top of page

ESG経営からは世界のサステナビリティに貢献するチャレンジ、イノベーションが生まれないのでは?

  • takehikomizukami
  • 2024年7月28日
  • 読了時間: 3分

最近、「(本物の)サステナビリティ経営」と「ESG経営」は分けたほうがいいのではないかと考えている。


私が考えるサステナビリティ経営とESG経営の違いは、「貴社は何故サステナビリティに取り組むのか?」という問いに対する答えにあらわれる。「世界のサステナビリティに貢献するため」と答えるのがサステナビリティ経営、「企業価値を高めるため」と答えるのがESG経営だ。「環境・社会・経済の持続可能性に配慮することで、事業の持続可能性向上を図るため」という教科書どおりの答えもあるが、こうした型通りの答えをする企業の本音は「企業価値を高めるため(に必要らしい)」であることが多いように思う。その場合は、表面的なESG経営に分類される。


サステナビリティ経営とESG経営の違いは、対投資家のスタンスにもあらわれる。投資家や評価機関に評価されるように経営を行うのはESG経営で、基本的に投資家や評価機関のほうが社会・環境課題などの動向に精通している。サステナビリティ経営の場合は、持続的に社会・課題の解決に取り組続み続けるには投資家の理解も必要という現実を踏まえて、自らのビジョンや考え方を示して、「社会・環境課題の解決に取り組むことが長期的には投資家にもリターンを生み出す」というストーリーを語り、投資家を説得することになる。社会・環境課題などの動向については、企業のほうが圧倒的に深い理解を持っており、それを解決しようという強い熱意・意志を持っている。


企業にサステナビリティ/ESG経営が求められるようになった背景には、「企業経営者の使命は株主価値の最大化であり、それ以外の社会的責任を引き受けるべきではない」という

ミルトン・フリードマンの言葉に象徴される新自由主義が、社会・環境課題の深刻化を促してきたということがある。ミルトン・フリードマンの言葉には、企業価値と社会的責任はトレードオフの関係にあるという前提がある。近年は、必ずしもそうではなく、社会的責任を果たすことが企業価値につながるケースもあるということが分かってきている。人的資本を重視して従業員エンゲージメントを高めることが、生産性と企業価値の向上につながるなどはわかりやすい例だ。


しかし企業価値につながることが共通認識となっている社会的責任に対応するだけでは、構造的な問題を抱える現在の資本主義システムにおいて世界のサステナビリティを実現することは難しい。企業価値につながる保証はないが、世界のサステナビリティに貢献する取り組みへのチャレンジを促進する必要がある。


企業価値につながることが共通認識となっているもの、投資家が求めることにだけ対応するESG経営からは、世界のサステナビリティに貢献するチャレンジ、そこからのイノベーションが生まれないのではないかと懸念している。


世界のサステナビリティに貢献するチャレンジを促すためには、本物のサステナビリティ経営のあり方を示して、それにチャレンジする企業を増やす必要があると思う。

 
 
 

最新記事

すべて表示
IPBES報告書がビジネス環境のCSVを提唱

「生物多様性と自然」に関わる科学的評価を実施するIPBES(気候変動におけるIPCCに該当)が、初めてビジネスに焦点を当ててまとめた「ビジネスと生物多様性評価報告書」の政策決定者向け要約が発表された。 2026年10月にはCOP17が開催され、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の中間レビューが行われる。2030年目標に向けた折り返し地点となるこのタイミングで発表された報告書は、企業や政府

 
 
 
「京浜工業地帯の父」浅野総一郎は、サーキュラーエコノミーの先駆者でもあった

私の故郷である富山県氷見市出身の偉人として真っ先に名前があがるのは浅野総一郎です。明治維新から日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦という激動の時代に、この先日本にとって必要となる事業は何か考え、石炭、セメント、海運、造船などの事業を次々と立ち上げ、京浜工業地帯の礎を築き、「京浜工業地帯の父」と呼ばれています。 浅野総一郎は、「九転十起の人」とも呼ばれ、失敗してもくじけない、不屈の精神でも知られていま

 
 
 
2026年のサステナビリティ戦略。サステナビリティが企業価値につながる事例が増える一方で逆風も吹く時代、企業は全力疾走すべき時、減速すべき時、小さな一歩を踏み出すべき時を見極めて柔軟に対応することも必要

サステナビリティが企業価値につながる事例は増えているが、一方で反ESGの動きもある。こうした時代において、企業はどのようにサステナビリティ戦略を舵取りすべきか。TRELLISの記事を紹介する。 2025年が明らかにし、2026年がすでにサステナビリティに関して再確認していることは、「緊張とトレードオフ」が常にサステナビリティ経営の核心であり、そして近い将来もそうあり続けるだろうことだ。 サステナビ

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page