top of page

マテリアリティ特定、特に「自社にとっての重要度」は、サステナビリティ経営の一丁目一番地

takehikomizukami
2022年7月30日
読了時間: 3分

マテリアリティ特定は、サステナビリティ経営の最も基本的かつ重要なもので、サステナビリティ経営を進めるとなった場合に、最初に取り組むべきものです。マテリアリティは、言い換えると「重要課題」で、マテリアリティ特定とは、気候変動、水、廃棄物、生物多様性、人権など、様々なサステナビリティ課題がある中で、自社が重点的に取り組むべき課題を評価し、特定するものです。


マテリアリティは、もともとは、投資家向けに企業価値に重要な影響を及ぼす要因を示すものでしたが、サステナビリティの世界では、これに加え、企業活動が社会・環境、ステークホルダーに重要な影響を及ぼす要因という側面からの評価も併せて実施するのが一般的です。


実際、企業のマテリアリティ特定プロセスでは、GRI、ISO26000、SDGsなどのサステナビリティ課題をリストアップしたスタンダードを参考に、評価対象となるサステナビリティ課題を整理し、「自社にとっての重要度」と「ステークホルダーにとっての重要度」を評価し、マテリアリティ・マトリックスを描いたうえで、右上の課題をマテリアリティとして特定することが基本的なやり方となっています。


ここで、自社にとっての重要度=企業価値に重要な影響を及ぼすサステナビリティ課題で、この観点だけで特定するマテリアリティを財務的マテリアリティ、こうした考えをシングル・マテリアリティと言います。投資家向けの情報開示を求めるTCFD、SASB/ISSBなどは、シングル・マテリアリティを重視しています。


一方で、企業が社会・環境に及ぼす悪影響を軽減するためにCSRを推進してきたGRIなどは、ステークホルダーにとっての重要度=社会・環境/ステークホルダーに重要な影響を及ぼすサステナビリティ課題を重視しています。自社にとっての重要度に加え、ステークホルダーにとっての重要度を考慮してマテリアリティを特定する考え方をダブル・マテリアリティといいます。


多くの企業のサステナビリティの取り組みは、GRIベースのCSRからスタートしているため、マテリアリティ特定もダブル・マテリアリティの考え方に基づいています。マテリアリティ特定を支援するサステナビリティ・コンサルティング会社も同様で、ダブル・マテリアリティに基づく支援が一般的です。


投資家向け情報開示という観点からは、シングル・マテリアリティの考え方で、企業価値に重要な影響を及ぼすマテリアリティのみを特定することもあり得ます。しかし、自社の企業活動が社会・環境/ステークホルダーに大きな影響を及ぼしている場合、長期的には、評判や規制、投資家や顧客からの選好を通じて、企業価値にも影響を及ぼす可能性があります。そうした観点も含め、マテリアリティ特定は、ダブル・マテリアリティの観点から行うべきだと思います。


一方で、現在のほとんどの企業のマテリアリティ特定においては、シングル・マテリアリティに関連する「自社にとっての重要度」評価を十分に精査できていません「サステナビリティ課題は、自社ならではの強み、自社ならではのビジネスモデルに長期的にどのような影響を及ぼすか?」「それがもたらす重要な機会とリスクは何か?」そうした論点をしっかり整理して、ファクトベースでしっかり精査できているケースは、ほとんどありません。


マテリアリティ特定は、各サステナビリティ課題と自社ビジネスとの相互影響関係を精査し、サステナビリティの経営的意味合いを理解するプロセスですので、特に「自社にとっての重要度」は、サステナビリティ経営の一丁目一番地と言えるほど重要です。


次回以降は、この点も含め、あるべきマテリアリティ特定のプロセスを整理していきたいと思います。

 
 
 

最新記事

すべて表示
CGコード改訂が示すサステナビリティ経営の新機軸

2026年に改訂されたコーポレートガバナンス・コード(CGコード)は、形式的な順守から実効性のあるガバナンスへの転換を強く打ち出しました。サステナビリティに関する規定が「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」から「取締役会等の責務」へ移されたことは、その象徴です。サステナビリティは、もはや社会への配慮にとどまらず、取締役会が中長期的な企業価値の向上に向けて担うべき経営課題として位置付けられたの

 
 
 
「サステナビリティ2.0」の必要性-サステナビリティは、会計モデルなどの現在の5つの主要モデルを超えて、新しいビジョンを構想する必要がある。

TRELLISの記事より。 サステナビリティは転換点を迎えている。現在主流となっている5つのモデル―会計的アプローチ、ロールバック、権力政治、反企業的アプローチ、キャリア志向型―には、それぞれ重大な限界がある。「サステナビリティ2.0」では、基本原則を再確認し、インセンティブを創出し、サステナビリティを事業戦略や業務に統合すべきである。 サステナビリティの5つの主要モデル 「会計モデル」 このモデ

 
 
 
幸福感を高めるお金の使い方とCSVの機会

幸福感を得るためのお金の使い方について纏めた「Happy Money: The Science of Smarter Spending」という書籍があります。 この本では、幸福感を上げるためのお金の使い方として、①「物ではなく体験を購入しよう(Buy Experiences)」、②「特別なご褒美にしよう(Make it a Treat)」、③「心に余裕を持てるよう時間を買おう(Buy Time)」

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page