェクトがキャンセルされており、2024年の6件から大きく増加している。反対の最も大きな要因は水使用で、反対のある地域の40%で争点となっている。次いでエネルギー消費と電気料金の上昇が反対要因となっている。 こうした動きを受けて、マイクロソフトは、AIインフラの成長は地域との信頼関係がなければ成り立たないとして、「コミュニティ・ファーストAIインフラ計画」を発表した。この計画・イニシアチブは、以下の5つのコミットメントから構成される。 1. データセンターが地域の電気料金を上昇させないよう必要なコストを支払う。 2. 水使用を最小限とし使用する以上の水を補充する。 3. 地域のための雇用を生み出す。 4. 地域の病院、学校、公園、図書館のた

2026年のサステナビリティは、地政学的分断、AI普及の影響を受けて、気候変動への適応、淡水需要への対応、サプライチェーンのレジリエンス、自社ならではの考えにもとづくサステナビリティ経営・情報開示などが重要となる。

2026のサステナビリティトレンドに関する情報が共有されている。多くは今年1年というよりは、今後のトレンドを示している。サマライズすると以下のような感じだろうか。 【ドライバー】地政学的分断、AIの普及 【重要となる取り組み】気候変動への適用、エネルギー政策、淡水需要への対応、労働力の確保、サプライチェーンのレジリエンス、自社ならではの考えに基づくサステナビリティ経営・情報開示 ①    地政学の影響で国家・地域間でサステナビリティの取組みが分断化され、その結果グローバルでの気候変動緩和の歩みが弱まり気候変動への適応が重要となる。 ②    AIの普及による電力需要増加、米国などの再エネ反対・化石資源活用の動きと中国の再エネ技術の進化の中、地政学要因も踏まえたエネルギー政策が重要となる。 ③    AIとデータセンターの拡大がエネルギーに加え水需要を増加させ、水不足や食料システムへの影響が懸念される。 ④    DE&I反対、移民排斥などの流れがある中、高齢化が進む社会で労働力をいかに確保するがが課題となる。 ⑤    地政学的分断と気候変動の影

チーフ・サステナビリティ・オフィサーは不要になりつつあるのか?批判派は、サステナビリティが財務的・運営上の重要性を帯びる中で、権限を伴わない影響力では不十分であるためCSOの存在意義が失われつつあると主張する。擁護派は、気候リスクから地政学、AIに至る複雑性の増大が、統合的なシステムレベルの経営幹部をこれまで以上に不可欠にしているとの反論を展開する。

過去20年間、チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)は、サステナビリティの進化の象徴的存在だった。企業がこの役職を設置することは、気候変動、社会インパクト、ガバナンス、透明性、レジリエンスなどへの真剣な取り組みを示すものだった。 状況は変わりつつある。一部では、CSOはもはや先駆者というより遺物と見なされ、建設的な存在というより官僚的だと見なされる傾向にある。CSOはますます不要になりつつあるのだろうか?答えはイエスでありノーでもある。 一方で、サステナビリティ戦略とその実行は事業部門や機能部門(調達、財務、法務など)に分散され、単一の部門が必要とされるケースは減少している。他方で、経営陣レベルにサステナビリティ戦略、目標、コミットメント、透明性を「所有」する専任の責任者が必要である。つまり、それは議論の余地がある。 CSOは不要であるとの主張の理由 一部の企業では、サステナビリティは全員の仕事にもなれば、誰の仕事にもならない。気候リスクは財務部門が担う。サプライチェーン排出量は調達部門が管理する。製品のサステナビリティは研究開発部門の管

サステナビリティとサステナビリティ経営の変遷。1990年代の環境経営、2000年代のCSR経営、2010年代のESG経営を経て、反ESGの動きもある中2020年代のサステナビリティ経営はどう進化するか?

