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食料システムのサステナビリティに注目が集まる中、地域の食文化を守ることを考える。

昨年のCOP28の首脳級セッション(世界気候行動サミット)において、「持続可能な農業、強靭な食料システム及び気候行動に関するエミレーツ宣言」が発表されました。また、同宣言に関連して、WBCSDなどが、リジェネラティブ農業を拡大する行動アジェンダを発足させています。行動アジェンダでは、2030年までに1.6億haをリジェネラティブ農業に転換する目標を設定。22億米ドル(約3,300億円)の資金を動員し、世界で農家360万人の参加を目指します。


IPCC特別報告書「気候変動と土地」(2019)によれば、食料生産に直接関連する排出(農業と農業に由来する土地利用変化)に加え、加工、流通、消費などのプロセス全体を考慮した食料システムからの排出は約14.8GtCO2eq/年で、世界の総GHG排出量の21~37%を占めるとされています。


また、食料システムは、農業を中心に気候変動の影響を大きく受けます。気候変動への適応の取り組みを進め、世界の人々の生命を支える食料供給の持続可能性を確保していく必要があります。TNFDで注目される土地利用、生態系保全の観点からも食料システムへの取り組みは重要です。


こうした背景から、これまでエネルギー、モビリティにおけるCO2排出削減が進められてきた気候変動対応について、今後は食料システムにおける取組も注目されそうです。当面はグローバル企業を中心にリジェネラティブ農業、スマート農業、代替タンパク、食品ロス削減などの取り組みが進められると思いますが、地域レベルでも実践できるものとして、地域の食文化再生があります。


ダノン前CEOのエマニュエル・ファベール氏の言葉を引用します。


「過去、食品業界は世界のより多くの人を飢えから救うため、できるだけ安いコストで食料を供給するため、大量生産による規模のメリットを追求してきた。しかし、世界各地で肥沃な土壌や水が枯渇してきているほか、人類が食料を数種類の「種」に依存するようになった。人類の食料をわずかな「種」に依存することは、とてもリスクが高いことだ。」


「これから大切なのは、人類が必要な食料だけを増やすのではなく、自然の生態系を全体で保全することで、これを「アリメンテーション(栄養・滋養)・レボリューション」と呼んでいる。この取り組みなくして、世界の資源を維持していくことはできない。これからは、生態系を維持していくためにも、世界各地で続いてきた食文化、食習慣、レシピ、食資源を永続させていく必要がある。」


地域の食文化を守る、再生することは、生態系を維持しつつ人々の生活を守る本質的なサステナビリティの取り組みです。地方創生にもつながるものであり、各地域で真剣に検討する価値があるでしょう。


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