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チーフ・サステナビリティ・オフィサーにとって重要なのは、ビジネスの知見か?サステナビリティの知見か?

  • takehikomizukami
  • 7月5日
  • 読了時間: 3分

サステナビリティ経営に関する論点として、「チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)にとって重要なのは、ビジネスの知見か?サステナビリティの知見か?」がある。この問いに対して、ビジネスリーダーの多くは「ビジネスの知見が重要」と答える。「ビジネスを理解することなく理想論だけ言われても実践できない」「優れたビジネスパーソンであれば、サステナビリティの知見を身に着けるのは難しくない」という考えがその背景にある。


そうした考えもあってか、多くの企業においてCSOまたはそれに相当する役職は、サステナビリティでキャリアを積んできた人間ではなく、コーポレートまたはビジネスでキャリアを積んできた人間で占められている。


結果として、後からサステナビリティを学ぶこととなり、制度対応などを行うことが取組みの中心となる。戦略へのサステナビリティの組み込みについても、政策や市場の後追いとなることがほとんどだ。


2010年代の初期くらいまでは、野心的にサステナビリティを進めて行こうという企業、野心的なビジョンを掲げる企業もあったが、最近はそうした企業は見られなくなった。背景には、投資家がサステナビリティ領域で野心的な取り組みをするというよりは、政策や市場に対応した無難な取組みを求めていることもあるだろう。そうした無難な取組みを着実に実践するのであれば、サステナビリティの知見はそれほど必要とされず、社内力学に精通したビジネスパーソンが適している。


一方で、サステナビリティの知見や経験のある人間であれば、NGOなどを含む幅広いネットワークを持ち、サステナビリティの最新知見に精通しており、サステナビリティの観点から本来なすべきことを理解できる。そうした人間がリードすれば、野心的で本質的なサステナビリティのビジョンを描くことができるだろう。しかし、一般的にサステナビリティの専門家は、社内の説得や戦略への落とし込みが苦手とされる。


個人的には、サステナビリティの取組みが制度対応など無難なものに留まっている現状では、より野心的、本質的な取り組みに期待したい。そのためには、サステナビリティの知見のあるリーダーが必要だろう。ただし、単なるオタクやドリーマーではなく、組織を動かせる人間であることが求められる。


理想的には、アップルでサプライヤーを巻き込んだ再生可能エネルギー100%推進などを推進するなどサステナビリティの取り組みを先導するリサ・ジャクソン氏のようなトライセクター・リーダーが良い。ジャクソン氏は、2009 年から2013 年までオバマ政権で環境保護庁長官として、温室効果ガス削減政策等を進めた経歴を持っている。


トライセクター・リーダーは、まだ人財市場では限られるが、自社で育成することも含め、多くの企業でトライセクター・リーダーこそがCSOにふさわしいという考えを持つことを共有することが重要だ。

 
 
 

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