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何故キリンホールディング磯崎会長は、CSVを経営の根幹に据えたのか?サステナビリティ経営=CSR+CSV+ESGであることを理解すべき

  • takehikomizukami
  • 5月24日
  • 読了時間: 2分

最近はCSRという言葉を聞くことが減った。時々使われる場合には、社会貢献活動の意味で使われることが多い。しかし本来のCSRの定義は、「組織の決定及び活動が社会及び環境に及ぼす影響に対して、透明かつ倫理的な行動を通じて組織が担う責任」(ISO26000)で、私が提唱するサステナビリティ経営の3原則で言えば、第1の原則に該当するものだ。


【サステナビリティ経営の3原則】

第1の原則:「自社が及ぼしている大きな影響に対して、責任をもって対応する」

第2の原則:「世界の重要な課題に対して自社の強みで貢献する」

第3の原則:「自社に影響を及ぼすイシューに戦略的に対応する」


10年前にSDGsが出てくる頃までは、企業の社会・環境課題への取組みに関して「サステナビリティ」よりも「CSR」が使われることが多かった。しかしどうしても社会貢献、本業とは別の活動として捉えられがちだった。そうした中で、上記の第2の原則に該当するものとして「CSV」が広がってきた。


現在連載されているキリンホールディングスの磯崎会長の私の履歴書に、CSRからCSVへの企業経営者の考え方の変化が良く示されている。


「私は常務取締役としてCSR(企業の社会的責任)の担当役員でもあった。3年で60億円を拠出する被災地支援の「絆プロジェクト」を発足させ、同時に第三者を入れた諮問委員会もつくった。ところが会議初日に社外委員から「その支援金は株主にとってどんなメリットがあるのですか」と質問された。虚を突かれ、その言葉を何度も深く考えた。寄付が社会に歓迎されても、株主の納得がなければ続けられないのではないか。


悩み続ける中で出会ったのが著書「競争の戦略」で知られる米ハーバード大のマイケル・ポーター教授の考え方だ。初回でも述べたCSV(共有価値の創造)経営という概念で、企業の強みを生かして社会課題を解決し、同時に経済価値の創出にもつなげていく。企業の持続的成長に寄与し、株主も歓迎するという好循環を生み出すとあった。


私の経営哲学の根幹を成すものとなったが、思いを強くする契機となったのは、12年に渡米してポーター教授と会ったときだ。「簡単に達成できそうな目標はビジョンではない。一見すると実現できそうもない理想の姿や夢を掲げるものである」という力強い言葉に背中を押された。」


実際は、CSRもCSVも重要で、第3の原則に該当するESGも重要だ。CSRやCSVと言う言葉があまり使われなくなり、直近ではESGも使われなくなる方向にあるが、それぞれの考え方は理解しておくべきだ。サステナビリティは、3つの原則から構成されることをしっかり理解して欲しい。

 
 
 

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