top of page

「三方よし」では、何故ダメか。

  • takehikomizukami
  • 2020年2月2日
  • 読了時間: 3分

日本のビジネスパーソンは、「三方よし」が好きです。「三方よし」は、「売り手よし、買い手よし、世間よし」という、近世から明治期に活躍した近江商人の経営理念です。CSRやSDGs、マルチステークホルダー経営が話題になると、「日本企業は、三方よしの精神を昔から持っている」という話が出ます。しかし、現在の企業に本質的に求められているのは、三方よしではありません。


近江商人は、封建時代に全国各地を商圏として活動しており、当時、他国で円滑に商業活動を行うためには、自己や顧客の利益だけではなく、商業を行う地域への貢献の視点を持つことが非常に大切でした。そうした背景から「三方よし」の理念が生まれました。自らの利益だけでなく、顧客に喜ばれる商品を提供することは、ビジネスの基本ですし、地域への貢献の視点を持つことも、信頼を築き評判を高め、継続的にビジネスを実施していく上で、大事なことです。この三方よしの理念は、尊重すべきものですが、大きく2つの課題があります。


まずは、「世間よし」がローカルであることです。「世間よし」は、基本的には、ビジネスを行う地域への貢献、生産拠点や商品を販売する地域への貢献です。しかし、現在求められているのは、グローバルな課題への貢献です。自社のビジネスに関連するところでは、サプライチェーンの上流まで遡った人権や生態系破壊への対応が求められます。また、気候変動や海洋プラスチックなど、影響が世界に広がる、個々の企業というよりは、ビジネスのシステム全体に関わる課題への対応が求められています。ローカルではなく、グローバルな視点が求められています。


2つめの課題は、「世間よし」が、基本的に社会貢献であることです。近江商人は、商売で利益が貯まると、無償で橋や学校を建てたりして世間に貢献したと言われます。これは、ビジネスで稼いだ利益の一部を地域に還元するという慈善活動の考え方です。しかし、現在の企業に求められているのは、ビジネスそのものを通じたインパクトの大きい貢献、さらに言えば、ビジネスを拡大させ、それとともに社会課題解決もスケールしていくことが求められてます。利益の還元ではなく、CSVが求められています。


現在の企業に求められているのは、SDGsなどの社会課題をビジネスに統合し、他社を巻き込み、イノベーションを生み出し、大きなインパクトを創出し、社会を変えていくことです。「三方よし」は、顧客や地域社会に配慮した良い企業を生み出す理念だとは、思いますが、イノベーティブでダイナミックに社会を変革していく企業を生み出すという印象はありません。


「三方よし」もグローバルに、インパクトをスケールする形に進化していく必要があります。

 
 
 

最新記事

すべて表示
コーポレートガバナンス・コードの改訂を機に、サステナビリティ方針を見直すべきではないか。

先般金融庁が提示したコーポレートガバナンス・コード(CGC)改訂案では、サステナビリティに関する記述を「第2章 株主以外のステークホルダーとの適切な協働」から「第4章 取締役会等の責務」に移管し、原則で「取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティを巡る課題に積極的・能動的に取り組むべき」と規定している。これまでの「上場会社は、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る

 
 
 
IPBES報告書がビジネス環境のCSVを提唱

「生物多様性と自然」に関わる科学的評価を実施するIPBES(気候変動におけるIPCCに該当)が、初めてビジネスに焦点を当ててまとめた「ビジネスと生物多様性評価報告書」の政策決定者向け要約が発表された。 2026年10月にはCOP17が開催され、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)の中間レビューが行われる。2030年目標に向けた折り返し地点となるこのタイミングで発表された報告書は、企業や政府

 
 
 
「京浜工業地帯の父」浅野総一郎は、サーキュラーエコノミーの先駆者でもあった

私の故郷である富山県氷見市出身の偉人として真っ先に名前があがるのは浅野総一郎です。明治維新から日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦という激動の時代に、この先日本にとって必要となる事業は何か考え、石炭、セメント、海運、造船などの事業を次々と立ち上げ、京浜工業地帯の礎を築き、「京浜工業地帯の父」と呼ばれています。 浅野総一郎は、「九転十起の人」とも呼ばれ、失敗してもくじけない、不屈の精神でも知られていま

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page