top of page

ドラッカーの「5つの質問」で考える、サステナビリティ経営におけるステークホルダー・エンゲージメントのあり方

  • takehikomizukami
  • 13 分前
  • 読了時間: 3分

ドラッカーが開発した組織の自己評価ツールとして「5つの質問」がある。社会が組織で構成され、人々が必要とするもののほとんどが組織により提供される組織社会において、組織が正しい成果を上げるための思考を促す、シンプルですが非常に有効なツールだ。


ドラッカー曰く、「組織はすべて、人と社会をより良いものにするために存在する。すなわちミッションがある。目的があり、存在理由がある。」


正にそのとおりだ。組織と社会は共存関係にあり、組織は社会をより良いものにするために価値を提供しているからこそ存在が許され、企業であれば売上や利益というリターンを得ることができる。


以下が「5つの質問」だが、これらを問うことにより、企業その他の組織が社会の中で自らのなすべきことが明らかとなり、正しい行動を取ることができる。


1. われわれのミッションは何か?

2. われわれの顧客は誰か?

3. 顧客にとっての価値は何か?

4. われわれにとっての成果は何か?

5. われわれの計画は何か?


この「5つの質問」は本当に良く出来ていて、企業が自社のミッション/パーパスや活動が時代にマッチした適切なものとなっているかをレビューする際にも有効だ。企業の各部門などの組織内組織のマネジメントにも活用できる。


この5つの質問において、私が特に重要だと考えているのは、「われわれの顧客は誰か?」と「顧客にとっての価値は何か?」だ。


ここでいう顧客には、活動対象としての顧客だけでなく、パートナーとしての顧客も含まれる。企業に関して言えば、主なステークホルダーとしては、一般的に「顧客」「株主・投資家」「従業員」「取引先」「地域社会」「環境/未来社会」などが挙げられるが、「顧客」以外のステークホルダーがパートナーとしての顧客と言える。


組織が成果をあげるためには、こうしたパートナーとしての顧客を満足させることも必要となる。


「顧客にとっての価値は何か?」について重要なことは、「いかなる組織といえども、顧客に聞かなければ、何を成果とすべきかはわからない」「顧客にとっての価値を想像してはならない。必ず顧客自身に聞かなければならない。」ということだ。自分たちが勝手に考えたものではなく、顧客の側から見た価値を提供するには、ステークホルダー・エンゲージメントが必要となる。


パートナーとしての顧客について自社の「顧客は誰か?」を見極め、ステークホルダー・エンゲージメントを通じて「顧客にとっての価値は何か?」を理解し、自社の成果および計画に落し込み、マネジメントする。それがサステナビリティ経営における重要なミッションと言える。


(参考)

「経営者に贈る5つの質問」P.F.ドラッカー著(ダイヤモンド社、2009年)

 
 
 

最新記事

すべて表示
サステナビリティに関してもはや成り立たない5つの前提:グローバル目標や合意、ESG情報開示、ステークホルダー資本主義などはサステナビリティに向けた変革につながらない。

主なポイント: 多くの企業が依存してきたサステナビリティの前提条件は、気候変動対策を前進させるどころか、むしろ阻害している可能性がある。 それは、グローバル目標への依存や、市民がサステナビリティについて共通認識を持っているという前提が成り立たないからだ。 代わりに、サステナビリティの専門家は新たなアプローチに注力する必要がある。例えば、自らがコントロールできる領域に注力し、影響力を行使できない領域

 
 
 
「サステナビリティを適切に実践することで、収益性が21%向上する。」サステナビリティのビジネスケースに関する最新のレポート

サステナビリティのビジネスケースに関する議論は終わった。過去10年間の研究は、サステナビリティが優れた財務パフォーマンスにつながることを示している。 主なポイント: ・新たなデータによると、サステナビリティを適切に実践することで、収益性を21%向上させるなど、優れた財務実績につながることが示されている。 ・企業は顧客向けに価値提案を定義することが多いが、取締役会、経営幹部、事業部門リーダー向けには

 
 
 
「気温よりも人間の福祉へのインパクトを成功の指標とすべき。健康、農業などの適応戦略を重視すべき」気候変動に対するビル・ゲイツ氏の主張は現実を見据えている

ビル・ゲイツ氏がブログ「Gates Notes」で10月29日に公開したエッセイ「気候に関する3つの厳しい現実(Three Tough Truths About Climate)」が話題となっている。これまで気候変動対策を重視してきたビル・ゲイツ氏がスタンスを変更したと解釈されている。 「3つの厳しい現実」とは以下だ。 1.気候変動は深刻な問題だが文明を終焉させるものではない 2.気温は気候対策の

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page