サステナビリティおよびサステナビリティ経営が歴史的にどう進化してきたか、改めておさらいする。 サステナビリティは経済成長の負の側面としての環境問題への対応からはじまった。1962年にはレイチェルカーソンが「沈黙の春」で化学物質の汚染問題を提起している。日本でも1950年代後半から1970年代の高度経済成長期において、工場などから発生した有害物質によって公害病が引き起こされた。WWFやグリーンピースが設立されたのもこの時代だ。 1972年には、ローマクラブが「成長の限界」を発表し、資源と地球の有限性に着目してコンピューターシミュレーションを行い「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」と警鐘を鳴らしている。同年には、環境についての世界で初めての大規模政府間会合「国際連合人間環境会議」が開催された。 1970年代には地球温暖化も科学者の間で注目されるようになり、1985年に初めての地球温暖化に関する世界会議が開催され、1988年にIPCCが設立された。 サステナビリティの考え方については、1987年に「環

「生産性と人間性をどう両立するか」「成功できるかではなく、役に立てるかを人生の軸とせよ」サステナビリティ経営や生き方に重要な示唆を与えるP.F.ドラッカーとジム・コリンズの対話

経営にサステナビリティを統合するうえでの理論的支柱となっている代表的経営思想家として、P.F.ドラッカー、ジム・コリンズがあげられる。 ドラッカーは、 「マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させる上で三つの役割がある。①自らの組織に特有の使命を果たす、②仕事を通じて働く人たちを生かす、③自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献することだ」 というサステナビリティ経営の基本となる考え方を提示している。 コリンズは、 「ORの重圧をはねのけ、ANDの才能を活かす」「基本理念を維持し、進歩を促す」「社運をかけた大胆な目標(BHAG)」「針鼠の概念」「10X型リーダー」「20マイル行進」「銃撃に続いて大大砲発射」 というサステナビリティ経営を進めるうえで重要なコンセプトを提示している。 その2人の対話についてコリンズが語っている。「ビジョナリー・カンパニー」を出版したばかりのころ、コリンズはドラッカーと会う機会があった。実際に会ったのはその1日だけだが、その1日がコリンズの生き方を決定づけたという。 ドラッカーの家は質素で

サステナビリティリーダーは2026年に何をすべきか?

2025年の初頭、チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)に主な役割を尋ねた場合、「変革を推進し続け、経営陣の理解を得て、サステナビリティを企業経営に統合するためのビジネスケースを構築すること」だった。今後の数年間は、こうした路線が維持される見通しだった。 この見通しは正しく、企業によるサステナビリティへの取り組みは、金融・政治・社会面で大きな逆風に見舞われながらも、ほぼ変わらない水準を維持している。実際、多くの企業が取り組みを深化させている。しかしサステナビリティの業務全体に影響を及ぼす2つの重要な転換点があった。 第1に、メッセージングの重点が外部コミュニケーションから内部コミュニケーションへと移行している。取り組み自体は継続されているものの、現状の環境下でそれを推進しようという意欲は減退し、その方向性も劇的に変化した。気候変動への取り組みや社会インパクトを外部に強調する代わりに、現在のコミュニケーションはより内部に焦点を当て、ビジネス上の利益を重視するようになっている。 第2の関連する変化は、サステナビリティが組織内で主に法的・規制上

ビジネスモデル変革にサステナビリティ目標を組み込む方法

サステナビリティ目標の達成とビジネスの成長、すなわちCSVを実現するにはビジネスモデルと組織構造を変革する必要がある。最近のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー記事「ビジネスモデル変革にサステナビリティ目標を組み込む方法」が、イタリアのエネルギー大手エネル、スイスのセメント大手ホルシム・グループなどの世界を代表するCSV企業を例にあげて、CSV実現のための3つの課題とそれに対処する手法を提示している。以下概要を紹介する。 多くのグローバル企業がサステナビリティ目標を公約として掲げているが、こうした約束を果たすには、デジタル技術やAIによって引き起こされた変革に匹敵または凌駕するレベルでビジネスモデルや組織構造を変革する必要がある。 DXを主導したのは大多数がシリコンバレーの企業だったが、サステナビリティの先駆的企業の多くは欧州、中南米、アフリカに拠点を置いている。そうした先駆的企業の10社以上を研究対象とし、エネル、ホルシム・グループ、モロッコのリン酸塩・肥料大手OCPグループ、ブラジルの製紙・パルプ会社スザノなどについては、詳細な分析を

