top of page

代替たんぱく普及に向けてフードネオフォビアを如何に克服するか?「カリフォルニアロールの原則」の出番か

  • takehikomizukami
  • 2022年1月29日
  • 読了時間: 3分

大豆ミート市場が広がっています。健康、動物福祉の観点に加え、最近は、地球環境への配慮から大豆ミートを嗜好する人も増えているようです。メニューのバラエティも増えており、味も料理の仕方によっては、畜産由来の肉と区別がつかないくらい良くなっています。今後は、年率20%程度で市場が拡大すると予測されていますが、そのくらいの伸びは期待できるでしょう。


サステナビリティの観点から気になるのは、大豆ミート市場が拡大すると、大豆栽培のための森林破壊が加速するのではないか、ということですが、畜産由来の食肉からの代替がうまく進めば、当面は問題なさそうです。


牛だけでも10億頭が飼育されている畜産は、世界の温室効果ガスの14%を占めるとされる気候変動への影響が注目されていますが、それ以外にも、水の過剰利用、水質・大気汚染、土地利用、穀物の大量使用など、様々な課題が指摘されています。土地利用に関しては、畜産は世界の陸地の26%を利用しているとされています。また、穀物の大量使用については、大豆生産の90%が畜産向けの穀物として使用されています。大豆ミードの需要が増えても、穀物用大豆を大豆ミートにシフトする、畜産用の土地を大豆生産に利用するということが出来れば、新たな土地開発、生態系破壊にはつながりません。


大豆ミートは、従来から食べている大豆を使用しており、見た目や使用される料理も従来の食肉と大きく変わらないことから、消費者としても受け入れやすく、市場は順調に拡大していくでしょう。


一方で、その他の代替たんぱくとして期待される培養肉、昆虫食などについては、消費者が抵抗感もあり、市場が広がるには、時間がかかるでしょう。


この消費者が持つなじみのない食品に抵抗感を持つことを「フードネオフォビア」と言います。フードにネオ(新しい)、フォビア(恐怖症)を組み合わせた言葉です。今後、多様な代替たんぱく市場が広がっていくには、フードネオフォビアの克服が課題となります。


フードネオフォビア克服の方法として有効とされているのが、情報の提供です。どういう素材を使って、どう加工しているのか、それを食べる意味合いは何か、食べた人の評判はどうかなどの情報を提供することで、「未知のもの」という感覚が薄れ、抵抗感がなくなっていきます。


また、女性、若者、教育レベルの高い人などが、フォードネオフォビア傾向が低く、新しい食品を受け入れやすいという調査結果があります。こうしたセグメントをまず攻めることも有効かも知れません。


「カリフォルニアロールの原則」の活用も有効だと思います。カリフォルニアロールの原則は、新しいものを提供するときに、新しいものと馴染みのある何かを組み合わせて、「新しいけど馴染みのあるもの、身近なもの」と感じてもらうようにするものです。


カリフォルニアロールは、この原則にもとづいて発明されました。米国で寿司が提供され始めたのは、1960年代ですが、最初は、寿司という新しいものに寄り付く人は、いませんでした。ステーキにマッシュポテトを添えた夕食が一般的な中で、外食で生の魚を食べるという発想は、危険なものにすら思われていました。馴染みがなかったのです。


寿司がなかなか米国で受け入れられない中、ロスアンゼルスの寿司職人が、寿司を身近に感じてもらうためのアイデアとして、「馴染みのない食材とキュウリやカニやアボガドといった見慣れた食材を組み合わせたらどうなるだろう?」と考えました。さらに、外側に米が見えて内側に海苔のある「裏巻き」のほうが、米国人にとっては身近に感じられることにも気が付きました。そして、カリフォルニアロールが生まれ、寿司人気に火が付きました。


大豆ミート市場は広がっていますが、それ以外の代替たんぱく市場開拓に挑む人は、「カリフォルニアロールの原則」を含む、フードネオフォビアの克服方法を研究すべきでしょう。


 
 
 

最新記事

すべて表示
IPBES報告書がビジネス環境のCSVを提唱

「生物多様性と自然」に関わる科学的評価を実施するIPBES(気候変動におけるIPCCに該当)が、初めてビジネスに焦点を当ててまとめた「ビジネスと生物多様性評価報告書」の政策決定者向け要約が発表された。 2026年10月にはCOP17が開催され、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の中間レビューが行われる。2030年目標に向けた折り返し地点となるこのタイミングで発表された報告書は、企業や政府

 
 
 
「京浜工業地帯の父」浅野総一郎は、サーキュラーエコノミーの先駆者でもあった

私の故郷である富山県氷見市出身の偉人として真っ先に名前があがるのは浅野総一郎です。明治維新から日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦という激動の時代に、この先日本にとって必要となる事業は何か考え、石炭、セメント、海運、造船などの事業を次々と立ち上げ、京浜工業地帯の礎を築き、「京浜工業地帯の父」と呼ばれています。 浅野総一郎は、「九転十起の人」とも呼ばれ、失敗してもくじけない、不屈の精神でも知られていま

 
 
 
2026年のサステナビリティ戦略。サステナビリティが企業価値につながる事例が増える一方で逆風も吹く時代、企業は全力疾走すべき時、減速すべき時、小さな一歩を踏み出すべき時を見極めて柔軟に対応することも必要

サステナビリティが企業価値につながる事例は増えているが、一方で反ESGの動きもある。こうした時代において、企業はどのようにサステナビリティ戦略を舵取りすべきか。TRELLISの記事を紹介する。 2025年が明らかにし、2026年がすでにサステナビリティに関して再確認していることは、「緊張とトレードオフ」が常にサステナビリティ経営の核心であり、そして近い将来もそうあり続けるだろうことだ。 サステナビ

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page