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生物多様性と気候変動で注目される新たな結節点

更新日:2021年8月28日

今年から来年にかけて、2つのCOPが開催されます。今年11月に英国グラスゴーで開催される「気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)」と今年10月にオンラインで、来年4月に中国昆明で2回に分けて開催される「生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」です。それぞれ気候変動、生物多様性に関して重要な意味を持つ国際会議ですが、2つのCOPの出発点となった気候変動枠組条約と生物多様性条約は、ともに1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で署名が開始されています。


この2つの条約は、世界のほとんどの国が参加しており、双子の条約とも言われますが、気候変動と生物多様性は、グローバルで最も重要な双子の環境課題と言っても良いでしょう。そして、気候変動と生物多様性は、深く関係しています。


現在最も注目されているのは、森林破壊です。パーム油や畜産のための穀物生産などが分かりやすい例ですが、食品などの原材料生産には、広大な土地が必要となります。そして、その土地を確保するために、大規模な森林破壊が行われています。森林が失われるということは、CO2の吸収源が失われることで、気候変動を加速することになります。さらには、気候変動/温暖化で森林火災が頻発し、それが森林の喪失、気候変動の加速につながるという、悪循環が引き起こされます。森林破壊という生物多様性の喪失と気候変動は、密接に関連しています。


また、森林は、気候変動の影響を緩和する意味でも重要な役割を担っています。森林は、その保水機能により、洪水や土砂崩れを防ぐ役割を担っています。この観点からも、生物多様性と気候変動は、密接な関係があります。


最近は、これらに加えて、イノベーションの観点での生物多様性と気候変動の関係も注目されています。生物多様性は、多くの医薬品の原材料となる、長い年月をかけて最適化された形態や仕組みがイノベーションのヒントとなる(バイオミミクリー)など、これまでもイノベーションの源泉となってきましたが、バイオテクノロジーによる気候変動対策の観点でも注目されています。


エネルギーに関しては、藻類を用いたバイオ燃料の開発が進められています。日本でも、NEDOやIHIが藻類を用いて、、ユーグレナがミドリムシを原料にして、航空機用バイオ燃料を開発しています。最近では、石油と同等の燃料を合成できる植物プランクトンが発見されたとの報告もあります。


CO2から微生物を使って、プラスチックなどの有用物質創り出す技術開発も進められています。


食料生産に関しては、微生物由来の代替肉の開発が進められており、2025年には、現在の食肉と同じコストで生産できるようになるとの予想もあります。また、CO2から微生物を利用してたんぱく質を創り出すエア・プロティンなどのスタートアップ企業も登場しています。温室効果ガスを大量に排出する畜産由来の食肉を微生物由来のものに代替することで、気候変動の緩和に大きく貢献します。


このように、生物の力を利用した気候変動対策のイノベーションが急速に進んでいます。生物多様性と気候変動の新たな結節点として、注目されます。

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