サステナビリティ人材には、世界の持続可能性への貢献と自社の長期的企業価値向上という2つの目的が混ざった曖昧な概念を受け入れて、状況に応じて使い分ける「ネガティブ・ケイパビリティ」が必要だ。

以前、 サステナビリティ経営の目的は2つある と書いた。「世界の持続可能性に貢献すること」と「長期的に企業価値を向上すること』だ。本質的には、企業がサステナビリティに取り組む目的は「世界あるいは人類の持続可能性に貢献するため」だ。しかし、多くの企業を巻き込むには「サステナビリティは企業価値を長期的に高める」という認識を広げることが必要ということから始まり、政策や市場の変化も相俟ってサステナビリティ経営を通じた企業価値向上の可能性も以前より高まっていることから、サステナビリティ経営の目的を「長期的に企業価値を高めること」と考える人も増えているだろう。 実際のサステナビリティの取組みは、2つの目的が混ざった曖昧なものとなっている。サステナビリティ経営により企業価値を高めると言いつつ、社会的要請に対応して必ずしも企業価値に直結しないCO2排出削減や人権対応などを進めている。 以前のブログでは、サステナビリティ経営の目的は明確にしたほうが良いと書いたが、実際のサステナビリティ経営は2つの目的が混ざった状態で進められていくとすると、曖昧な状況を受け入れつつ

長期的に世界に本質的な影響を及ぼすのは、人口動態、気候変動、AI。人口が増加から減少に転じ、気温が高止まりする世界に向けて早めに社会のあり方を構想し、AIの良い面を活かして準備すべきだ。

今後世界はどう変化していくか?マクロ環境分析のフレームワークとして、社会(Society)、技術(Technology)、経済(Economics)、環境(Environment)、政治(Politics)の切り口で分析するSTEEPなどがある。この中で長期的かつ本質的な変化をもたらすものとして、Sに含まれる「人口動態」がある。 ドラッカーは、「未来について言えることは、二つしかない。第一に未来は分からない、第二に未来は現在とは違う」と未来は予測不能としつつ、「すでに起こった未来は、体系的に見つけることができる」とし、その1番目に人口動態を挙げている。ドラッカー曰く、「人口の変化は、労働力、市場、社会、経済にとって最も基本となる動きである。すでに起こった人口の変化は逆転しない。しかも、その変化は早くその影響を現す」。人口動態は世界のあり方に最も大きな影響を与える要因のひとつだ。 「技術(T)」と「環境(E)」も世界に長期的かつ本質的な変化をもたらす。現代においては、TのAI、Eの気候変動が特に重要な変化をもたらす要因となっている。一方で、「経済(

ESGに代わる概念として提唱されるRational Sustainabilityとは?

「社会に価値を生み出すことで利益を創出する」「社会価値というパイを拡大することを通じて利益というパイの一部の恩恵を得る」経営のあり方を提唱する書籍”GLOW THE PIE”でフィナンシャル・タイムズのブックス・オブ・ザ・イヤーを獲得しているアレックス・エドマンズ氏が、ESGに代替する概念として「Rational Sustainability(合理的なサステナビリティ)」を提唱している。以下エドマンズ氏の 記事 の内容を紹介する。 反ESGの風が吹き荒れている。ESGは顧客のリターンを犠牲にしているとして、米国ではESGを考慮するファンドへの投資を禁止する法案も出されている。財務リターンと社会価値の両立は可能とするESG信奉者もESGという言葉を使わなくなり、ESGを新たな儲けの手段として利用してきた機会主義者は方向転換して次の流行を探している。 またESGという用語は対立を招いている。ESG神格化派は実質的価値を創出できる取り組みよりもESGとラベル付けできる取り組みを優先し、ESG懐疑派はESGというラベルに対してアレルギー反応を示している。

