top of page
検索
  • takehikomizukami

マテリアリティ特定、特に「自社にとっての重要度」は、サステナビリティ経営の一丁目一番地

マテリアリティ特定は、サステナビリティ経営の最も基本的かつ重要なもので、サステナビリティ経営を進めるとなった場合に、最初に取り組むべきものです。マテリアリティは、言い換えると「重要課題」で、マテリアリティ特定とは、気候変動、水、廃棄物、生物多様性、人権など、様々なサステナビリティ課題がある中で、自社が重点的に取り組むべき課題を評価し、特定するものです。


マテリアリティは、もともとは、投資家向けに企業価値に重要な影響を及ぼす要因を示すものでしたが、サステナビリティの世界では、これに加え、企業活動が社会・環境、ステークホルダーに重要な影響を及ぼす要因という側面からの評価も併せて実施するのが一般的です。


実際、企業のマテリアリティ特定プロセスでは、GRI、ISO26000、SDGsなどのサステナビリティ課題をリストアップしたスタンダードを参考に、評価対象となるサステナビリティ課題を整理し、「自社にとっての重要度」と「ステークホルダーにとっての重要度」を評価し、マテリアリティ・マトリックスを描いたうえで、右上の課題をマテリアリティとして特定することが基本的なやり方となっています。


ここで、自社にとっての重要度=企業価値に重要な影響を及ぼすサステナビリティ課題で、この観点だけで特定するマテリアリティを財務的マテリアリティ、こうした考えをシングル・マテリアリティと言います。投資家向けの情報開示を求めるTCFD、SASB/ISSBなどは、シングル・マテリアリティを重視しています。


一方で、企業が社会・環境に及ぼす悪影響を軽減するためにCSRを推進してきたGRIなどは、ステークホルダーにとっての重要度=社会・環境/ステークホルダーに重要な影響を及ぼすサステナビリティ課題を重視しています。自社にとっての重要度に加え、ステークホルダーにとっての重要度を考慮してマテリアリティを特定する考え方をダブル・マテリアリティといいます。


多くの企業のサステナビリティの取り組みは、GRIベースのCSRからスタートしているため、マテリアリティ特定もダブル・マテリアリティの考え方に基づいています。マテリアリティ特定を支援するサステナビリティ・コンサルティング会社も同様で、ダブル・マテリアリティに基づく支援が一般的です。


投資家向け情報開示という観点からは、シングル・マテリアリティの考え方で、企業価値に重要な影響を及ぼすマテリアリティのみを特定することもあり得ます。しかし、自社の企業活動が社会・環境/ステークホルダーに大きな影響を及ぼしている場合、長期的には、評判や規制、投資家や顧客からの選好を通じて、企業価値にも影響を及ぼす可能性があります。そうした観点も含め、マテリアリティ特定は、ダブル・マテリアリティの観点から行うべきだと思います。


一方で、現在のほとんどの企業のマテリアリティ特定においては、シングル・マテリアリティに関連する「自社にとっての重要度」評価を十分に精査できていません「サステナビリティ課題は、自社ならではの強み、自社ならではのビジネスモデルに長期的にどのような影響を及ぼすか?」「それがもたらす重要な機会とリスクは何か?」そうした論点をしっかり整理して、ファクトベースでしっかり精査できているケースは、ほとんどありません。


マテリアリティ特定は、各サステナビリティ課題と自社ビジネスとの相互影響関係を精査し、サステナビリティの経営的意味合いを理解するプロセスですので、特に「自社にとっての重要度」は、サステナビリティ経営の一丁目一番地と言えるほど重要です。


次回以降は、この点も含め、あるべきマテリアリティ特定のプロセスを整理していきたいと思います。

閲覧数:143回0件のコメント

最新記事

すべて表示

シェアードバリューを生み出すには、螺旋的発展の思考・マインドセットが重要だ。

とかく世の中の議論は、二元論になりがちです。大きな政府か小さな政府か、日本型経営か欧米型経営か、物質的豊かさか精神的豊かさか、利益追求か社会価値の創造か、気候変動は真実か陰謀か、いずれが正しいのか、いずれを追求すべきかといった議論になりがちです。 そのため、古いパラダイムから新しいパラダイムにシフトするときには、まず極端に振れてしまう傾向があり、古いパラダイムの良さは忘れ去られる傾向があります。し

サステナブルな製品のマーケティング戦略はどうあるべきか?

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2024年7月号に掲載されている「サステナブルな製品はどのように売り込むべきか」という論文は、サステナブルな製品のマーケティングに関する基本的な視点を提供している。 この論文では、サステナブルな製品と顧客・消費者をシンプルに3つに分類している。 【サステナブルな製品】 「独立型」:サステナビリティ特性が既存ベネフィットにまったく影響を及ぼさない製品。天

「食の単一化」が進む時代、ローカルの食文化を守ることが、生態系と食料の持続性を維持する

先日のNHKスペシャルで「食の単一化」がテーマになっていました。「金に糸目をつけず世界の果てまで美食を求めるフーディーと呼ばれる人たちがいる一方で、世界の大半がわずかな種類の穀物由来の加工食で胃袋を満たす極めていびつな時代に私たちはいる。80億人の食を満たすために、トウモロコシや大豆などわずか数種類の穀物由来の加工食に依存する結果、地球環境に大きな負荷がかかり生態系が破壊され、加工食による糖、油に

Comments


bottom of page