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サステナビリティ目標達成のために避けるべき誤り-企業がサステナビリティ目標を達成する能力を損なう7つの指標

  • takehikomizukami
  • 4月20日
  • 読了時間: 6分

過去20年間で、企業はサステナビリティに対して野心的なコミットメントを行うことについては、大きく前進した。経営幹部の68パーセントがしっかりとしたサステナビリティ計画を策定していると答え、公開している大企業の89パーセントがネット・ゼロのコミットメントを行っている。しかし、大企業の実に98%がサステナビリティ目標を達成していない。


何が起こっているのだろうか?


2025年のサステナビリティ戦略の立て方」のリサーチの一環として、30数社のCSOにインタビューを行ったところ、リーダーたちは自分たちのプログラムや進捗状況に誇りを持っていることがわかった。インタビューしたほとんどのCSOは、役員や経営幹部がサステナビリティに誠実に取り組んでいると考えている。しかしながら、人類、地球または利益のための真のインパクトを大規模に生み出しているわけではない、ということには全般的に同意している。


私たちの研究は、”Sustainability Tension Management”(STM)(サステナビリティにおける対立のマネジメント)が出来ていないことを示す7つの指標が、対立する価値の高いトレードオフを乗り越えるリーダーの能力を妨げていることを発見した。STMがうまく実践されれば、企業のサステナビリティにおける対立の拡大を抑制し、ビジネスを強化することができる。私たちは、多くの企業において、これらの指標が基本となり、それが故に人類、地球または利益のためのサステナビリティ目標を達成する企業の能力を損なっていることを観察している。


7つの(致命的な)指標


パフォーマンス的なコンプライアンスへのフォーカス

企業は、レポーティングや格付けのフレームワークに対して、徹底しているように見える方法で対応することができる。しかし、調査によると、開示内容と実際のパフォーマンスとの間に不一致が見られる。例えば、贈収賄防止規則を完全に実施することを回避するためにレポーティングを利用した企業もある。


サステナビリティのパラメーターへのフォーカス

多くの場合、これらは「大きなシステムの構造を変えることなく、パフォーマンスを変えるために上下させることができるダイヤル」として知られている。この例として、本社にのみ再生可能エネルギー機能を採用してサステナビリティ実践の模範としておいて、企業の他の部分にまでサステナビリティを浸透させることがないといったことが挙げられる。


困難なことを達成可能なことにすり替える

ある大手小売企業が、ステークホルダーから寄せられた労働者の権利に関する最優先の懸念に対処する代わりに、廃棄物の削減を推進することを想像してみてほしい。私たちがここで話しているのはそのことだ。


解決策やインパクトではなく、プログラムに熱中する

私たちは、サステナビリティ・チームが、報告フレームワーク、スタンダードへの準拠、格付け質問票、その他のプログラム的な活動に没頭しているのを目にする。これらはタスクであり、目的を達成するための手段であるが、目的そのものではない。


マネジメントではなくレポーティングのための測定

レポーティングに使用される膨大なデータが、効果的で生産的なサステナビリティマネジメントに不可欠な情報としてではなく、ボックスチェック作業のためのものとして捉えられるようになることである。調査によると、サステナビリティ報告への支出は、サステナビリティ・イノベーションへの支出を43%上回っている。多くの組織は、サステナビリティを変革のためのものではなく、会計や報告のためのものとして捉えている。


サステナビリティ指標をビジネスKPIから切り離す。

サステナビリティは、経営幹部から従来の事業活動とは一線を画すものと見なされることが多いため、株価や収益、コストといった優先順位の高い事業KPIに統合されることなく、別個の指標として扱われることになる。サステナビリティの専門家は、インパクトを提唱することに集中しすぎて、サステナビリティのビジネスケースを作成する時間を取らない場合、このような傾向を増幅させる可能性がある。


サステナビリティ・パフォーマンスのインセンティブを曖昧なままにしておく。

優れたサステナビリティ成果を達成するための真のインセンティブを持つスタッフはごくわずかである。私たちは、経営幹部や管理職に対する給与関連の業績インセンティブは、標準ではなく例外にとどまっていると見ている。サステナビリティ・チームメンバーは、サステナビリティをビジネスに統合するための業績インセンティブを持っていないことが多い。


ゴールへの期待をリセットする


企業が「対立のマネジメント」を効果的に実践する能力は、7つの(致命的な)指標を特定し回避するのに役立ち、サステナビリティのパフォーマンスの質を決定する。当該マネジメントにより、企業は、経済、環境、社会の目標が一致するスイートスポットを追求する明確な決定を下すことができる。同様に重要なことは、STMは、企業がトレードオフをしなければならない場合に真摯な決断をするのを助けるということである。時には経済的な決断が優先されることもある。また、社会や環境への配慮が優先されることもある。このような対立を認識し、受け入れることは、この分野で受け入れられている多くのドグマに反するものである。そのドグマとは、私たちが出席するほぼすべてのサステナビリティに関する会議で耳にする、「Win-Win」は常に存在する、「サステナビリティは旅である」、「到達可能な目的地を暗示する」、「サステナビリティの専門家の役割は、その考え方が企業のDNAに焼き付けられた時点で終了する」、といった一般的な発言に見て取れる。


競合する価値、利益、結果の間の対立は常に存在する。企業が経済的、環境的、社会的な懸念が均衡を保つスイートスポットを築いたとしても、あるいは社会的な問題への取り組みが経済的な成功につながったとしても、市場、社会的ニーズ、環境問題のダイナミックな性質は、常に新たな課題を提示する。したがって、サステナビリティとは目的地ではなく、プロセスと道筋であり、対立とトレードオフに満ちたその道筋こそがゴールなのである。


企業が「対立のマネジメント」の専門知識を緊急かつ競争上の優先事項として、勝利の方法の中心に据えない限り、サステナビリティに関して真の進歩を遂げることはないだろう。また、その巨大な財務的可能性を逃し、リスク管理に失敗し、その結果、ビジネス、地球、そして人々が苦しむことになるだろう。


企業がリーンマネジメント、Good-to-Great、シックスシグマ、トータルクオリティなどの哲学を取り入れるのと同じように、経済的、社会的、環境的関心に関連する「サステナビリティにおける対立のマネジメント」は、企業全体の意思決定、リーダーシップ戦略、人材育成を形作る規律となりうる。


(TRELLIS記事“Avoid these mistakes to achieve your sustainability goals”の翻訳)

 
 
 

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