top of page

専門家、リードステークホルダーとの対話を通じて社会課題解決イノベーションを生み出す。

  • takehikomizukami
  • 2024年4月29日
  • 読了時間: 3分

拙著「サステナビリティ-SDGs以後の最重要生存戦略」でも書いていますが、社会課題解決イノベーションを生み出すカギは、①社会課題のトレンドを洞察し事業機会を見出す、②社会課題の解決策としてのイノベーションを創発する、③成功するまで粘り強く続ける、です。


①「社会課題のトレンドを洞察し事業機会を見出す」について、社会課題解決イノベーションの起点は社会課題と解決策の新しい組み合わせですが、まずは社会課題の全体トレンド、個別課題の動向を良く理解しその中に事業機会を見出す必要があります。社会課題を良く理解するには、社会課題の専門家との対話が有効です。


GEは、Generally not electricと言われたほど金融に傾注した影響もあり近年は凋落が激しいですが、2005年というまだ環境ビジネスは儲からないと考えられていた時期に「エコマジネーション」という環境ビジネスのビジョンを打ち出し、他社に先行して環境ビジネスの市場を切り拓いたことは評価されるべきです。当時GEが他社に先行して環境ビジネスのビジョンを打ち出せた背景には、社会課題の専門家とのエンゲージメントがあります。


当時のCEOジェフ・イメルト氏は、毎年の各事業のレビューを実施している中で、すべての事業分野で顧客から「効率を高め、排出を減らすように」という命題を突き付けられていることに気づきました。そして「環境」がすべての事業の共通課題になっているのではないかという仮説をもちました。


ジェフ・イメルト氏は、この仮説を検証するため、エネルギー、水、都市化などのマクロトレンドを共有し、GEのリーダー層が顧客に長期視点で将来に向けて何を求めているかを問うとともに、環境課題の専門家であるNGO、政府などとも広く対話しました。こうした幅広いステークホルダー・専門家との2日間の“夢の討論”を何度も開催して「環境」への対応が新たなメガトレンドであるということを確信し、他社に先んじて「エコマジネーション」を打ち出し環境ビジネスに本格参入しました。


社会課題解決イノベーション創出のためには、社会課題のトレンドを把握してイノベーションの対象とすべき課題を特定し、当該課題の現状と方向性を良く理解して事業機会を見出す必要があります。そのためには、社会課題に精通した外部専門家にビジネスの観点からの仮説をぶつけ、検証を繰り返すといったことを検討すべきです。


社会課題の専門家などとの対話は社会課題のトレンドを理解するのに有効ですが、ビジネス機会の仮説をもってそれをぶつけることで機会の検証・精査、新たなアイデアの獲得にもつながります。専門家との対話、リードステークホルダーとのエンゲージメントを社会課題解決イノベーション創出にもっと生かすべきです。


 
 
 

最新記事

すべて表示
ドラッカーの「5つの質問」で考える、サステナビリティ経営におけるステークホルダー・エンゲージメントのあり方

ドラッカーが開発した組織の自己評価ツールとして「5つの質問」がある。社会が組織で構成され、人々が必要とするもののほとんどが組織により提供される組織社会において、組織が正しい成果を上げるための思考を促す、シンプルですが非常に有効なツールだ。 ドラッカー曰く、「組織はすべて、人と社会をより良いものにするために存在する。すなわちミッションがある。目的があり、存在理由がある。」 正にそのとおりだ。組織と社

 
 
 
サステナビリティに関してもはや成り立たない5つの前提:グローバル目標や合意、ESG情報開示、ステークホルダー資本主義などはサステナビリティに向けた変革につながらない。

主なポイント: 多くの企業が依存してきたサステナビリティの前提条件は、気候変動対策を前進させるどころか、むしろ阻害している可能性がある。 それは、グローバル目標への依存や、市民がサステナビリティについて共通認識を持っているという前提が成り立たないからだ。 代わりに、サステナビリティの専門家は新たなアプローチに注力する必要がある。例えば、自らがコントロールできる領域に注力し、影響力を行使できない領域

 
 
 
「サステナビリティを適切に実践することで、収益性が21%向上する。」サステナビリティのビジネスケースに関する最新のレポート

サステナビリティのビジネスケースに関する議論は終わった。過去10年間の研究は、サステナビリティが優れた財務パフォーマンスにつながることを示している。 主なポイント: ・新たなデータによると、サステナビリティを適切に実践することで、収益性を21%向上させるなど、優れた財務実績につながることが示されている。 ・企業は顧客向けに価値提案を定義することが多いが、取締役会、経営幹部、事業部門リーダー向けには

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page