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地域こそ気候変動への適応に目を向けるべき

EUの気象情報機関によれば、2023年の世界の平均気温は、1850年の気象観測開始以来もっとも暑く、産業革命前の1850年~1900年平均に比べ1.48℃高かったそうだ。産業革命以降の温度上昇を1.5℃以内に抑えようというパリ協定の目標を超える寸前だ。


パリ協定の目標達成に向けて、世界は2050年までのカーボンニュートラルを実現しようと様々な取り組みを進めている。しかし、痛みを伴うカーボンニュートラルに向けた変革は政治的に難しく、政策面で妥協する動きもみられる。1.5℃目標の達成は、今のままでは難しいと言わざるを得ない。この先数十年は、温暖化は進むと考えておいたほうが良いだろう。


そこで重要になるのが「気候変動への適応」だ。企業では、TCFDの広がりもあり、長期的なシナリオを描いて気候変動がもたらす物理リスク、移行リスクを把握する企業が増えている。今後対策も進んでいくだろう。気候変動への適応の動きが広まれば、企業のビジネス機会にもなる。


企業は、気候リスクに対して、必要があれば生産拠点を移したり、サプライチェーンを複線化したり、事業ポートフォリオを変革したりできる。しかし、地域はそういうわけにはいかない。今の場所で、今ある資源を生かしながら対応していく必要がある。地域こそ「気候変動への適応」を重点施策とすべきだ。


地方自治体は、長期的な気候変動の影響、物理リスク、移行リスク、機会を把握し対策を検討すべきだ。物理リスク(急性)に対しては、洪水などの災害増加に備えることが必要となる。物理リスク(慢性)については、農作物の適地の変化、漁獲量や魚種の変化、住民の健康や海面上昇への対応などが必要となる。移行リスクについては、EV化による自動車部品の雇用への影響など産業の変化に備えることが求められる。気温の変化、農業の適地変化、産業やニーズの変化などは、機会を生み出す側面もあるだろう。


世界的には気候変動の影響により住む場所を追われる気候難民が課題となっているが、今後は自発的な気候移住も増える可能性がある。そうした動きも考慮していく必要がある。


日本は脱炭素を重視する政策を進めており、地域に関しては「脱炭素先行地域」を選定している。脱炭素の観点で地方創生を進めることも重要だ。リジェネラティブ農業なども機会になるだろう。


しかし、脱炭素以上に「気候変動への適応」は地方自治体にとって重要だ。リスクに適切に備えなければ、多くの住民に影響が出る恐れがある。地方自治体は「気候変動の適応」を進めるべきだ。国もそれを後押しすべきだ。

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