top of page

アンモニアの推進には、バリューチェーンへの目配せが欠かせない

  • takehikomizukami
  • 2023年3月18日
  • 読了時間: 3分

サステナビリティ推進にあたっての基本の1つは、バリューチェーン全体で考えることです。企業が新たな取り組みを進める場合は、グローバルの3大サステナビリティ課題である気候変動、生物多様性/自然資本、人権を中心に、バリューチェーン全体の環境・社会的影響を考慮する必要があります。


企業の取組みもそうですが、政策においても、バリューチェーン全体の影響を考慮する必要があります。特に、脱炭素の取組みにおいては、バリューチェーン全体への目配せが欠かせないでしょう。


その点で気になっているものに、日本政府や日本のエネルギー企業のアンモニアの推進があります。


アンモニアは、燃焼してもCO2を排出しないカーボンフリーなエネルギー源として、既存の石炭火力発電への混焼・専焼に向けた技術開発が進められています。アンモニアは、肥料用途を中心に広く利用されており、生産・運搬・貯蔵などの技術およびサプライチェーンが確立していることもアンモニア推進の理由となっています。


日本政府は、エネルギー基本計画で、2030年までに、石炭火力発電への20%アンモニア混焼の導入・普及を目標として掲げていますが、アンモニア混焼等の推進にあたっても、バリューチェーン全体への目配せは欠かせません。


アンモニアは、窒素と水素の混合物に鉄触媒を加えて高温・高圧で合成することで、製造されます(ハーバー・ボッシュ法)。しかし、この方法は、エネルギー消費やCO2排出が大きいことが課題となっています。


窒素は、空気中に潤沢に存在しますが、空気を―196℃まで冷却して、液体窒素として空気中から取り出します(深冷分離法)。


水素は、現在は天然ガスなどから製造されており、その際に大量のCO2が発生します。

また、天然ガスから水素を作る反応(水蒸気改質法)は吸熱反応のため、加熱し続けることが必要で、大量のエネルギーを消費します。


さらには、窒素と水素の合成は、高温・高圧で行うため、ここでもエネルギーが必要となります。


国内の大手電力会社の全ての石炭火力発電で20%の混焼を実施した場合、年間約2,000万トンのアンモニアが必要となるとされています。これは、現在の世界全体のアンモニア製造の10%程度、アンモニアは生産国で90%が消費されるため、貿易量で言えば、世界全体の量に匹敵します


アンモニア混焼は、カーボンニュートラルに向けた取り組みとして進められていますが、これだけ大量のアンモニアを新たに製造し、膨大なエネルギーを消費し、CO2を排出するものは、国際的にカーボンニュートラルの取組みとは、認められないでしょう。


アンモニア混焼・専焼を進めるのであれば、併せてアンモニア製造のグリーン化が不可欠です。そこは、日本政府やエネルギー企業も強くコミットする必要があるでしょう。



 
 
 

最新記事

すべて表示
サステナビリティとサステナビリティ経営の変遷。1990年代の環境経営、2000年代のCSR経営、2010年代のESG経営を経て、反ESGの動きもある中2020年代のサステナビリティ経営はどう進化するか?

サステナビリティおよびサステナビリティ経営が歴史的にどう進化してきたか、改めておさらいする。 サステナビリティは経済成長の負の側面としての環境問題への対応からはじまった。1962年にはレイチェルカーソンが「沈黙の春」で化学物質の汚染問題を提起している。日本でも1950年代後半から1970年代の高度経済成長期において、工場などから発生した有害物質によって公害病が引き起こされた。WWFやグリーンピース

 
 
 
「生産性と人間性をどう両立するか」「成功できるかではなく、役に立てるかを人生の軸とせよ」サステナビリティ経営や生き方に重要な示唆を与えるP.F.ドラッカーとジム・コリンズの対話

経営にサステナビリティを統合するうえでの理論的支柱となっている代表的経営思想家として、P.F.ドラッカー、ジム・コリンズがあげられる。 ドラッカーは、 「マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させる上で三つの役割がある。①自らの組織に特有の使命を果たす、②仕事を通じて働く人たちを生かす、③自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献することだ」 というサステナビリティ経営

 
 
 
サステナビリティリーダーは2026年に何をすべきか?

2025年の初頭、チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)に主な役割を尋ねた場合、「変革を推進し続け、経営陣の理解を得て、サステナビリティを企業経営に統合するためのビジネスケースを構築すること」だった。今後の数年間は、こうした路線が維持される見通しだった。 この見通しは正しく、企業によるサステナビリティへの取り組みは、金融・政治・社会面で大きな逆風に見舞われながらも、ほぼ変わらない水準を維持

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page