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サステナビリティは、如何に早く始められるかが成功のカギ

  • takehikomizukami
  • 2021年3月20日
  • 読了時間: 3分

オーステッドが洋上風力発電で世界首位の地位を築けたのは、早くから取り組んだからだ」オーステッド副CEOマルティン・ノイベルト氏は、日経新聞のインタビュー(2021.3.9)でこう語っている。


ノイベルト氏がオーステッド(当時の社名はDONGエナジー)に参画した2008年時点では、同社は、北海の石油・ガス生産と石炭火力発電を主力事業とする化石燃料の会社だった。それが、2009年に「2040年までにエネルギー供給の85%を再生可能エネルギーで供給する」とのビジョンを掲げ、戦略を大転換した。そして、洋上風力発電の世界最大手となり、85%再生可能エネルギーのビジョンは、2019年に21年前倒しで達成した。一方で、石油・天然ガス事業はすでに売却、石炭事業も2023年までには売却予定だ。


オーステッドは、2008年にドイツでの石炭火力発電プロジェクトが地域の強い反対により中止となったことや、2009年のCOP15で再生可能エネルギー推進が大きな議題となったことで、社会の変化を敏感に感じ取り、他社に先んじて再エネ企業になることを決めた。


そして、今後の成長領域はどこであるべきか、十分な市場があり、オーステッドが強みを持ち差別化できる領域はどこかを議論し、1991年から取り組んでいた洋上風力に大規模な投資をした。また、発電コストを下げることが洋上風力ビジネス成功のカギと見て、2009年には1千キロワット時あたり170ユーロだった発電コストを2020年に100ユーロとする目標を掲げ、2016年に前倒しで達成した。現在では、60ユーロを切っており、コストはさらに下がる見込みだ。


オーステッドは、毎年ダボス会議で発表される世界で最も持続可能な企業100社(Global 100)で、2020年1位、2021年2位にとなっており、今や押しも押されぬ世界のサステナビリティ先進企業として知れ渡っている。


日本政府が2040年までに最大4,500万キロワットの洋上風力発電を導入するとのビジョンを掲げ、注目が集まっている洋上風力だが、オーステッドが大きく先行している。この10数年にどう動いたかの差は大きい。


冒頭のノイベルト氏の発言にあるように、サステナビリティでは、早く始めることが重要だ。サステナビリティは、長期的な取り組みであるがゆえに、市場の可能性が見えてきてから実際に立ち上がるまでに時間がかかるケースが多い。十分な技術レベルやコストレベルを実現するにも時間がかかることが多い。そうした中で、早く大胆に動けば、技術、バリューチェーンの構築、ステークホルダーの関係性において差別化し、時間をかけて障壁を築くことができる。


サステナビリティが注目されているとは言え、まだ実現可能性が見えていないものも多い。そうした中で、以下に早く大胆に、かつ戦略的に動けるかが将来の成功のカギを握る。まずは、将来の構造的変化を洞察することが重要だ。

 
 
 

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