top of page

トライセクター型人財がより求められる時代になっている

  • takehikomizukami
  • 2024年4月16日
  • 読了時間: 3分

拙著「サステナビリティ -SDGs以後の最重要生存戦略」で、民間、公共、市民社会の3つのセクターの垣根を越えて活躍、協働するリーダーである「トライセクター・リーダー」を紹介しています。


具体的な人物としては、アップルでサプライヤーを巻き込んだ再生可能エネルギー100%推進などを推進するなどサステナビリティの取り組みを先導するリサ・ジャクソン氏などを紹介しています。ジャクソン氏は、2009 年から2013 年までオバマ政権で環境保護庁長官として、温室効果ガス削減政策等を進めた経歴を持っています。


その他の有名な例としては、以前、コカ・コーラがインドで大量の水を使用しているとして政府、NGOの反発に遭い、清涼飲料水の製造を禁止されたとき、コカ・コーラは、国務省やUSAIDなど公共での経験が豊富なジェフ・シーブライト氏を外部から招聘して責任者に据えて、水資源の持続可能な利用に向けた戦略を構築しました。シーブライト氏は、政府の環境関連部局でよく使われる地理情報システムを利用し、世界のコカ・コーラの工場の39%が水不足な深刻な地域に立地していることを明らかにし、鉱物・資源会社のリオ・ティントに依頼し、コカ・コーラの20の事業部を対象とした水資源に関わるリスク分析を実施しました。そして、USAIDやWWFなどと水資源保全に向けた協働プロジェクトを推進しました。シーブライト氏は、その後、ユニリーバのチーフ・サステナビリティ・オフィサーなども務めています。


サステナビリティ領域以外では、マッキンゼーを経てクリントン政権でサマーズ財務長官の首席補佐官になり、その後、グーグル副社長、フェイスブックのCOOなどとして活躍しつつ、女性の社会進出をテーマにした財団LeanIn.org を主催するシェリル・サンドバーグ氏などが代表例です。トライセクター・リーダーは、セクターを超えて人材の流動性が高い米国などでは多く存在します。


日本でも官僚から民間企業、民間企業からNGO/NPOなどへの転職はありますが、かなり限定的です。そもそも人材の流動性はまだまだ低いですし、各セクター内で人材が固定化されてきた結果、相互の理解が進んでいません。


しかし、気候変動や格差など資本主義の弊害が目立つ中、企業が単に金儲けするだけでなく社会価値を創造すること益々重視され、新しい社会のあり方の模索が必要なこれからの時代には、社会価値創造に向けた思考や意欲を持つトライセクター型の人財がより重要となります。


ビジネスパーソンは富の創出に向けたミクロ思考、政策担当者は富の分配や社会課題解決に向けたマクロ思考、市民セクターの人材は社会課題解決に向けたミクロ思考に強みがありますが、これらの思考を併せ持ち統合できる人財が求められています。


社会課題解決に向けて企業、政府、NGO/NPOなどの協働が重要となる中、すべてのセクターを理解し人脈を持ち、相互を結び付けることができるという意味でもトライセクター型人財は重要です。


私の母校でもあるハーバード大学ケネディ―スクールの学長を務めたジョセフ・ナイ氏は、「トライセクター・リーダーは、いかなるセクターに属していても公共価値に寄与できる。セクターを移動しても、公共価値への貢献意欲を持ち続けるのだ」と言っていますが、トライセクター・リーダーの最も重要な要件は、「公共価値」創造への意欲かもしれません。


三方よしの伝統を持ち、新自由主義に染まりすぎていない日本には、公共価値や社会課題解決に意欲を持つ人が相対的に多いように思います。ただ、そういった人たちがリスクを取って一歩踏み出す勇気、その一歩を支える社会の基盤が不足しているように思います。


個人のパーパスを軸に、民間、公共、市民社会をいったりきたりできる人財のロールモデルを増やし、セクター間の異動がやりやすい環境を創っていく必要があるでしょう。私個人としてもやっていきたい領域です。

 
 
 

最新記事

すべて表示
サステナビリティとサステナビリティ経営の変遷。1990年代の環境経営、2000年代のCSR経営、2010年代のESG経営を経て、反ESGの動きもある中2020年代のサステナビリティ経営はどう進化するか?

サステナビリティおよびサステナビリティ経営が歴史的にどう進化してきたか、改めておさらいする。 サステナビリティは経済成長の負の側面としての環境問題への対応からはじまった。1962年にはレイチェルカーソンが「沈黙の春」で化学物質の汚染問題を提起している。日本でも1950年代後半から1970年代の高度経済成長期において、工場などから発生した有害物質によって公害病が引き起こされた。WWFやグリーンピース

 
 
 
「生産性と人間性をどう両立するか」「成功できるかではなく、役に立てるかを人生の軸とせよ」サステナビリティ経営や生き方に重要な示唆を与えるP.F.ドラッカーとジム・コリンズの対話

経営にサステナビリティを統合するうえでの理論的支柱となっている代表的経営思想家として、P.F.ドラッカー、ジム・コリンズがあげられる。 ドラッカーは、 「マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させる上で三つの役割がある。①自らの組織に特有の使命を果たす、②仕事を通じて働く人たちを生かす、③自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献することだ」 というサステナビリティ経営

 
 
 
サステナビリティリーダーは2026年に何をすべきか?

2025年の初頭、チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)に主な役割を尋ねた場合、「変革を推進し続け、経営陣の理解を得て、サステナビリティを企業経営に統合するためのビジネスケースを構築すること」だった。今後の数年間は、こうした路線が維持される見通しだった。 この見通しは正しく、企業によるサステナビリティへの取り組みは、金融・政治・社会面で大きな逆風に見舞われながらも、ほぼ変わらない水準を維持

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page