サステナビリティを通じて企業価値を向上する非財務資本の戦略的強化のカギは、企業の強み、ビジネスモデル、経営戦略との統合。価値創造プロセスでは、自社の差別化の源泉となる強み、ビジネスモデルをベースに経営戦略と非財務資本戦略の統合を描いてほしい
- takehikomizukami
- 9月25日
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サステナビリティを通じて企業価値を向上する方法としては、まず私の専門でもあるCSVのアプローチがある。
環境・社会課題を機会と捉えてイノベーティブにビジネスを創造する製品・サービスのCSV、環境・社会課題の解決とバリューチェーンの持続性・生産性向上を同時実現するバリューチェーンのCSV、ビジネスを支える基盤を環境・社会課題を解決する方向に変えることを通じて市場創造・競争力強化につなげるビジネスエコシステムのCSVを推進して企業価値を向上する。
サステナビリティを通じて企業価値を向上するもう1つのアプローチとして非財務資本の強化がある。人的資本、知的資本、社会・環境資本、自然資本といった非財務資本を戦略的に強化することを通じて企業価値を高めるものだ。
人財の能力・生産性を高める(人的資本)、イノベーション創出力を高める(知的資本)、ステークホルダーとの信頼関係・協働力を高める(社会・関係資本)、原材料の持続性など生態系サービスの活用性を高める(自然資本)ことを通じて企業価値を向上する。
非財務資本の戦略的強化(非財務資本戦略)のカギは、企業の強み、ビジネスモデル、経営戦略との統合だ。これは価値創造プロセスで描画すべきものだが、多くの企業が統合報告書などで描いている価値創造プロセスは形式的なものとなっている。
自社が培ってきた差別化の源泉となる強みは何か?ユニークな技術、ブランドの信頼性、オペレーションの卓越性、顧客との関係性など企業それぞれの強みがあるだろう。これを強化するのも非財務資本戦略だ。
自社が他社と差別化して財務・非財務の価値を生み出してきたビジネスモデルの特長は何か?経営戦略としてそのビジネスモデルをどう展開していくのか?経営戦略実行のためにはどのような人財、技術、関係性構築などが必要か?経営戦略が明確になっていれば、強化すべき非財務資本、非財務資本戦略も明確になる。そして経営戦略と非財務資本戦略が統合される。
日本企業の価値創造プロセスが形式的なものになっている、経営戦略と非財務資本戦略の結びつきが見えない背景には、強み、ビジネスモデル、経営戦略が明確になっていないことがある。日本企業にもユニークな強み、ビジネスモデルを持っている企業は多い。それをベースとして経営戦略と非財務資本戦略の統合を描くことはできそうなのだが、どうだろうか?


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