ドラッカーの「5つの質問」で考える、サステナビリティ経営におけるステークホルダー・エンゲージメントのあり方

ドラッカーが開発した組織の自己評価ツールとして「5つの質問」がある。社会が組織で構成され、人々が必要とするもののほとんどが組織により提供される組織社会において、組織が正しい成果を上げるための思考を促す、シンプルですが非常に有効なツールだ。 ドラッカー曰く、「組織はすべて、人と社会をより良いものにするために存在する。すなわちミッションがある。目的があり、存在理由がある。」 正にそのとおりだ。組織と社会は共存関係にあり、組織は社会をより良いものにするために価値を提供しているからこそ存在が許され、企業であれば売上や利益というリターンを得ることができる。 以下が「5つの質問」だが、これらを問うことにより、企業その他の組織が社会の中で自らのなすべきことが明らかとなり、正しい行動を取ることができる。 1. われわれのミッションは何か? 2. われわれの顧客は誰か? 3. 顧客にとっての価値は何か? 4. われわれにとっての成果は何か? 5. われわれの計画は何か? この「5つの質問」は本当に良く出来ていて、企業が自社のミッション/パーパスや活動が時代にマッチ

サステナビリティに関してもはや成り立たない5つの前提:グローバル目標や合意、ESG情報開示、ステークホルダー資本主義などはサステナビリティに向けた変革につながらない。

主なポイント: 多くの企業が依存してきたサステナビリティの前提条件は、気候変動対策を前進させるどころか、むしろ阻害している可能性がある。 それは、グローバル目標への依存や、市民がサステナビリティについて共通認識を持っているという前提が成り立たないからだ。 代わりに、サステナビリティの専門家は新たなアプローチに注力する必要がある。例えば、自らがコントロールできる領域に注力し、影響力を行使できない領域では野心を抑えるといった手法で、成果を上げるべきである。 サステナビリティが2018年から2021年にかけての行き過ぎたイデオロギー主導から「健全な調整」の真っ只中にあるという主張が良く聞かれる。これに対する主流の見解は、政治的反発を避けつつ、ビジネスケースへの注力を倍増させるべきだというものだ。 これは便利な説明ではあるが、あまり説得力のあるものではない。サステナビリティが盛り上がっていたピーク時には、サステナビリティが儲かるといったビジネスケースの説明が良く聞かれた。これは誰もが恩恵を受けるWin-Winのストーリーとして語られたが、実際は非現実的な

「サステナビリティを適切に実践することで、収益性が21%向上する。」サステナビリティのビジネスケースに関する最新のレポート

サステナビリティのビジネスケースに関する議論は終わった。過去10年間の研究は、サステナビリティが優れた財務パフォーマンスにつながることを示している。 主なポイント: ・新たなデータによると、サステナビリティを適切に実践することで、収益性を21%向上させるなど、優れた財務実績につながることが示されている。 ・企業は顧客向けに価値提案を定義することが多いが、取締役会、経営幹部、事業部門リーダー向けには価値提案を行っていない。 ・サステナビリティを「特徴」として、コスト削減の「推進要因」として、成長の「手段」として位置付ける価値提案を活用することで、企業は収益と価値創造を向上させることができる。 サステナビリティ分野においてビジネスケースを構築し提示する必要性は、一時的な後退はあったとしても、さらに高まっている。政治的反発に加え、ESGファンドのパフォーマンスに対する懐疑論や不安定な経済情勢が相まって、サステナビリティ部門は環境・社会イニシアチブが財務パフォーマンスにつながる論拠を示すよう、ますます強く迫られている。     最近IMPACT...

