毎年、世界のサステナビリティの専門家にサステナビリティのリーダーについてアンケートをした結果を示す「サステナビリティ・リーダーズ」の2024年版が発表されています。
この中で、企業に関する「サステナビリティをビジネス戦略に統合しているリーダー企業はどこだと考えるか。3社以内を回答して下さい」という問いの結果は、以下となっています。
1位パタゴニア(34%)、2位ユニリーバ(24%)、3位ナチュラ(12%)、4位イケア(11%)、5位インターフェイス(6%)、6位ダノン(5%)とネスレ(5%)など。
サステナビリティの専門家からすると、こんなものかと納得できる結果ですが、問題は毎年顔ぶれがほとんど変わっていないことです。
参考までに10年前の2014年の結果は、1位ユニリーバ、2位パタゴニア、3位インターフェイス、4位マークス&スペンサー、5位ネスレ、ナチュラなどです。ユニリーバ、パタゴニアの1-2フィニッシュは10年以上続いています。
ユニリーバは、元CEOのポール・ポールマン氏のもと、サステナビリティの野心的な長期ビジョン「サステナブル・リビング・プラン」を発表した後の2011年以降ずっと1位でしたが、ポールマン氏が退任してから評価は下がり気味で、昨年から1位をパタゴニアに譲っています。
パタゴニアは、環境問題をミッションに掲げて積極的に取り組む企業の代表として広く認知されています。今でもセンセーショナルなサステナビリティ広告として語り継がれる、2012年のブラックフライデー前日にニューヨークタイムズで、「DON’T BUY THIS JACKET」「自社の商品を買う前に少し考えて下さい。無駄な消費はすべきではありません」と訴えかけた広告の翌年以降、ずっと2位以内を確保しています。一昨年、パタゴニア創業者イヴォン・シュイナード氏が、自身と家族が保有している30億ドル(4200億円)相当の株式のすべてを環境保護活動に取り組む団体などに寄付したと発表したことも話題になりました。
この2社は、サステナビリティのリーダーとして素晴らしい取り組みを実施してきているのですが、2015年以降、SDGsが発表され、パリ協定が発効し、ESGへの関心が高まっている中で、新しいリーダーが登場していないのは問題です。
これは、最近のサステナビリティ/ESGのトレンドが政府や一部投資家などによってつくられたもので、企業は基本的に受け身で対応しており、自らの意思でサステナビリティを強くドライブしていこうという企業が限られているためかもしれません。
「サステナビリティ・リーダーズ」2024年版で、「最近のサステナビリティにおける最も重要な進展は何か?」という問いに対して最も多かった回答は、「法制化」、次いで「情報開示基準」でした。最近のサステナビリティ/ESGへの関心の高まりが、政策、投資家などによる情報開示のイニチアチブに牽引されていることが伺えます。
確かにサステナビリティに取り組む企業は増えていますが、法令や情報開示の要請に対する受け身な対応がほとんどで、野心的に取り組む企業はあまり見当たりません。Bコープやゼブラ企業など、サステナビリティや社会課題解決に積極的に取り組む企業も出てきていますが、こちらは“リーダー”と呼ぶには、規模や影響力が限られます。
10年前より明らかにサステナビリティに対する関心は高まり、資金調達や市場創造はしやすくなっているはずですが、いくら市場環境が整っても、ポール・ポールマン氏やイヴォン・シュイナード氏のようなリーダーが登場しなければ、“サステナビリティ・リーダー”企業は生まれないということでしょうか。人材面でもサステナビリティ・リーダーの登場が望まれます。
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