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社会的企業のガバナンスは、どうあるべきか。パタゴニアが示した新しい道筋

takehikomizukami
2022年9月19日
読了時間: 3分

最近、パタゴニア創業者イヴォン・シュイナード氏が、自身と家族が保有している30億ドル(4200億円)相当の株式のすべてを環境保護活動に取り組む団体などに寄付したと発表し、サステナビリティの世界を超えて話題になりました。


「地球が私たちの唯一の株主」と題したメッセージでは、環境負荷の少ない素材の使用、毎年売上の1%を寄付する、Bコープ認証を受けベネフィット・コーポレーションになるなど、パタゴニアがパーパスである「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」ためにしてきたことを示したうえで、今回の寄付の理由を述べています。


環境への取り組みを継続していくために、多くの資金を投入する方法を見つける必要があるが、パタゴニアを売却してその売却益を寄付するとしても、パタゴニアの価値観を引き継いでくれる売却先が見つけられる確認がなく、株式公開では、短期的な利益のプレッシャーにさらされる。そのため、自ら新たな仕組みとして、自身と家族が保有する会社の議決権付株式(2%)を会社の価値観を守るために設定されたPatagonia Purpose Trustに譲渡し、無議決権株式(98%)を環境危機と闘い自然を守る非営利団体Holdfast Collectiveに譲渡することにしたとのことです。Holdfast Collectiveには、毎年、環境危機と闘うための資金として、パタゴニアから、事業に再投資を行った後の剰余利益を配当金として分配されるとのことです。


確かに、パタゴニアのような社会性のある企業が、売却後もその価値観を維持していくのは容易ではありません。環境や人権、動物実験といったサステナビリティ価値を追求するビジネスの老舗とも言えるボディショップは、2006年にロレアルに売却されて以降、その活動が目立たなくなっています。


ベン&ジェリーズは、「最高のアイスクリームを最も持続可能なしくみで作る」ことを目指しており、すべての原材料をフェアトレードで調達し、環境問題への取り組み、従業員や地域コミュニティへの利益配分にも積極的です。社会的正義に関する活動も積極的に行っています。ベン&ジェリーズについては、2000年にユニリーバに買収されましたが、売却先がサステナビリティ経営を推進するユニリーバで、買収合意に基づき一定の自立性が確保されていることもあり、その価値観を基本的に継続しています。しかし、ベン・アンド・ジェリーズが、昨年、パレスチナのヨルダン川西岸などイスラエル占領地での販売は自社の価値観にそぐわないとして同占領地での販売停止を発表した件については、イスラエルとの関係に配慮したユニリーバは、地元ライセンス先企業にベン&ジェリーズのイスラエル事業を売却してしまいました。売却後は、価値観の維持について、完全に自立性を確保することはできません。


株式公開をした場合は、サステナビリティに見識があり、サステナビリティ経営を積極的に推進してきたダノンCEOが、業績不振の責任を取って解任されたように、間違いなく、短期利益のプレッシャーにさらされるでしょう。


社会性のある企業が、その使命をガバナンスとしては、財団による所有という形態もあります。世界から糖尿病をなくすという使命を持ち、サステナビリティ経営を推進し、長期視点で糖尿病治療薬の市場を広げているノボ・ノルディスクは、事業運営を担う上場企業を財団が管理しています。これにより、敵対的買収を逃れ、マネジメントは長期的視野に立って利益を社会的使命の追求に使うことができています。


今回、パタゴニアは、社会性のある企業としての理念、価値観を維持していくための新たなガバナンスのあり方を提示しました。今後、ベネフィット・コーポレーションをはじめとする共益企業が増えていくと思いますが、共益企業であり続けるためのガバナンスの仕組みも、考えていく必要があります。

 
 
 

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