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バリューチェーンのCSVの好事例。ネスプレッソによるコンゴ民主共和国のコーヒー豆産業再生支援

社会価値と企業価値を両立させるCSV(Creating Shared Value)の基本アプローチは、製品・サービス、バリューチェーン、ビジネスエコシステム(クラスター)の3つのCSVです。このうち多くの企業で実践できるポテンシャルがあり、検討してほしいのがバリューチェーンのCSVです。


そのバリューチェーンのCSVの生みの親とも言えるネスレグループのネスプレッソが、最近も秀逸な取り組みを始めているので紹介します。


ネスプレッソは、コンゴ民主共和国のコーヒー豆産業を再生するため、2,000万米ドルの資金支援をすることを発表しました。コンゴ民主共和国のコーヒー豆は、かつて世界最高級品と言われ、1980年には同国の輸出品目の第2位でした。しかし、長期にわたる政情不安により、2000年代以降はコーヒー豆の生産量が減少しています。


ネスプレッソは、2020年からコンゴ民主共和国でNGOや米国国際開発庁などと協働するコーヒー豆生産者支援プログラムを展開しています。今回の資金支援では、コーヒー豆のプレミアム価格での購入、技術支援、コーヒー農家の世界市場展開支援などを実施します。また、森林との共生、土壌の健全化などリジェネラティブ農業によるコーヒー生産の持続可能性向上も支援します。さらにコンゴ民主共和国特有の鳥類を保護するための生物多様性トラッキングツールも導入します。


コーヒーは、2050年までに気候変動の影響で世界生産の6割~7割を占めるアラビカ種の生産量が半減する「コーヒーの2050年問題」が指摘されるなど、長期的な供給リスクが懸念されています。コーヒー関連事業者にとっては、如何にコーヒー豆を安定的に調達するかが重要な課題となっています。


そうした中で、コンゴ共和国のコーヒー豆産業を再生し、コーヒー豆を長期的に安定調達していこうというネスプレッソの取り組みは、優れたバリューチェーンのCSVです。


コーヒーだけでなく、気候変動により長期的な供給リスクがある作物は多くあります。企業は、自社にとって特に重要な原材料を中心に、バリューチェーンのCSVによる長期的視野での安定調達を検討すべきです。国内で生産される原材料については、これは地方創生にもつながる取り組みです。ぜひ多くの企業に検討してもらいたいと思います。


(参考)

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