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サステナビリティが市民や消費者から広くサポートを得るにはどうすれば良いか?-言葉や成果に対する分かりやすさが必要

  • takehikomizukami
  • 5月17日
  • 読了時間: 3分

“How to effectively respond to environmental rollbacks”というサステナビリティメディアTRELISの記事で、「現在のサステナビリティのアプローチは、トランプ政権の反サステナビリティの動きに対応できていない」とし、サステナビリティを市民や消費者に分かりやすい、共感が得られるものにしていく必要があると述べられている。


確かに、現在のサステナビリティは、あまりにもエリート主義で、複雑で分かりにくい。政策はカーボンニュートラルに向けた利益が出るのに時間がかかるものが中心で、短期的に市民や消費者が利益を得られないという批判につながる。サステナビリティ・コミュニティ内の協力体制はバラバラで、ESG、SDGs、レポーティング、気候変動、生物多様性、サーキュラーエコノミー、人権、人的資本、DEI、ガバナンス、コンプライアンスなど、一度に多くの課題を進めることに主眼が置かれている。大部分の市民や消費者には何が何だか分からないだろう。一方で、サステナビリティのメリットについて一般の人々を巻き込むための広範な取り組みは行われていない。


TRELLISの記事では、サステナビリティが市民や消費者の理解や共感を得るための3つのアプローチを紹介している。


① サステナビリティ成功の恩恵を明らかにする

サステナビリティが人々のより良い生活、豊かさ、安全や健康につながることを伝える。サステナビリティの取組みが、雇用を生み出し、健康を増進し、人々の幸せにつながることなど、サステナビリティの取組みにより人々がどのような恩恵を受けられるかを分かりやすく伝える。


② 草の根活動を国家レベルのムーブメントにする

サステナビリティに関する本質的な活動、実際に市民や消費者を巻き込んで変化を起こしている活動は、草の根レベルで行われている。こうした活動を国家レベルに広げていく必要がある。1960年代には、空気や水の汚染を防止しようとする運動が草の根レベルから国家レベルに広がり、環境汚染防止の法制化につながった。同様に、現在草の根レベルで行われ成功を収めつつある取組みをもとに国家レベルに広がるサステナビリティの戦略を構築する。


③ サステナビリティの言葉を現在の人びとに伝わるものとする

サステナビリティに関する言葉は、親しみにくく、エリート主義の匂いがする。サステナビリティへの支持層を拡大するには、現在政策アジェンダを推進している多くのエリートの枠を超えた、より広範な広がりが必要だ。そして、広がりのためにはより多様な利害関係者を包含する新たな言葉が必要となる。消費者や有権者にはあまり理解されておらず、政治的に利用されやすい「持続可能性」、「ESG」、「DEI」といった用語は、アクセスしやすく広く市民が理解し支援できるような親しみやすい言葉に再考する必要がある。


サステナビリティは、エリート主義、理想の押し付け、市民や消費者に寄り添っていないなというイメージを持たれている。サステナビリティが広がり、より本質的なものとなるには、言葉や成果に対する分かりやすさを突き詰めていく必要があるだろう。


(参考)”How to effectively respond to environmental rollbacks”, TRELLIS

 
 
 

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