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CSVの存在意義は、新たな市場や取組みを「創造」することにある。

  • takehikomizukami
  • 6月21日
  • 読了時間: 3分

私は“CSV”を専門にしています。サステナビリティ界隈では、CSV以外にも、CSR、ESG、SDGs、GX、SX、インパクト、リジェネレーション、ウェルビーイング、ネットゼロ、ネイチャーポジティブなど、様々な言葉が生まれては、トーンダウンしたり使われなくなったりしています。CSVも2010年代初頭は関心を持つ企業や人も多くいましたが、今はあまり使われなくなっています。


しかしそれぞれの言葉や概念には意味があり、サステナビリティの専門家であれば、正しく理解して使いこなすことが必要ですし、サステナビリティを本質的に推進しようとするのであれば、細かい言葉の定義は理解せずとも、その本質は理解しておくべきです。


では、CSVの存在意義、その本質は何か?CSVは、”Creating” Shared Valueの略で、共有価値の「創造」などと略されますが、”Creating”、「創造」がその本質であり、それに対する戦略的視点を提供することに存在意義があります。


私はCSVについて話をするときは、「CSVとは、社会問題の解決と企業の利益、競争力向上を両立させ、社会と企業の両方に価値を生み出すための経営フレームワーク」と説明しています。また、フレークワークについては、以下の3つのアプローチやその基本パターンについて説明しています。


製品・サービスのCSV:社会問題を事業機会と捉えた製品・サービスの創出・拡大


バリューチェーンのCSV:調達、物流、生産、販売、人材管理などのバリューチェーンにおける社会価値創造を通じた競争力強化


ビジネスエコシステムのCSV:事業展開地域の発展支援による自社競争力の向上、社会と自社にとって有用なルールの形成、社会的課題への啓発を通じた市場創造など


CSVを表面的に理解している人は、上記の製品・サービスのCSVを指すものとして、既存の環境や健康などに貢献する製品・サービスをもって「我が社はCSVにはすでに取り組んでいます」などと言いがちです。


しかしCSVは、社会と自社にとっての新たな価値を生み出すための戦略的視点を提供するものです。既存の取組みを肯定するために使っても意味がありません。


CSVの3つのアプローチや基本パターンにおいて、自社がまだ取り組んでおらず、自社としてポテンシャルのあるものがあれば、新たに取り組んで価値を生み出すべきです。また、製品・サービスのCSVとビジネスエコシステムのCSVを組み合わせるなどして、自社の強みのある領域において、新たな社会課題解決、市場創造にチャレンジすべきです。


世の中に解決すべき社会課題はまだ多く存在し、テクノロジーや経済活動が進化すれば新たな社会課題が生み出されます。そうした未解決の社会課題にビジネスの力でチャレンジするためのツールがCSVです。


CSVを広げていく必要性はまだまだあると思っています。

 
 
 

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