top of page
検索
  • takehikomizukami

天ぷらバスとネステの話 -SXで成功するには、洞察力と意思決定の速さが必要-

2011年3月の東日本大震災の発生直後、いてもたってもいられず、当時の勤務先で何か支援すべきと話し合い、1月後に、クライアント企業のCSR担当者などに参加してもらい、ボランティアツアーを実施しました。ツアーは、被災地支援のノウハウを持つピースボートの元メンバーが会社いたこともあり、ピースボートの支援も受けて、効率的な支援ができたと思います。


そのボランティアツアーでは、リボーンが運行する天ぷらバスを使用しました。天ぷらバスは、家庭で使用された廃食油を回収・リサイクルしたバイオディーゼルフューエル100%で走る、環境に配慮したバスです。


当時は、こんなバスもあるのか、廃食油の回収は大変そうだなというくらいの認識で、廃食油が持続可能な航空燃料(SAF)として、広く使われるようになるとは認識していませんでした。サステナビリティ・コンサルタントとしては、当時の洞察力の鈍さを恥じる次第です。


現在、SAF市場を席捲しているのは、フィンランドのネステです。フィンランドの石油精製会社として創業したネステは、1990年代に再生燃料の技術を開発し、東日本大震災が起こったころに、生産規模を大きく拡大しています。そして、航空業界で国際合意に基づきカーボン排出削減の流れが確定的となった2018年には、廃食油を用いたSAFを本格的に強化しています。天ぷらバスのように、地域ごとに行われていた廃食油の回収・活用をグローバルレベルで産業化しています。


日本の廃食油もネステの回収網にのって、ネステのシンガポール工場に運ばれ、SAFとなって日本に再度輸入され、JALやANAで使われています。


日本でも天ぷらバスのような取り組みが以前からあったところで、2016年の国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム(CORSIA)採択以降、世界的なSAF需要が顕在化しました。このときに、ネステに先んじて、廃食油の回収をスケールし、SAF生産の取り組みができていれば、とは思います。


ネステのような海外のSX企業は、動きが早く、大胆な投資の意思決定も素早く行います。変化が加速しているサステナビリティ市場では、洞察力・感度を高めるとともに、投資やコラボレーションの意思決定も早くできないと、成功できません。私もそうですが、日本企業も、危機感を持たないといけないですね。



閲覧数:17回0件のコメント

最新記事

すべて表示

専門家、リードステークホルダーとの対話を通じて社会課題解決イノベーションを生み出す。

拙著「サステナビリティ-SDGs以後の最重要生存戦略」でも書いていますが、社会課題解決イノベーションを生み出すカギは、①社会課題のトレンドを洞察し事業機会を見出す、②社会課題の解決策としてのイノベーションを創発する、③成功するまで粘り強く続ける、です。 ①「社会課題のトレンドを洞察し事業機会を見出す」について、社会課題解決イノベーションの起点は社会課題と解決策の新しい組み合わせですが、まずは社会課

トライセクター型人財がより求められる時代になっている

拙著「サステナビリティ -SDGs以後の最重要生存戦略」で、民間、公共、市民社会の3つのセクターの垣根を越えて活躍、協働するリーダーである「トライセクター・リーダー」を紹介しています。 具体的な人物としては、アップルでサプライヤーを巻き込んだ再生可能エネルギー100%推進などを推進するなどサステナビリティの取り組みを先導するリサ・ジャクソン氏などを紹介しています。ジャクソン氏は、2009 年から2

SXとは何か?どう実践するか?

日本人は「X」が好きなようだ。古くはCX、UXが広く使われ、最近はDXから派生して、サステナビリティの領域で日本オリジナルのSX、GXが広く使われている。CX、UXはExperienceだったが、DX以降はTransformationだ。変革が苦手な日本政府、日本企業が言葉だけでも景気のいいものをということで広めているのだろうか。言葉だけ景気がいいのは、最近の政治家にも言えることだが。 それとも日

bottom of page