社会課題解決イノベーションを生み出すインドの価値観「ジュガードの6原則」
- takehikomizukami
- 20 時間前
- 読了時間: 4分
先日、私の故郷の氷見市出身の藤子不二雄Ⓐ氏の代表作「忍者ハットリくん」がインドで大人気だと聞いて、何故だろうと調べてみました。
理由としては、
① 大家族、ご近所関係中心、子どものいたずらなどの内容がインドの多世代同居文化と親和性が高かった。
② ハットリくんが披露する術は、身近な道具で窮地を脱する創意工夫に満ちており、「限られたリソースの中で知恵を絞る(ジュガード)」インドの価値観と共鳴した。
などがあるようです。
ここで出てきた「ジュガードの精神」は、サステナビリティ経営で重要な社会課題解決イノベーションと親和性の高いものです。ジュガードの精神は、インドで多く生まれている社会課題を創造的に解決するイノベーションの源泉となっていると考えられています。
ジュガードとは、ヒンディー語で「革新的な問題解決の方法」とか「独創性と機転から生まれる即席の解決法」という意味です。ジュガードには、6つの基本原則があります。これら6つの原則は、インド以外でもイノベーション創出のために重要なものです。
原則1【逆境を利用する】
ジュガード起業家は、様々な社会問題などの厳しい制約をイノベーションのきっかけとします。逆境をチャンスに変え、自身と周囲に価値をもたらします。タルシ・タンティは、インドで織物工場を設立しましたが、高価で不安定な電力に悩まされ、自ら工場向けに風力タービンを開発しました。そして、人口の44%が電機を利用できないインドの状況をチャンスと見て、スズロン・エナジーを立ち上げました。スズロンは、世界で5本の指に入るエネルギー・ソリューション企業に成長しました。
原則2【少ないものでより多くを実現する】
ジュガード・イノベーターは、ものが足りないときにこそ機転が働きます。資金がなければ何もできないとは考えず、あり合わせのもので何とかします。そして、限られた財源と資源の利用を最適化し、少ない資源でより多くの顧客に高い価値をもたらします。インドの携帯会社バルティ・エアテルは、インドで携帯通信革命が始まった2000年代初めに事業拡大のための資金や技術が足りなかったため、他社の資本を利用してビジネスを拡大しました。ITインフラをIBMに、ネットワークインフラをエリクソンとノキアシーメンスにアウトソースし、自らはマーケティングとブランディングに専念し、1億7,000万人以上の加入者を持つ、世界最大の通信サービス会社となりました。
原則3【柔軟に考え、迅速に行動する】
ジュガードは、経営コンサルタントが提唱するような系統だった手法とは異なり、柔軟に考え、柔軟に対応します。そのため、環境変化にもすばやく対応できます。中国に次いで2番目に糖尿病患者が多く、しかも農村部に患者が多いインドで、モハン医師は、従来の医療の常識にとらわれず、患者のもとに医療サービスを届けるため、地域の技師やヘルスワーカーと協力した移動式の遠隔医療を始めました。
原則4【シンプルにする】
ジュガードは、過剰な機能を持たせることなく、シンプルに目的を果たします。サティア・ジェガナザン医師は、新生児死亡率が高いインドにおいて、病院で死亡する新生児を減らしたいと考え、欧米の新生児用保育器を輸入しました。しかし、初期費用が法外に高いうえ、操作やメンテナンスがインドには不適合でした。そこで、シンプルで、安価で、使いやすい保育器を自ら設計することとし、成功しました。
原則5【末端層を取り込む】
ジュガード起業家は、あえてサービスの届かない末端層の人々を見つけ出して、主な顧客とします。ラナ・カブールは、可能な限り多くの層の消費者の資金需要に応えるインクルーシブ・バンクのイエス銀行を設立しました。マクロリースを証券化して機関投資家に転換社債として売るなど金融ツールを駆使して、これまで銀行から融資を受けられなかった多くの人々に融資できるようにしています。イエス銀行は、これまで融資を受けられなかった6億人のインドの人々の間に広がり、利益を上げました。
原則6【自分の直観に従う】
ジュガード・イノベーターは、フォーカスグループや型通りの市場調査に頼らず、自分の直観を大切にします。投資家の反応も気にしません。インド最大の小売チェーンであるビッグバザールの創設者キショール・ビヤーニは、経営コンサルタントのアドバイスより自らの直観を信じ、見た目も感覚も、匂いまでもが混沌とした露天商のような店舗づくりで、大きな成功を収めました。
市場調査や体系的なR&D手法などを重視すると、逆にイノベーションが生み出されにくくなることがあります。不確実性の高い時代において、新しい価値を創造するためには、ジュガードの精神は、個人レベルでも組織レベルでも意識する価値のあるものでしょう。
(参考)
「イノベーションは新興国に学べ!」ナヴィ・ラジュ、ジャイディープ・プラグ、シモーヌ・アフージャ著(日本経済新聞出版社、2013年)


コメント