マテリアリティ特定においては、基本的なサステナビリティイシューに関するダブルマテリアリティ評価と経営イシューに関する議論を分けて行うべき
- takehikomizukami
- 9月22日
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現在のサステナビリティ経営におけるマテリアリティ特定は、以下の2つまたは3つのアプローチで行うのが良いと考えている。
① ESRSをベースとしたダブルマテリアリティ評価
② パーパス・ビジョン・経営戦略にもとづく自社ならではのマテリアルイシューの特定
③ ISSB/SSBJの対象となる企業は、これに加えてSASBスタンダードの適用可能性を確認
これらは、サステナビリティ経営、一部投資家の期待、情報開示要請に対応するものだ。
ESRSは、これまでのサステナビリティの歴史や知見にもとづく、サステナビリティ経営の王道とも言えるマテリアリティ特定のアプローチを提示している。これはマテリアリティ特定の基本的手法として採用すべきだと思う。ただし、CSRD/ESRSの対象となっていない企業ではESRSの細かい規定に忠実に対応する必要はなく、本質的な部分だけ採用すれば良い。
サステナビリティ経営の基本的なマテリアリティは、ESRSのアプローチをベースにして効果的・効率的にIRO分析を行って特定する。IRO分析は、基本的なサステナビリティイシューの環境や人々へのインパクト、リスク・機会の財務影響を評価する。これが①のESRSをベースとしたダブルマテリアリティ評価だ。
ISSB/SSBJの適用対象となる企業は、ESRSアプローチで評価した財務影響にもとづきマテリアリティとされるイシューを説明する。加えて、ISSB/SSBJで求められるSASBスタンダードの適用可能性を確認する。これが③のSASBスタンダードの適用可能性確認だ。
上記の財務影響にもとづいて説明されるものが所謂シングルマテリアリティだ。なお、ダブル、シングルという議論があるが、そもそもサステナビリティ経営とはダブルマテリアリティにもとづき行うものだ。シングルマテリアリティは、投資家等を対象にした情報開示においてのみ使われるもので、サステナビリティ経営の一側面を表現したものにすぎない。
(参考)マテリアリティ特定の課題に関するブログ
サステナビリティ経営におけるマテリアリティは、基本的にはESRSベースのダブルマテリアリティで良いのだが、どうも一部の経営者や投資家はそれではもの足りないようだ。特に日本の経営層や一部投資家などは、マテリアリティに経営イシューを含めたがる。
そのため多くの日本企業では、ダブルマテリアリティ評価のプロセスに経営イシューを含めているが、これにより適切なマテリアリティ評価ができなくなるのは問題だ。
(参考)経営マテリアリティの課題に関するブログ
経営イシューについては、ESRSベースの基本的なマテリアリティ評価とは別に、経営層が意思を持って推進するものとして議論ベースで特定するのが良いと思う。投資家を含む主要ステークホルダーとの対話も踏まえて経営層が意思を持って特定する。経営戦略策定プロセスで実質的に経営マテリアリティが特定されていれば、それを採用することで良いのではないか。これが②のパーパス・ビジョン・経営戦略にもとづく自社ならではのマテリアルイシューの特定となる。
マテリアリティ特定は、冒頭に述べた①および②または①~③で行うべきだと思う。これについては、継続的に提唱していきたい。


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