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長期的に世界に本質的な影響を及ぼすのは、人口動態、気候変動、AI。人口が増加から減少に転じ、気温が高止まりする世界に向けて早めに社会のあり方を構想し、AIの良い面を活かして準備すべきだ。

  • takehikomizukami
  • 11 分前
  • 読了時間: 3分

今後世界はどう変化していくか?マクロ環境分析のフレームワークとして、社会(Society)、技術(Technology)、経済(Economics)、環境(Environment)、政治(Politics)の切り口で分析するSTEEPなどがある。この中で長期的かつ本質的な変化をもたらすものとして、Sに含まれる「人口動態」がある。


ドラッカーは、「未来について言えることは、二つしかない。第一に未来は分からない、第二に未来は現在とは違う」と未来は予測不能としつつ、「すでに起こった未来は、体系的に見つけることができる」とし、その1番目に人口動態を挙げている。ドラッカー曰く、「人口の変化は、労働力、市場、社会、経済にとって最も基本となる動きである。すでに起こった人口の変化は逆転しない。しかも、その変化は早くその影響を現す」。人口動態は世界のあり方に最も大きな影響を与える要因のひとつだ。


「技術(T)」と「環境(E)」も世界に長期的かつ本質的な変化をもたらす。現代においては、TのAI、Eの気候変動が特に重要な変化をもたらす要因となっている。一方で、「経済(E)」「政治(P)」は、その他の要因に影響を受けて相対的に短期間で揺れ動く。


今後の世界のあり方は、人口動態、気候変動、AIに大きく影響されるだろう。


人口動態について言えば、人口の急速な増加から減少への変化の波がグローバルノースからサウスに順次訪れる。グローバルノースでは少子化が進み人口減少がはじまっている。グローバルサウスではまだ人口増加の局面だが、長期的には少子化により人口が頭打ちとなるだろう。今世紀後半には、世界人口は100億人前後でピークを迎え減少し始めると予測されている。人口増加局面と減少局面では社会システムのあり方が異なるため、今後の社会システムの設計においては、先を見据えることが必要となる。


気候変動については、気温がどこまで上昇するかは今後の政策や技術進歩に依存するが、今世紀後半までに2-3℃上昇して高止まりするというのが現実的な予測ではないだろうか。気候変動の影響は避けられないため、適応戦略が重要となる。


今世紀後半に予測される人口の増加から減少に転じ、気温が高止まりする世界に向けて、どのような社会づくりが必要か、早めに準備すべきだ。人口減少はグローバルノースで先に進み、気候変動の影響はグローバルサウスが受けやすいことを考えると、グローバルサウスからグローバルノースへの人口大移動が起こるかもしれない。


これらは長期的な変化であり「すでに起こった未来」とまでは言えないが、想定される未来として備えておく必要がある。人口爆発、地球温暖化という人類の持続可能性への大きな脅威をうまく乗り切ることができれば、来世紀以降も人類は豊かに暮らしていけるだろう。


AIは、人口が減少に転じて気温が高止まりする世界に向けた社会づくりに2つの意味で貢献できる。1つは社会課題解決のソリューションとして、もう1つは人の生き方、人生の目的を変えることを通じて。


ケインズが1930年にこんな言葉を残している。「みんなが豊かになる時代はさして遠くないという結論を得た。そうなれば、人は、『ふたたび手段よりも目的を高く評価し、利よりも善を選ぶ』だろう。だが、ご用心あれ。まだその時は到来していない。あと少なくとも百年間は、いいは悪いで悪いはいいと、自分にも人にもいい聞かせなければならない。悪いことこそ役に立つからだ。貪欲と高利と警戒心とを、まだしばらくの間われわれの神としなければならない。」


気候変動の原因ともなっている私利を求める時代が終わり、人々が善を追求する時代が到来することを予言している。2030年までの実現は難しいかもしれないが、AIが十分な富を生み出しみんなが豊かになる時代となれば、人々が善、すなわち社会課題解決をめざすようになる。そうした世界では、新たな社会づくりもやりやすいだろう。人口動態、気候変動、AIが創る新たな世界。そのビジョンを早めに構想することが、将来の変革を円滑なものとする。

 
 
 

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