top of page

大阪ブルー・オーシャン・ビジョンが描くべき将来像とは?

  • takehikomizukami
  • 2019年6月30日
  • 読了時間: 3分

G20が閉幕しました。首脳宣言の目玉の一つが、プラスチックごみの流出による海洋汚染を2050年までにゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」です。海洋プラスチックは、最近急速に注目され、各国・地域が対応を進めており、各国間で合意しやすい状況にありました。そこで、日本政府としても、これを目玉にしようと働きたけた結果です。


現在問題となっている合成樹脂プラスチックは、1907年に発明されたベークライトが最初とされ、その後、第二次世界大戦中に鉄・アルミなどの代替製品としてプラスチックメーカーが発展し、戦後に、安価で機能が高く使い捨て出来る便利な素材として、日用品などに幅広く活用されるようになりました。そして、1950年に200万トンだった世界のプラスチック生産量は、2015年には3億8,000万トンになっています。また、耐久性に優れ分解しにくいプラスチックは、特に海洋では、数百年から数千年も浮遊し続けると言われます。


人類の発展の過程で生まれた便利な素材であるプラスチックは、その高い機能がゆえに、幅広く使われて生産量が急拡大したために問題となっています。安さ便利さという光の部分にだけフォーカスし、廃棄・処理といった陰の部分への対応を疎かにしてきたためでもあります。なお、プラスチック廃棄に限りませんが、陰の部分への対応は基本的に政府に丸投げする一方で、政府批判など、政府の劣化を助長する社会の在り方は、様々な問題の原因の一つとなっており、そもそも経済・社会の高度化の副作用を政府だけで対応することができない時代になっているという構造的な変化についても認識する必要があります。


それでも、日本では、廃棄物処理インフラが整備されており、プラスチックも80%以上がリサイクルされています。特に、焼却した上で焼却時の熱を有効利用する「サーマルリサイクル」の取り組みが進んでおり、プラスチックの60%近くがサーマルリサイクルされています。その他、プラスチックにリサイクルされる「マテリアルリサイクル」が20数%、化学原料にリサイクルされる「ケミカルリサイクル」が数%です。日本は、サーマルリサイクル大国と言えるでしょう。日本の産業界もサーマルリサイクルしていることをアピールしています。サーマルリサイクルは、海洋プラスチック問題の対策にはなっているかも知れないが、気候変動促進しているとの批判に対しても、サーマルリサイクルのLCAでの温室効果削減効果は、優れるといった試算を発表したりしています。


しかし、世界的にはサーマルリサイクルは、プラスチック問題に対する本質的な解決策ではないという考えが根強く、そもそも世界的には、「サーマルリサイクル」ではなく「熱回収」という言葉が使われており、サーマルリサイクルはリサイクルには含まれていません。世界が向かっているのは、マテリアルリサイクルなどを軸とする「サーキュラーエコノミー」です。


海洋プラスチック問題だけの解決策としては、焼却・熱回収も有効ですが、気候変動を含む環境問題全体を見据え、新しい経済の仕組みを作っていこうという大きなトレンドの中で、「サーマルリサイクルしているから問題ない」という思考は、リスクが大きいと思います。個々の問題や批判に対して個別の対策を考え主張するだけでなく、長期的視点であるべきシステムのビジョンを描くことも併せて考えていかないと、日本が脱プラスチック・脱炭素の世界で影響力を持つことはできないでしょう。「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」は、単なる長期目標を超えて、そうした社会のあるべき姿を描けるでしょうか?

 
 
 

最新記事

すべて表示
無形資産/非財務資本を評価し融資する制度がスタート。新しい制度が広く活用され、サステナビリティ経営を促進することに期待

先般、「企業価値担保権」制度が始まりました。事業の将来性や技術力といった目に見えない価値を担保に、銀行などの金融機関が企業に融資する制度です。事業の将来性や技術力といった目に見えない価値を担保に、銀行などの金融機関が企業に融資する制度です。 銀行が企業に融資する場合、土地や建物などの有形資産を担保として設定するのが主流ですが、今後は知的財産、ブランド、顧客基盤などの無形資産を含む事業全体を担保にす

 
 
 
レアアースリスクがサーキュラーエコノミーを加速し、イラン戦争がカーボンニュートラルを加速する。地政学とサステナビリティが絡み合う時代には、サステナビリティ経営にもより高度なインテリジェンスが求められる。

サステナビリティ経営においては、“フォーカシング・イベント(Focusing Event)”への感度の高さが重要だ。 フォーカシング・イベントとは、マスコミや市民、政策担当者が急速に社会課題に注目し、対策を進めるきっかけとなる出来事のことで、日米の政権交代なども含む。 サステナビリティを促進することにつながるこれまでのフォーカシング・イベントとしては、以下のようなものがあった。 2018年、鼻にス

 
 
 
ジョン・コッターの「変革のための8段階のプロセス」は、企業のサステナビリティ経営に向けた変革、国際社会や国家のサステナビリティ推進に向けた変革、人口減少の中で地域を持続可能にしていくための変革など、様々な変革に応用できる。

リーダーシップ論で有名なジョン・コッター、ハーバードビジネススクール名誉教授は、多くの企業が変革に失敗している理由とその成功確率をどう高めるかを研究しました。市場環境の変化が不確実で急速な現代では、組織はそれに適応するために変革していかなければなりません。コッターは、研究結果を「変革のための8段階のプロセス」としてまとめています。 8段階のプロセスは、以下です。 ①危機意識を高める 企業の場合は、

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page