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サステナビリティを推進するのは戦略やテクノロジーではなく人材だ。CSOが従業員を巻き込む3つの方法

  • takehikomizukami
  • 10月12日
  • 読了時間: 6分

企業の様々なサステナビリティ活動の成果——エネルギー消費、公正な労働慣行、ガバナンス体制、水資源・廃棄物削減など——は大きく注目されている。こうした成果はプロセスによって生み出され、そのプロセスは人によって推進される。したがってチーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)にとって、職務の重要な部分は環境の科学的知識を得るよりもコミュニケーションの領域——すなわち従業員エンゲージメント——にこそある。


サステナビリティの議論は、プロセスやワークフロー、製品仕様、サプライチェーン、指標などを扱う。これらはすべて重要であり、組織に明確で測定可能な方法で責任を求める。しかし最も基本的なレベルでは、サステナビリティのインパクトは戦略やテクノロジーだけで生み出されるものではない——それは人によって生み出される。


従業員をCSOのパートナーに変えるには、サステナブルな考え方を企業プロセスだけでなく日々の意思決定にも組み込む必要がある。そうすれば、投資の正当化、意思決定の迅速化、顧客への価値提案の強化、そして事業全体での協調的な行動の醸成につながる。


そのためのアプローチは無数にあるが、以下の3つの方法で従業員とエンゲージメントするのが効果的だ。


1.    すでに存在するサステナビリティのサポーターを見つけて活かす


多くの人々を駆り立てる生来の善意のおかげで、ほとんどの組織には、たとえ職務とは無関係であっても、すでにサステナビリティを深く気にかけている中核的なグループが存在する。環境問題に情熱を燃やすソフトウェアエンジニア、人権活動にボランティアで参加する人事担当者、異常気象を懸念するプロジェクトマネージャーなどが該当する。このグループは従業員のわずか10%に過ぎないかもしれないが、それでも重要な「無償の」基盤であり続ける。


組織全体でそのような人材を特定し、彼らを効果的に組織化する方法を検討することが課題だ。IBMでは、そのために「グローバル・サステナビリティ・フォーラム」を開催している。デザインコンサルタントからインフラ開発者まで、サステナビリティに関わる事業部門を対象とし、アンバサダーのネットワークを構築し、サステナビリティが彼らの業務においていかに重要かを明確に示す取組みだ。


多くの企業には「サステナビリティ・アンバサダー」のような制度がある。これらはボランティア活動や断続的なプロジェクトに重点を置くことが多く、中核事業から「離れた」取り組みだが、こうしたプログラムは自然な協力関係を築く助けとなる。例えばIKEAは、環境問題への対応に熱意を持つ人材を積極的に採用することで、この取り組みをさらに一歩進めている。


2.    残りのサステナビリティに関心のない90%を巻き込もうとするのではなく、彼らのニーズに寄り添う


次のステップとして、残りの90%をサステナビリティの取組みに「巻き込む」ことを考えるのは自然だろう。しかし、共感を生み出すことは困難で時間がかかり、そもそも可能かどうかさえ疑わしい。人々は当然ながら自身のKPI達成に忙殺されている。効果的な戦略とは、自らの取組みを他者が既に注力している活動に組み込むストーリーを構築することにある。


例えば、CSOとそのチームは、サステナビリティの観点から製品やサービスを、これまで活用されていなかったチャネルやプラットフォーム、人材を通じてプロモーションすることでビジネス開発を支援し、他チームのKPI達成に貢献できる。また、自ら積極的に関与し、定期的に接点を設け、同僚に「どう支援できるか」と直接尋ねることも有効だ。営業やプロダクトマネージャーが顧客の要求に対応するために必要なものは何か?などを聞き、サステナビリティの観点でサポートする。


マスターカードはこの点で優れており、全事業部門を横断する「インパクト運営委員会」を設置している。さらに各事業部門専用のガイドを用意し、異なる役割を担う従業員が企業の環境・社会インパクト目標の達成に貢献できる具体的な行動を明示している。


IBMでは、この取り組みの一環として、クライアントから寄せられる個別要求に対応するAI搭載の「サステナビリティ相談」チャットボットを開発した。さらに、このツールを既存の「営業相談」チャットボットに直接統合し、営業担当者が普段利用しているチャネルを通じて簡単にデータにアクセスできるようにした。このようにして、サステナビリティ推進チームは「何かを要求する」のではなく、同僚から高く評価される支援を提供している。


これにより、他のチームもIBMのサステナビリティ施策の価値提案を理解し始めている。また、バックエンドでデータを収集することで、サステナビリティが重要な課題となる「ビジネス案件」の定量化も開始している。


3.    定期的な接点を設ける、継続的にコミュニケーションする


組織全体にサステナビリティ意識を完全に浸透させることは終わりのない取り組みだが、段階的な進捗を定着させるための戦術がいくつか存在する。よく練られたセルフサービスツール(社内ウェブサイトなど)は優れた出発点であり、従業員が障害なく自身の関心事を追求できるようにする。こうしたサイトは、単に情報を提供したり説得したりするだけでなく、支援とサポートを提供することを目的として作成されることが不可欠だ。


もちろん、ニュースレターや年次行事といった他の積極的な取り組みも効果的だ。時には、ニュース記事や論説といった外部向けコミュニケーションが、従来の社内コミュニケーションよりも効果的である場合もある。特に、それらを同僚間で共有する場合にはなおさらだ。


最も印象的な積極的戦略の一例として、パタゴニアの環境インターンシッププログラムが挙げられる。同社は全従業員を対象に、任意の環境団体で2か月間の有給インターンシップを経験させ、「自らのミッションにストーリーやインスピレーション、新たなコミットメントを持ち帰らせる」ことを目的としている。


IBMでは新たに「サステナブル・イノベーション賞」を創設した。この賞は、長期的な価値を推進・測定する創造的な手法を発見したチームを表彰するもので、ニューヨーク証券取引所の終値ベルを鳴らす機会も付随する。この賞が新たな取り組みを直接生むかは別として、社員全員が自らの業務——新たなイノベーション、製品設計、AIモデル開発など——にサステナビリティの視点がどう組み込めるかを考えるよう確実に促す。


表面的には反サステナビリティの動きがある中で、本質的にはサステナビリティへの対応がより重要になっている今、従業員の関与が真の変化を推進する上で重要な要素であることを改めて強調する価値がある。内部の協力者を特定し権限を与え、他の従業員が評価する方法で協働し、定期的な全社的な接点を作ることで、CSOは従業員を強力なパートナーへと変え、進捗を加速させることができる。


(参考)” 3 ways CSOs can engage employees”, TRELLIS (2025.9.26)

 
 
 

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