いつも「マテリアリティ特定はサステナビリティ経営において最も重要な取り組み」と言っている。それは間違いない。
サステナビリティ経営におけるマテリアリティとは、以下のいずれかだ。
① 自社が大きな負の影響を及ぼしており責任をもって対応すべきイシュー
② 自社が強みを生かしてサステナブルな世界に向けて大きく貢献できるイシュー
③ 対応如何が自社の財務、企業価値に大きな影響を及ぼすイシュー
より厳密にサステナビリティ経営とESG経営を分けて考える場合は、①②がサステナビリティ経営におけるマテリアリティ、③がESG経営におけるマテリアリティで、これらは重なることもある。
典型的なイシューとしては、①バリューチェーンにおける人権侵害防止、②顧客のウェルビーイングに貢献する製品開発、③人的資本強化/従業員エンゲージメント向上といったイメージだ。
サステナビリティやESGにおけるマテリアリティは上記のようなイシュー候補をグローバルスタンダードなどから抽出し、ステークホルダーエンゲージメントなどを通じて自社が及ぼすインパクトを評価し、ファクト、ロジックベースで自社財務への影響を評価して特定する。
最近のマテリアリティ特定では、これに「経営マテリアリティ」を加えたいという要望がある。「経営マテリアリティ」とは何なのかは必ずしも明確ではないが、経営における重要課題、本業において取り組むべき重要課題として中計策定時などに検討するものだ。経営理念やビジョンに書いてあることがそのまま経営マテリアリティになることも多いイメージだ。
率直に言うと、これまで意味のある経営マテリアリティを見たことがない。それよりも、経営マテリアリティを含めることで、マテリアリティの粒度が大きくなり、サステナビリティに関するマテリアリティが「環境」など意味のないものになっているケースが見受けられる。
私も10年くらい前は、「経営計画とマテリアリティが統合されていない」と言っていたが、形だけ統合されて、肝心のサステナビリティ経営のマテリアリティが形骸化しては本末転倒だ。
「経営マテリアリティ」を設定するのであれば、サステナビリティ経営におけるマテリアリティをしっかり特定することを前提として、「本質的に重要な経営マテリアリティとは何か?」「それをマテリアリティとして設定することで何が変わるのか?」などを十分考えてほしい。
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