top of page
検索

金融機関のCSVとはどのようなものか?システムチェンジ投資と地方創生に期待

takehikomizukami

金融機関のCSVとはどのようなものでしょうか?


今、日本の金融業界では、社会課題解決に取り組む企業に投資するインパクト投資がブームのようになっています。しかし、日本企業は横並びで熱しやすく冷めやすいところがありますし、本気でサステナブルな社会を創っていこうという強い意思を持つ企業や人材は限られるのが実態かと思います。そうした中で、インパクト投資のように儲かる保証はなく、腰を据えて長期で取り組む必要のあるものが一過性のブームで終わらないかという懸念はあります。


インパクト投資の現在のブームのような状況が継続してさらに拡大していくかは分かりませんが、サステナブルな社会づくりや社会課題解決に向けて金融セクターの役割が重要であるのは間違いありません。


サステナブルな社会づくりに向けては、最近聞くようになったシステムチェンジ投資が広がれば、大きく貢献できると思います。インパクト投資は、社会課題解決に取り組む個別の企業を見つけて投資する帰納的な取り組みです。それに対して、システムチェンジ投資は、サステナブルな社会づくりに向けて解決すべき社会課題の全体構造を演繹的に捉え、その中でカギを握る複数の重要な解決策を実現するためにポートフォリオとして投資します。適切な企業が見つからなければ、起業を働きかけることもあるかもしれません。


システムチェンジ投資を行うには、サステナビリティに対する深く広い知見とそれを構造化できるスキルが必要です。日本でもそれができる人材は限られると思いますが、そうした人材の確保、組織としてのリテラシー向上が必要になるでしょう。


システムチェンジ投資は、是非金融機関に取り組んでもらいたいものですが、それ以外の金融機関のCSVの方向性として、金融アクセスやコミュニティ支援などがあります。


英バークレイズは、ケア・インターナショナルやプランUKなどのNPOと協働し、従来は金融サービスにアクセスできていなかった人々に、お金の取り扱いに必要なスキルと基本的な金融サービスを提供するプログラムを展開しています。バークレイズは、1日2ドル以下で生活し、以前は金融サービスにアクセスできていなかった何十万人もの個人に預金口座と金融教育を提供しています。これは、NPOと協働して、教育と金融サービスをセットで提供し新しい顧客を創造するやり方です。


豪ベンディゴ銀行は、オーストラリアの地方の多くで、大手銀行が何千もの支店を閉鎖したときに、地域コミュニティと連携し、コミュニティバンクという新しいモデルを創りだしました。コミュニティバンクは、フランチャイズ形式で、各地域の市民が、自己資本金や建物、通信機器などの設備及びスタッフを提供し、ベンディゴ銀行が銀行業務のノウハウを提供します。銀行の利益の半分はコミュニティバンクの利益となり、地域のために再投資されます。このコミュニティバンクは、地域に貢献しつつビジネス的にも成功しています。


このように、金融機関がコアビジネスを通じて未解決の社会的課題を解決するCSVの可能性はいろいろあります。特に国内では、コミュニティバンクなども参考にして、地方創生に向けたCSVに期待したいところです。

 
 
 

最新記事

すべて表示

トランプ政権の誕生は、サステナビリティの長期的な発展に向けた小さな揺り戻しに過ぎない。ここから何を学べるかを考え、さらなるサステナビリティの発展につなげていくことが大事だ。

パリ協定からの離脱、EV普及策撤廃、風力発電向け連邦政府の土地利用禁止、LNG開発と輸出の促進、政府のDEIの取り組み廃止、男女以外の性は認めないなど、トランプ政権は反ESG/サステナビリティの政策を矢継ぎ早に打ち出している。...

「サステナビリティ経営」は、「企業を長期的に持続可能にする経営」ではない。

最近、「サステナビリティ経営」=「企業を持続可能にする経営」と解釈している経営者、ビジネスパーソンが多いと感じる。しかし、サステナビリティ経営が求められているのは、企業活動の影響により環境・社会問題が深刻化する中、世界を持続可能にするために経営のあり方を変えていく必要がある...

社会課題を解決するイノベーションを生み出し、マーケティングでその市場を創造する。イノベーションとマーケティングは、社会課題解決ビジネス(CSV)においても基本的機能と言える。

ドラッカー曰く、「企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は2つの、そして2つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。」 この言葉の意図は、「企業の役割は、イノベーションで新たな価値を生み出し、マーケティングでその市場を創り広げること」...

Comments


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page