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ポーターとサステナビリティ

マイケル・ポーターは、CSVの生みの親とされています。CSVは、サステナビリティ経営を推進する上で、極めて重要な考え方で、製品・サービス、バリューチェーン、クラスターという3つのレベルで、社会価値と企業価値の両立を目指す戦略フレームワークです。このうち、バリューチェーンとクラスターは、ポーターが自ら提唱したフレームワークを応用したものです。


バリューチェーンは、マイケル・ポーターが「競争優位の戦略」で提唱した概念で、企業活動が提供価値にどのように貢献するのかを体系的かつ総合的に検討する手法です。事業を顧客にとっての価値を創造する活動という切り口から分解し、それぞれの活動の特徴を正確に把握したうえで、それらの活動の連鎖を再構築し、より競争優位をもたらすにはどのような戦略をとればいいかを導き出すフレームワークです。


「バリューチェーンのCSV」は、このバリューチェーンと社会との関わりに注目し、社会価値と企業価値を両立させるバリューチェーンのあり方を考えるものです。「製造→物流→販売」といったサプライチェーンや、人材管理などの一連の付加価値を生み出す企業活動(バリューチェーン)は、資源利用、CO2排出などの環境面、自社や調達先の労働条件などの社会面など、社会課題との関わりを持っています。バリューチェーンが世界中に広がるにつれ、バリューチェーンと社会との関わりも広がっています。その結果、バリューチェーンと関連する社会課題が企業にとっての経済的コストとなるケースが増えてきており、その解決によりバリューチェーンを最適化・効率化し、企業競争力向上を生み出せる可能性は、大きくなっています。


具体的には、ウォルマートが容器包装の簡素化・軽量化と輸送ルートの効率化を通じて環境負荷を軽減しつつ、2億ドルのコストを削減している例に見られるように、環境負荷が大きいことはバリューチェーンの非効率性を示しており、これを効率化することは、企業にとっても社会にとっても価値を生み出します。また、ネスレが途上国の貧困地域のコーヒー農家を支援しつつ、限定された産地でしか入手できない高品質なコーヒー豆の安定調達を実現している例に見られるように、バリューチェーン上のサプライヤーが抱える社会課題を解決することにより、企業にとっても社会にとっても価値を生み出すといったことも可能です。


クラスターは、マイケル・ポーターが「国の競争優位」などで提供した概念で、クラスターとはブドウなどの房を意味し、特定の地域に集積した企業、大学・研究機関、支援組織等が協働しながらイノベーション、新たな製品・サービスを生み出すことで産業育成と地域振興を目ざすものです。代表例は、シリコンバレーで、ポーターは、国内で特色あるクラスターが多く存在することが、国家の産業競争力の向上につながると主張しています。


「クラスターのCSV」は、もともと地域の発展につながるクラスターの考え方を広く捉え、人材、インフラ、関連産業、規制や事業慣行、さらには消費者の知識・意識など、ビジネスに影響する外部要因に働きかけ、社会価値と企業価値を両立する形に変えるものです。

具体的には、マイクロソフト、シスコ、デルなどは、事業展開地域でのIT教育に力を入れていますが、こうした活動は地域の発展を促すとともに、不足しがちなIT人材を育成することを通じて自社に必要なIT人材という外部要因を強化しています。その他、環境に配慮した商品が売れるようなルール整備を働きかけたり、消費者の意識を変えることで環境に配慮した商品が売れる新たな市場を創造することなどがあります。


もう一つの「製品・サービスのCSV」は、必ずしもマイケル・ポーターの従来の経営理論に基づくものではありませんが、気候変動、プラスチック、水・食糧資源の不足、高齢化、格差の顕在化など社会課題に対する関心が高まる中、自社の強みやリソースを活用してどのような社会課題に対応できるのかを考えることは、企業に新しい視点や気付きを与え、新市場の発掘、イノベーションの創出につながる可能性が高まっています。製品・サービスを通じた社会価値創造は、企業の基本的提供価値ですので、ここはさらなる理論・フレームワークの発展が期待されるところです。


ポーター理論に基づくCSVは、サステナビリティ経営の基本ですが、CSVをしっかり理解し、経営に取り入れている企業は、今のところ限られます。CSVに基づくサステナビリティ経営には、大きなポテンシャルがあります。

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