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マテリアリティ特定で、「自社にとっての重要度」をどのように評価するか

takehikomizukami

前回、マテリアリティ特定において、「自社にとっての重要度」の精査は、サステナビリティ経営の一丁目一番地と言えるほど重要だが、ほとんどの企業のマテリアリティ特定においては、この精査が出来ていないと述べました。


多くの企業のマテリアリティ特定において、「自社にとっての重要度」は、自社の経営層や社員の議論やアンケートなどで評価しています。その際には、自社のパーパス、ビジョン、戦略との整合性などの観点から評価がなされます。しかし、サステナビリティ経営やサステナビリティ課題に対する十分な理解、リテラシーがない人々の議論で、適切なマテリアリティが選定できるでしょうか?通常は、それほど議論が深まらず、多数の意見や声の大きい人の意見が反映されて、既存の取り組みを追認するような評価結果となります。そこからは、何ら新しい取り組みは、生まれません。


こうした場合、議論の準備、ファシリテーター役を担うコンサルティング会社の役割が重要なのですが、サステナビリティ系のコンサルタント会社は、事業に対する理解が十分でなく、戦略系のコンサルティング会社は、事業に対する理解があったとしても、サステナビリティに対する理解が十分でなく、適切な議論の設計、ファシリテーションができていません。


マテリアリティ特定の「自社にとっての重要度」評価にあたっては、評価者への事前のインプットと評価の枠組みなどの設計が重要です。


マテリアリティ特定では、アウトプットだけでなく、そのプロセスを通じて、経営層や事業部門長などサステナビリティ経営推進のキープレーヤーに、サステナビリティ課題の自社経営にとっての意味合いを理解してもらうことが大事です。そのためには、サステナビリティ推進のキープレーヤーを評価者とし、事前インプットとして、それぞれのサステナビリティ課題について、その背景、政策やイニシアチブ、先進企業などの取り組み、自社のバリューチェーンとの関係性などを理解してもらいます。最初はレクチャーなどでインプットしますが、その後のマテリアリティ特定の議論を通じて、理解を深めてもらいます。


また、マテリアリティ特定にあたっては、評価の枠組みの適切な設計・共有も欠かせません。サステナビリティ課題の自社にとっての意味合いとしては、機会、リスクに加え、課題に取り組むことが、ブランド価値、優秀な人材獲得、原材料の安定調達などの資本強化につながるということがあります。この機会、リスク、資本強化の観点を考慮して、評価の枠組みを設計する必要があります。


サステナビリティ課題を理解し、評価の枠組みを適切に設計・共有し、「サステナビリティ課題がもたらす重要な機会とリスクは何か?」「サステナビリティ課題は、自社ならではの強み、自社ならではのビジネスモデルに長期的にどのような影響を及ぼすか?」を議論することで、サステナビリティ課題の自社経営・ビジネスへの意味合いについての理解が深まり、適切なマテリアリティが特定できます。


事前のインプット、評価の枠組みの適切な設計、そして議論を深めるファシリテーション、それらを意識して、マテリアリティ特定の「自社にとっての重要度評価」を行っていただければと思います。

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