このブログでも何度もお伝えしていますが、サステナビリティ経営で最も重要な取り組みは、マテリアリティ特定です。
社会・環境課題のトレンドを理解し、自社事業・バリューチェーンが社会・環境課題とどう関係しているか、どのような負の影響を及ぼしているか、どのような正の影響を及ぼせるポテンシャルがあるか、自社の競争力や企業価値にどう影響するかなどの観点から、自社のサステナビリティ経営において重点的にリソースを投入すべき領域を特定します。
しかし、多くの企業では、サステナビリティ経営の中心となるマテリアリティ特定が形式的なものとなっているか、間違ったやり方で特定してしまっています。これは、マテリアリティ特定を支援するコンサルティング会社側がサステナビリティ経営の知見を持っていないことも原因です。
マテリアリティ特定で良く見られる課題としては、以下があります。
・経営レベルの課題を羅列して、経営戦略との違いが分からなくなっている。
・経営レベルの課題が中心となり、本来評価すべき社会・環境課題との関わりを評価できていない。
・「環境」といったほぼ意味のない粒度でマテリアリティを特定している。
・形式的なプロセス、開示上の見せ方にこだわり中身が伴っていない。
こうした課題も踏まえつつ、マテリアリティ特定で最も重要なことは、「何故それがマテリアリティなのか、納得性高く説明できる」ことです。サステナビリティ担当者が腹落ちし、経営層が腹落ちし、投資家などステークホルダーに納得性高く説明できる必要があります。
サステナビリティ経営においては、マテリアリティ特定はダブルマテリアリティが基本ですが、社会・環境・ステークホルダーのインパクトの観点から、何故それがマテリアリティなのか、どのような負のインパクトを及ぼしているか、どのような正のインパクトを及ぼすポテンシャルがあるかをしっかり理解する必要があります。そのためには、ステークホルダーやサステナビリティ専門家とのエンゲージメントも重要でしょう。ただ、ここで留意すべきは、ステークホルダーや専門家にスコアをつけてもらい、それをインパクト評価に反映するといった目的でエンゲージメントするのではなく、「何故それが重要なのか」を理解するためにエンゲージメントすることです。ステークホルダーや専門家のつけるスコアは結構いい加減なもので、それをインパクト評価にそのまま活用するのはお勧めできません。
自社への影響、財務影響についても「何故それが重要なのか」をファクト、ロジックをもとに、機会・リスク、自社の重要資本への影響などの観点からしっかり理解する必要があります。多くの場合は、現在の中計に書いてあるからなど、現状追認になってしまっています。それではマテリアリティ評価の意味がありません。
この「“WHY”を理解する」というのがマテリアリティ特定プロセスで最も重要です。
その他、マテリアリティは、長期的なゴールを目指して戦略的に取り組むべきもの、社会的要請が高まり取り組みが求められているもの、過去も未来も基本として取り組むべきものなど、それぞれ位置付けが異なります。マテリアリティ特定を戦略につなげるためにも、位置付けを明確にして共有すべきです。
マテリアリティ特定に100点満点はないかと思いますが、本質的な部分をしっかり理解し、共有できる形にすべきです。そうすれば、組織としてのサステナビリティのリテラシーも向上し、サステナビリティ経営の質も上がるでしょう。
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