収支トントンで社会にインパクトを生み出すソーシャルビジネスをどう考えるか?財務+非財務のリターンが資本コストを超えることを目指すべきか?
- takehikomizukami
- 1 時間前
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先日、サステナブルブランド国際会議でLIXILのソーシャルビジネスの話を聞いた。
LIXILは2011年、INAXやトステムなど主要メーカー5社が統合して誕生したが、LIXILとしての求心力として「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というパーパスを策定した。このパーパスを体現するものとして生まれたのが、LIXILのソーシャルビジネスである簡易式トイレ「SATO Pan」だ。
世界では、安全に管理された衛生設備を利用できない人が34億人に上り、衛生環境に起因する疾患により、毎日1000人以上の子どもたちが命を落とし、3億5400万人が野外排せつを余儀なくされているという。「SATO Pan」は、この課題を解決するために開発された。数ドルという安価な製品ながら、少量の水とカウンターウェイトによって弁が自動的に開閉する仕組みを持ち、ハエなどの虫や悪臭を遮断する。
LIXILは、このSATO Panを無償で寄付するのではなく、ソーシャルビジネスとして展開している。「寄付は即効性があるものの、業績が悪化すれば予算が削られるなど、一時的な解決策になりがち」と考えているからだ。
寄付に対して、ソーシャルビジネスには3つの優れたポイントがあるという。第1に、単なる製品提供ではなく「安全な衛生市場」というエコシステムそのものを創出できること。第2に、現地の製造業者や販売店、施工を担う個人事業主などに経済的機会を提供し、彼・彼女らが自ら地域を変革する「ローカルヒーロー」となること。第3に、顧客中心のビジネスであるため、一過性の予算に頼らず長期的な取り組みが可能になること。
LIXILは、SATO Panをソーシャルビジネスとしているが、そもそもソーシャルビジネスとは何か?ムハマド・ユヌス氏が提唱したソーシャルビジネスには、以下7つの原則がある。
① 経営目的は、利潤の最大化ではなく、人々や社会を脅かす貧困、教育、健康、情報アクセス、環境といった問題を解決すること。
② 財務的・経済的な持続可能性を実現すること。
③ 投資家は投資額のみを回収できる。元本を上回る配当は還元されない。
④ 投資額以上に生じた利益はソーシャル・ビジネスの普及や会社の福利厚生の改善等に使う。
⑤ 環境への配慮すること。
⑥ 従業員に市場賃金と標準以上の労働条件を提供すること。
⑦ 楽しみながら取組むこと。
基本的に収支トントンで社会課題を解決しようとするビジネスだ。LIXILは「長期的な取り組みが可能となる」としているが、資本の論理では収支トントンは許されない。資本コストを超えるリターンが求められる。
社会にインパクトを生み出すソーシャルビジネスは、事業としてのリターンに加え、「社会課題の理解を通じたイノベーション促進」「企業ブランド価値/顧客ロイヤルティの向上」「従業員の忠誠や士気向上」といった非財務価値を企業にもたらす。
こうした非財務価値は、自社ならではのインパクトを生み出す社会貢献活動でも創出可能なものではあるが、ソーシャルビジネスも場合はそれに収支トントンであっても財務価値も生み出す。財務+非財務のリターンが資本コストを超えるソーシャルビジネスは実施する価値があるという考え方もできる。
LIXILの場合は、統合企業としてのパーパス実現の象徴という意味合いもある。ソーシャルビジネスをどう考えるかは、非財務価値の評価を含めて、企業の経営・サステナビリティセンスや意思が問われるものと言えるだろう。
(参考)「トイレ・オタクの情熱が生んだソーシャルビジネス LIXILのパーパス発イノベーション」SUSTAINABLE BRANDS JAPAN


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