「気温よりも人間の福祉へのインパクトを成功の指標とすべき。健康、農業などの適応戦略を重視すべき」気候変動に対するビル・ゲイツ氏の主張は現実を見据えている

ビル・ゲイツ氏がブログ「Gates Notes」で10月29日に公開したエッセイ「気候に関する3つの厳しい現実(Three Tough Truths About Climate)」が話題となっている。これまで気候変動対策を重視してきたビル・ゲイツ氏がスタンスを変更したと解釈されている。 「3つの厳しい現実」とは以下だ。 1.気候変動は深刻な問題だが文明を終焉させるものではない 2.気温は気候対策の進歩を測定する指標として最適なものではない 3.気候変動に対抗するには健康と繁栄が最も重要だ これまでの気候変動対策では、気温上昇を止めることが最優先とされてきたが、気温上昇は人類の文明を終焉させるものではなく、最貧国の人々が貧困や病気に苦しむことを防ぐのがより重要だという主張だ。 主張の背景には、豊かな国々が貧困国の支援を削減していることに対する懸念がある。また、気温上昇を抑えることを重視するあまり、気候変動対策投資の優先順位を間違えているのではないかとの懸念がある。 例えば、数年前にある低所得国がGHG排出削減のために合成肥料を禁止したが、農業の生産

市場メカニズムのもとで社会課題解決をしようとしてもうまくいかないことがある。道徳的規範に訴える視点を忘れてはいけない。

マイケル・サンデル著「それをお金で買いますか-市場主義の限界-」は、いろいろなことを考えさせられる著書です。 サンデル氏は、現在は、あらゆるものがカネで取引される時代、あらゆるものが市場メカニズムに組み込まれる時代だが、その中で道徳的規範が失われ、社会が腐敗しているのではないか、と懸念しています。 ローマ教皇のミサの無料チケットをダフ屋がネットで販売する、イヌイットが伝統文化保全のために認められているセイウチ猟の権利をハンターに販売する、人の額やパトカーを企業の広告媒体として活用するなどの事例は、確かに市場の行き過ぎを感じさせます。 本ブログの中心テーマであるCSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)は、市場メカニズムを通じて社会課題を解決しようとするものですが、サンデル氏の考え方には、十分耳を傾ける必要があります。 社会課題解決は、人々の道徳的規範に訴えかける側面を持っており、道徳的規範を考慮しないで、市場メカニズムを通じた社会課題解決を行おうとしても、うまくいかない可能性があります。 社会学者リチャード・ティトマスは

ブランドがサーキュラリティを高めるために活用できる8種類の消費財経験の終了形態

主なポイント: ・企業は消費者との関係構築初期に製品ストーリーを伝えることに多くの時間を費やすが、製品体験の終了時にも意味を加える機会があることに気づいていない。 ・8つの異なる「終了形態」を理解することで、製品デザイナーは冷めた取引的な関係を超え、意味のある終了体験を創出できる。 ・これにより消費者の行動変容を促し、企業のサーキュラー目標達成を加速できる。 消費者の購買プロセスにおける導入段階と使用段階の理解は大きく進歩している。ブランドはマーケティングを通じて感情的なつながりを構築し、魅力的で使い心地の良い製品を設計している。 しかし、企業はこうした消費者体験の終了段階について十分に考えてこなかった。消費者が製品の使用を中止した後—その製品がリサイクル、アップサイクル、再販される前の段階—人々は「エンドギャップ」と呼ばれる領域に入る。この段階は往々にして感情や意味を欠いている 消費者体験の終了段階は、単なる材料や資源の冷めた取引以上のものとなり得る。それは感情的な体験の場となり、サーキュラー型ビジネスモデルの成功に不可欠なものとなる。なぜなら

サステナビリティを推進するのは戦略やテクノロジーではなく人材だ。CSOが従業員を巻き込む3つの方法

企業の様々なサステナビリティ活動の成果——エネルギー消費、公正な労働慣行、ガバナンス体制、水資源・廃棄物削減など——は大きく注目されている。こうした成果はプロセスによって生み出され、そのプロセスは人によって推進される。したがってチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)...

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