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能登の復興において「集約化」の議論があるが、生物多様性とのアナロジーから考えても、地域の多様性を安直な経済合理性だけで喪失させてはならない。

  • takehikomizukami
  • 4月5日
  • 読了時間: 2分

能登半島地震からの復興に関して、もとに戻すのではなく地域を集約化して新しいまちづくりをしていくべきとの意見がかなりあるようだ。人口減少、高齢化が進む過疎地をもとに戻すのは行政コストの面などから適当ではないとの考えだ。しかし私は、生物多様性のアナロジーで考える地域多様性の価値の観点から、「集約化」には慎重であるべきと考える。


生物多様性は生命38億年の歴史の中で進化してきたものだ。それが人類の活動が原因となって急速に失われている。現在は恐竜の絶滅以来の6度目の大量絶滅の時代に入っていると言われる。


生物多様性喪失の何か問題か?人類目線で見ても、人類は生物多様性が生み出す様々な生態系サービスに依存している。食料、原材料、薬用資源といった供給サービス、花粉媒介、気候調節、水量調整、水浄化、災害緩和といった調整サービス、自然景観、文化・芸術・デザインへのインスピレーション、神秘的体験といった文化的サービスなどだ。人類が生存していくためには、生態系サービスを維持していく必要がある。


地域の多様性も人類の長い歴史のなかで培われてきたものだ。能登半島の歴史も約6000年前に遡るとされる。地域の多様性は生物多様性同様に人類活動に必要となる、それぞれの地域特有の「地域多様性サービス」を提供しているはずだ。供給サービス、文化的サービスは存在するし、その地域があるからこそバランスが取れている調整サービスのようなものもあるだろう。地域の多様性が失われると、そうしたサービスも失われる。


集約化にあたって「もとのコミュニティ、文化や祭祀を移転先でも保つようにする」との考えもあるだろうが、長い歴史の中で特定の地域で培われた価値が容易に移転できるとは思わない。上位で述べた「地域多様性サービス」喪失の観点以前に、そこに住む人々の思いもある。「集約化」は、安直な経済合理性だけで進めるべきものではない。

 
 
 

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