top of page

本格的なサステナビリティ経営を持続するには、長期視点の財務規律を併せ持つことが重要か

  • takehikomizukami
  • 2024年8月15日
  • 読了時間: 4分

前回のブログで、ユニリーバが専門家の評価による企業の「サステナビリティ・リーダー」として第2位の評価を得ているが、サステナビリティ経営を牽引したポール・ポールマン氏がCEOを退任したあと評価は下がり気味と書きました。


最近のユニリーバは業績や株価が低迷しており、ポールマン氏の路線を継承しているとみられていたアラン・ジョーブ前CEOが退任を余儀なくされ、2023年7月にハイン・シューマッハ氏がCEOに就任しています。


株価低迷の中、ユニリーバ株を買い進めたアクティビストからの圧力も受け、シューマッハ氏は、1万人以上の従業員を削減し、リプトンブランドで知られる紅茶事業をファンドに売却し、社会問題に対して高い意識を持つベン&ジェリーズを含むアイスクリーム事業を分離するなどリストラを進めています。


そして、最近のユニリーバの経営を象徴していたESGやステークホルダー主義からの転換を打ち出し、プラスチック使用の削減目標を延期するなどし、「ESGの目標を現実的なものにする」「業績優先の文化を植え付ける」としています。


長期的経営を重視し、「我々は、当社の長期戦略を理解してくれる株主を積極的に探しています。ヘッジ・ファンドには、よそに当たってもらうように伝えています。」と語っていたポールマン氏退任のあと、ユニリーバがアクティビストの影響を受けて長期視点の経営を転換しているのは皮肉なものです。


ユニリーバの現状をみていると「本格的なサステナビリティ経営は、上場企業には無理なのか?」という疑問が湧いてきます。


ユニリーバを抜いて「サステナビリティ・リーダー」の第1位となったパタゴニア創業者イヴォン・シュイナード氏の考え方は明確です。シュイナード氏は、自身と家族が保有する株式のすべてを環境保護活動に取り組む団体などに寄付して以下のように述べています。


「環境への取り組みを継続していくために、多くの資金を投入する方法を見つける必要があるが、パタゴニアを売却してその売却益を寄付するとしても、パタゴニアの価値観を引き継いでくれる売却先が見つけられる確認がなく、株式公開では、短期的な利益のプレッシャーにさらされる。そのため、自ら新たな仕組みとして、自身と家族が保有する会社の議決権付株式(2%)を会社の価値観を守るために設定されたPatagonia Purpose Trustに譲渡し、無議決権株式(98%)を環境危機と闘い自然を守る非営利団体Holdfast Collectiveに譲渡することにした。」


株式公開では、短期的な利益のプレッシャーにさらされ、本格的なサステナビリティ経営は無理だという考えです。


確かに、ポールマン氏時代のユニリーバやパタゴニアのような本格的なサステナビリティ経営を上場企業が継続していくのは難しいのかもしれません。


非上場でサステナビリティ経営を進めて行くのは一つの方向性です。「非上場では、インパクトをスケールできないのではないか?」という疑問もあるかもしれませんが、非上場のIKEAはサステナビリティ経営を進めながらかなりスケールしていますし、日本でも「利益三分主義」を掲げるサントリーは非上場です。


一方で、上場企業でも一定レベルのサステナビリティ経営を継続している企業もあります。ネスレは、2000年代に当時のCEOピーター・ブラベック氏のもとでCSV経営を掲げ、「食品メーカーから栄養・健康・ウエルネス企業への戦略的転身」などを進めています。


ネスレは、長期的な価値創造を行う経営の指針として、「社会と株主に価値を創造する(=CSV)」に加えて、「持続可能な一桁台半ばのオーガニックグロース(M&Aに依存しない内部資源による成長)を維持する」「継続的に緩やかに利益率を改善する」「資本効率を高める」を掲げています。ビジネスを通じた社会課題解決を目指すとともに、長期視点で持続可能に成長するという財務的な規律も重視しています。


サステナビリティ経営を持続していくためには、パタゴニアのような非上場でガバナンスを工夫するやり方もありますし、ネスレのように上場しながら長期的な成長を持続する財務規律を併せ持つやり方もあります。


(参考)

「ESG王者ユニリーバの落日」日経ESG2024.9

 
 
 

最新記事

すべて表示
サステナビリティとサステナビリティ経営の変遷。1990年代の環境経営、2000年代のCSR経営、2010年代のESG経営を経て、反ESGの動きもある中2020年代のサステナビリティ経営はどう進化するか?

サステナビリティおよびサステナビリティ経営が歴史的にどう進化してきたか、改めておさらいする。 サステナビリティは経済成長の負の側面としての環境問題への対応からはじまった。1962年にはレイチェルカーソンが「沈黙の春」で化学物質の汚染問題を提起している。日本でも1950年代後半から1970年代の高度経済成長期において、工場などから発生した有害物質によって公害病が引き起こされた。WWFやグリーンピース

 
 
 
「生産性と人間性をどう両立するか」「成功できるかではなく、役に立てるかを人生の軸とせよ」サステナビリティ経営や生き方に重要な示唆を与えるP.F.ドラッカーとジム・コリンズの対話

経営にサステナビリティを統合するうえでの理論的支柱となっている代表的経営思想家として、P.F.ドラッカー、ジム・コリンズがあげられる。 ドラッカーは、 「マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させる上で三つの役割がある。①自らの組織に特有の使命を果たす、②仕事を通じて働く人たちを生かす、③自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献することだ」 というサステナビリティ経営

 
 
 
サステナビリティリーダーは2026年に何をすべきか?

2025年の初頭、チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)に主な役割を尋ねた場合、「変革を推進し続け、経営陣の理解を得て、サステナビリティを企業経営に統合するためのビジネスケースを構築すること」だった。今後の数年間は、こうした路線が維持される見通しだった。 この見通しは正しく、企業によるサステナビリティへの取り組みは、金融・政治・社会面で大きな逆風に見舞われながらも、ほぼ変わらない水準を維持

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page