サステナビリティのゲームが今後どのように展開されるかを知りたければ、欧州がその先行指標となる。「世界で最も持続可能な100社」のコーポレート・ナイツ社が発表した欧州50社のリストは参考になる。
- takehikomizukami
- 6月14日
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毎年ダボス会議に合わせて「世界で最も持続可能な100社(Global 100)」を発表しているコーポレート・ナイツ社が、サステナビリティの観点から選定した「欧州50社」を発表した。欧州はサステナビリティの基準設定を先導し、企業の取組みも全般的に進んでいる。今回のリストでも欧州の先進性を見ることができる。
今回のランキングでトップのシュナイダーエレクトリックは、今年のGlobal 100でもトップだ。2021年にもトップを獲得しており、2度トップとなった唯一の企業だ。照明スイッチの製造、データセンターやスマートシティ向けのソフトウェア、クリーンエネルギー・ソリューションなど、幅広い分野における電化の取り組みでユニークな役割を果たしている。年間売上540億ユーロのうち74%がサステナブルなビジネスからのものであり、投資の80%近くが持続可能なソリューションに向けられている。
世界100カ国以上に拠点を持ち、180年の歴史を持つシュナイダーエレクトリックは、サステナビリティで世界を先導しながら業績も上げている。シュナイダーエレクトリックは、エルメスやロレアルととともにフランスの5大企業のひとつに挙げられ、同社の株式は2024年に58%上昇し、時価総額は1月にピークの1520億ユーロに達している。
シュナイダーエレクトリックの企業価値は初めてフランスの石油ガス大手トタルエナジーズを上回り、経済の変曲点を示している。欧州ではサステナビリティが企業の盛衰のカギを握るようになっている。サステナビリティのゲームが今後どのように展開されるかを知りたければ、欧州がその先行指標となる。
企業がサステナビリティでどのような成果を上げているかを示す多くのランキングでは、「純粋な」クリーンエネルギー企業、自然エネルギーだけに特化した企業などが優位に立つ傾向がある。しかしコーポレート・ナイツ社の手法では、業種などの偏りはなく多様性に富んでいる。2022年のGlobal 100で首位を獲得したデンマークの風力発電会社ヴェスタスなども含まれているが、小売業、多種多様な製造業、製薬会社、不動産会社、IT企業など30業種がランクインしている。
例えば、高級車市場の電動化で躍進したメルセデス・ベンツ、製品の平均22%がリサイクル素材でできているプーマ、ステンレス鋼の90%近くを持続可能な方法で生産しているフィンランドの鉄鋼メーカーOutokumpu Oyjなどだ。
その他、イタリアのタイヤメーカーのピレリ、英国の金属製品メーカーのペンテアは、取締役会の人種的多様性で高得点を獲得している。ユニリーバは、役員の人種的多様性で高得点を獲得した。英国の廃水処理会社セヴァン・トレントは、役員および取締役会レベルにおける女性の割合で高得点を獲得している。
欧州企業がサステナビリティを先導しているのは何故か?第一は、サステナビリティ・パフォーマンスの開示に関するルールなどの規制環境だ。タクソノミーやグリーンウォッシュ規制などがあり、サステナビリティの取組みが厳しく見られている。
もうひとつの重要な要素はリーダーシップだ。デンマークの人口はわずか600万人だが、欧州50社では7社がランクインした。人口がデンマークの10倍以上であるにもかかわらず、これほど多くの企業がランクインしたのは英国だけである。
2021年現在、デンマークの大企業100社のうち25%、株式時価総額の60%が「産業財団(industrial foundations)」によって支配されている。これら企業は利益だけでなく、社会の進歩、革新、長期的思考の育成を追求している。言い換えれば、これらの企業はガバナンスの構造において、異なる時間軸で事業を展開している。欧米の支配的なパラダイムが、地球や人間の健康といった「外部性」を排除し、株主利益のみに焦点を当ててきたのに対し、デンマークなどのアプローチは、より広範な利益を実現し、なおかつ経済的成果を上げている。
「過去5年間、欧州企業のサステナブルな収益は、他のすべての収益の2倍のペースで成長している。」とのこと。よりサステナブルなビジネスモデルへの継続的なシフトは、主に健全なビジネス慣行によって推進されている。こうした欧州企業は、よりサステナブルでより意義のある道を歩んでいる。
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