top of page

企業が教育で価値を創造する「教育CSV」の3つの方法

  • takehikomizukami
  • 2022年3月12日
  • 読了時間: 3分

教育は、社会の発展の基礎であり、人々が自らの人生を切り拓くための基盤となるものです。企業が社会価値を創造しようとする場合、教育に対する貢献という視点は重要ですが、その取り組みには3つの方向性があります。


3つの方向性とは、①エドテック、②バリューチェーン、③市場創造ですが、それぞれCSVの製品・サービス、バリューチェーン、ビジネス環境の3つの基本アプローチに関連します。


① エドテック(EdTech)は、EducationとTechnologyの頭文字を取った、ICTを活用したサービスのことです。ハーバード、スタンフォードなどの有名大学の講義が無償で受けられる「MOOC(ムーク)」など、エドテックにより、幅広い人々が世界中の優れた教育にアクセスすることが可能となっています。こうした新たな教育サービスを成長市場と捉え、ICT企業などが参入しています。例えば、教育アプリを展開し、データに基づき教育効果を高めるよう進化させるなどが行われていますが、ARやVRなどの活用も含め、さらなる展開が期待されています。


② バリューチェーンは、自社およびサプライチェーンを含むバリューチェーンに関わる人材に教育を提供することで、バリューチェーンの生産性を向上するものです。特に途上国に生産拠点を構える企業では、現地人材の能力・意識が生産性向上の課題となっています。アジアの日系企業を対象とした調査によると、2社に1社が「現地人材の能力・意識」を問題としているとのことです。そのため、トヨタがインドで「トヨタ工業技術学園」を設立するなど、企業によっては、自ら学校を設立して、一般教養から専門教育まで実施しているところもあります。これにより、現地人材の教育レベルを底上げし、バリューチェーンの生産性を向上しています。


③ 市場創造は、自社ビジネスの顧客が持つべき知識や技能を、教育を通じて普及することで、市場を創造することです。楽器やスポーツ用品を展開する企業が、音楽教室やスポーツ教室を通じて、自社の楽器やスポーツ用品を使う人を増やすなどが分かりやすい例です。シスコは、教育機関とともにインターネット技術者を育成するための教育プログラムである「ネットワーキングアカデミー」を、途上国を中心に世界165カ国、1万カ所で展開していますが、グローバルICT企業が、世界中でICT教育を展開しているのも、同じ文脈で考えられます。ICT機器を使いこなす人が増えれば増えるほど、ICT機器やICTサービスを展開する企業にとっては、市場が拡大することになります。そのため、グローバルICT企業は、世界各国で、教育機関とも連携しながら多くのICTユーザー、ICT技術者を育成しています。なお、こうしたICT教育の展開は、市場創造だけでなく、ICT技術者として自社ビジネスを支える人材の育成にもつながるというバリューチェーン強化の側面もあります。これにより、ICT技術者不足が事業拡大のネックとならないようにしています。


企業が教育をビジネス機会、競争力強化の機会と考える視点を広く持つことで、多くの人が必要な教育を受けることができ、それが地域の発展と各人の幸福につながっていくポテンシャルは、まだまだあると思います。

 
 
 

最新記事

すべて表示
無形資産/非財務資本を評価し融資する制度がスタート。新しい制度が広く活用され、サステナビリティ経営を促進することに期待

先般、「企業価値担保権」制度が始まりました。事業の将来性や技術力といった目に見えない価値を担保に、銀行などの金融機関が企業に融資する制度です。事業の将来性や技術力といった目に見えない価値を担保に、銀行などの金融機関が企業に融資する制度です。 銀行が企業に融資する場合、土地や建物などの有形資産を担保として設定するのが主流ですが、今後は知的財産、ブランド、顧客基盤などの無形資産を含む事業全体を担保にす

 
 
 
レアアースリスクがサーキュラーエコノミーを加速し、イラン戦争がカーボンニュートラルを加速する。地政学とサステナビリティが絡み合う時代には、サステナビリティ経営にもより高度なインテリジェンスが求められる。

サステナビリティ経営においては、“フォーカシング・イベント(Focusing Event)”への感度の高さが重要だ。 フォーカシング・イベントとは、マスコミや市民、政策担当者が急速に社会課題に注目し、対策を進めるきっかけとなる出来事のことで、日米の政権交代なども含む。 サステナビリティを促進することにつながるこれまでのフォーカシング・イベントとしては、以下のようなものがあった。 2018年、鼻にス

 
 
 
ジョン・コッターの「変革のための8段階のプロセス」は、企業のサステナビリティ経営に向けた変革、国際社会や国家のサステナビリティ推進に向けた変革、人口減少の中で地域を持続可能にしていくための変革など、様々な変革に応用できる。

リーダーシップ論で有名なジョン・コッター、ハーバードビジネススクール名誉教授は、多くの企業が変革に失敗している理由とその成功確率をどう高めるかを研究しました。市場環境の変化が不確実で急速な現代では、組織はそれに適応するために変革していかなければなりません。コッターは、研究結果を「変革のための8段階のプロセス」としてまとめています。 8段階のプロセスは、以下です。 ①危機意識を高める 企業の場合は、

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page