検索
  • takehikomizukami

ダノン元CEOのサステナビリティ推進リーダーとしての復権

ダノンのCEOを今年3月に業績不振の責任により解任されたばかりのエマニュエル・ファベール氏が、ESG情報開示の今後のスタンダードをつくると見られている国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の議長に就任することが発表されました。


この人事は、欧米の失敗した人材に次の機会を与えるというカルチャーと、政財界出身で本気でサステナビリティを推進するリーダーの存在という2つの点を象徴しています。他の政財界出身のサステナビリティ推進リーダーとしては、元ユニリーバCEOポール・ポールマン氏、元米副大統領アル・ゴア氏などが代表格です。


エマニュエル・ファベール氏は、ダノンで、CO2排出をコストとみなした1株利益の開示、原材料の地域調達の拡大など、サステナビリティ経営を推進し、昨年には、株主総会で「使命を果たす会社」への定款変更を行い、サステナビリティに関する4つの目標、 (1)製品を介した健康の改善(2)地球資源の保護(3)将来を社員と形成すること(4)包摂的な成長を盛り込みました。これは、仏会社法に基づく、「Entreprise à Mission(使命を果たす会社)」モデルを採択した初の上場会社として、ステークホルダー資本主義を体現する動きとして注目されました。


その後1年も経たないうちに、株価が競合に見劣りすることなどにより、CEOを解任されました。このときは、長期的なビジョンと短期的な収益のバランスをとるサステナビリティ経営の難しさが指摘されました。


しかし、ファベール氏がサステナビリティに見識を持つビジネスリーダーであることは、間違いありません。以前のインタビューで語っている以下の言葉などは、なるほどと頷かされます。


「過去、食品業界は世界のより多くの人を飢えから救うため、できるだけ安いコストで食料を供給するため、大量生産による規模のメリットを追求してきた。しかし、世界各地で肥沃な土壌や水が枯渇してきているほか、人類が食料を数種類の「種」に依存するようになった。人類の食料をわずかな「種」に依存することは、とてもリスクが高いことだ。」


「これから大切なのは、人類が必要な食料だけを増やすのではなく、自然の生態系を全体で保全することで、これを「アリメンテーション(栄養・滋養)・レボリューション」と呼んでいる。この取り組みなくして、世界の資源を維持していくことはできない。これからは、生態系を維持していくためにも、世界各地で続いてきた食文化、食習慣、レシピ、食資源を永続させていく必要がある。ダノンは、あらゆる生態系を維持していくというゴールの下に、ローカルでのビジネスを考えている。大量生産の時代から事業環境が変わり、「ローカルに徹するグローバル」に答えがあると信じる。」


ローカルの食文化を守ることが、生態系と食料の持続性を維持するという考えは、重要だと思います。こうしたサステナビリティの見識を持つファベール氏であれば、ESG情報開示のスタンダードづくりについても、本質的な議論を進めていくのではないかと思います。


また、ファベール氏のようなサステナビリティ推進リーダーが増えてくれば、サステナビリティの潮流もより本格的なものになるでしょう。


18回の閲覧0件のコメント

最新記事

すべて表示

すべての人は、生産者、消費者、市民の3つの顔を持っています。いつもは意識していないかも知れませんが、それぞれの立場で影響力を発揮することができます。そしてその影響力をサステナブルな社会づくりに活かすこともできます。 生産者としての影響力は、通常は仕事を通じて発揮されます。すべての仕事は何らかの価値を生み出していますが、3人石工の寓話の3人目のように、組織のパーパスを常に意識しで仕事をすることで、よ

「何故、企業は脱炭素に取り組まなければならないのか?」という問いに対して、多くのビジネスパーソンは、「それが社会的要請だから」と答えるのではないでしょうか。パリ協定を軸として、各国政府が脱炭素目標を掲げ、投資家などのステークホルダーも企業に脱炭素を求めています。こうした社会の要請、ステークホルダーの要請に対応する必要があるという考え方です。しかし、これは受け身の考え方です。受け身の姿勢の問題は、「

COP26で、グラスゴー気候合意が採択されました。1.5℃が共通目標となったこと、表現が弱められたとは言え石炭火力の段階的削減が明記されたこと、懸案であったパリ協定第6条の温室効果ガス排出削減量取り引きルールが合意されたことなどから、COP26は概ね成功だったと考えられています。 また、グラスゴー気候合意には、新しい内容が2つ盛り込まれました。1つは、温暖化ガスを吸収する森林などの自然と生態系の保