top of page

ダノン元CEOのサステナビリティ推進リーダーとしての復権

takehikomizukami
2021年12月25日
読了時間: 3分

ダノンのCEOを今年3月に業績不振の責任により解任されたばかりのエマニュエル・ファベール氏が、ESG情報開示の今後のスタンダードをつくると見られている国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の議長に就任することが発表されました。


この人事は、欧米の失敗した人材に次の機会を与えるというカルチャーと、政財界出身で本気でサステナビリティを推進するリーダーの存在という2つの点を象徴しています。他の政財界出身のサステナビリティ推進リーダーとしては、元ユニリーバCEOポール・ポールマン氏、元米副大統領アル・ゴア氏などが代表格です。


エマニュエル・ファベール氏は、ダノンで、CO2排出をコストとみなした1株利益の開示、原材料の地域調達の拡大など、サステナビリティ経営を推進し、昨年には、株主総会で「使命を果たす会社」への定款変更を行い、サステナビリティに関する4つの目標、 (1)製品を介した健康の改善(2)地球資源の保護(3)将来を社員と形成すること(4)包摂的な成長を盛り込みました。これは、仏会社法に基づく、「Entreprise à Mission(使命を果たす会社)」モデルを採択した初の上場会社として、ステークホルダー資本主義を体現する動きとして注目されました。


その後1年も経たないうちに、株価が競合に見劣りすることなどにより、CEOを解任されました。このときは、長期的なビジョンと短期的な収益のバランスをとるサステナビリティ経営の難しさが指摘されました。


しかし、ファベール氏がサステナビリティに見識を持つビジネスリーダーであることは、間違いありません。以前のインタビューで語っている以下の言葉などは、なるほどと頷かされます。


「過去、食品業界は世界のより多くの人を飢えから救うため、できるだけ安いコストで食料を供給するため、大量生産による規模のメリットを追求してきた。しかし、世界各地で肥沃な土壌や水が枯渇してきているほか、人類が食料を数種類の「種」に依存するようになった。人類の食料をわずかな「種」に依存することは、とてもリスクが高いことだ。」


「これから大切なのは、人類が必要な食料だけを増やすのではなく、自然の生態系を全体で保全することで、これを「アリメンテーション(栄養・滋養)・レボリューション」と呼んでいる。この取り組みなくして、世界の資源を維持していくことはできない。これからは、生態系を維持していくためにも、世界各地で続いてきた食文化、食習慣、レシピ、食資源を永続させていく必要がある。ダノンは、あらゆる生態系を維持していくというゴールの下に、ローカルでのビジネスを考えている。大量生産の時代から事業環境が変わり、「ローカルに徹するグローバル」に答えがあると信じる。」


ローカルの食文化を守ることが、生態系と食料の持続性を維持するという考えは、重要だと思います。こうしたサステナビリティの見識を持つファベール氏であれば、ESG情報開示のスタンダードづくりについても、本質的な議論を進めていくのではないかと思います。


また、ファベール氏のようなサステナビリティ推進リーダーが増えてくれば、サステナビリティの潮流もより本格的なものになるでしょう。


 
 
 

最新記事

すべて表示
CGコード改訂が示すサステナビリティ経営の新機軸

2026年に改訂されたコーポレートガバナンス・コード(CGコード)は、形式的な順守から実効性のあるガバナンスへの転換を強く打ち出しました。サステナビリティに関する規定が「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」から「取締役会等の責務」へ移されたことは、その象徴です。サステナビリティは、もはや社会への配慮にとどまらず、取締役会が中長期的な企業価値の向上に向けて担うべき経営課題として位置付けられたの

 
 
 
「サステナビリティ2.0」の必要性-サステナビリティは、会計モデルなどの現在の5つの主要モデルを超えて、新しいビジョンを構想する必要がある。

TRELLISの記事より。 サステナビリティは転換点を迎えている。現在主流となっている5つのモデル―会計的アプローチ、ロールバック、権力政治、反企業的アプローチ、キャリア志向型―には、それぞれ重大な限界がある。「サステナビリティ2.0」では、基本原則を再確認し、インセンティブを創出し、サステナビリティを事業戦略や業務に統合すべきである。 サステナビリティの5つの主要モデル 「会計モデル」 このモデ

 
 
 
幸福感を高めるお金の使い方とCSVの機会

幸福感を得るためのお金の使い方について纏めた「Happy Money: The Science of Smarter Spending」という書籍があります。 この本では、幸福感を上げるためのお金の使い方として、①「物ではなく体験を購入しよう(Buy Experiences)」、②「特別なご褒美にしよう(Make it a Treat)」、③「心に余裕を持てるよう時間を買おう(Buy Time)」

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page