検索
  • takehikomizukami

新たな資本主義の形を追求する様々な動き

現在の資本主義は、格差、気候変動、生態系の喪失など様々な問題を生み出しており、サステナブルでないと考えられている。そこで、新たな資本主義を追求する様々な動きがある。


米国の主要企業が名を連ねる財界ロビー団体であるビジネス・ラウンドテーブルは、ステークホルダー資本主義を提唱している。株主至上主義の考えが根強い米国の主要企業の経営者たちが、株主至上主義を脱却し、ステークホルダー重視、「顧客への価値提供」「従業員への投資」「サプライヤーへの公正で倫理的な対応」「事業を展開する地域コミュニティの支援」「株主への長期価値創造」にコミットするとしている。


ベンチャー・キャピタリストの原丈人氏は、「利益を求める欲求を利用しつつも、社会にとって有用な企業活動を生み出す新しい資本主義システム」として「公益資本主義」を提唱している。


ホールフーズ創業者のジョン・マッキー氏は、コンシャス・キャピタリズム、コンシャス・カンパニーという考え方を提示している。コンシャス・キャピタリズムとは、あらゆるステークホルダーにとっての幸福と、金銭、知性、物質、環境、社会、文化、情緒、道徳、あるいは精神的な意味でのあらゆる種類の価値を同時に創り出すような、進化を続けるビジネスパラダイムだ。別の言い方をすると、自社の存在目的、世界への影響、そしてさまざまな顧客層やステークホルダーをより意識した、ビジネスの考え方だ。コンシャス・キャピタリズムには、「存在目的とコアバリュー」「ステークホルダーの統合」「コンシャス・リーダーシップ」「コンシャス・カルチャー/マネジメント」の4つの柱があるとされる。また、コンシャス・カンパニー(意識の高い企業)とは、①主要ステークホルダー全員と同じ立場に立ち、全員の利益のために奉仕するという高い志に駆り立てられ、②自社の目的、関わる人々、そして地球に奉仕するために存在するという意識の高いリーダーを頂き、③そこで働くことが大きな喜びや達成感の源となるような活発で思いやりのある文化の根ざしている会社のことだ。


ノーベル平和賞受賞者、グラミン銀行創設者のムハマド・ユヌス氏は、「ソーシャル・ビジネス」という考え方を提唱している。ソーシャル・ビジネスは、社会問題の解決に専念する「損失なし、配当なし」の利他的なビジネスのことだ。なお、グラミン・ダノンなど、企業活動の一部としてソーシャル・ビジネスを試行的に推進する動きはあるが、ソーシャル・ビジネスが本格的に普及するためには、新しい法制度、新しい株式市場などが必要とされている。


非営利企業のように社会的使命を追及しつつ、営利企業のように様々な製品・サービスを生み出し、雇用を創出し、経済を活性化する第4のセクターである「共益企業」という考えもある。これについては、英国の「コミュニティ・インタレスト・カンパニー(CIC)」、米国の「限定利益合同会社(L3C)」、「ベネフィット・コーポレーション」など、法的に認められたものも登場している。


ベネフィット・コーポレーション」は、社会的使命を最優先とする行動について、株主から訴えられることのないよう法的に保護された営利企業のことで、米国の多くの州で法的枠組みが整備されている。制度化されている。このベネフィット・コーポレーションの法制度導入を各州に働きかけているのが、Bラボ(B-Lab)というNPOだ。Bラボは、ベネフィット・コーポレーションの導入促進と並行して、自らBコーポレーション(B Corp)という、社会に価値を生み出している企業を認証する仕組みを創っている。


B Corpとして認証されるには、Bラボの作成したインパクト評価で、200点満点の80点以上を取る必要があり、毎年、社会価値創造に関するレポートの公表が求められる。B Corpになると、Bラボからマーケティングや資金調達に関する支援が得られるほか、Bコーポレーション間での情報共有や協働が可能となる。B Corpは、世界に広がっており、現在は74か国で4,000社近くが認証されている。


日本では、三方よしを現代に則した形で進化させた「NEO三方よし」を提唱する動きがある。持続可能な地球を守るために時間概念を取り入れた「明日によし」を加えることなどが検討されている。また、「里山資本主義」という、資本主義システムそのものを変えるというよりは、現在の「マネー資本主義」の経済システムの横に、地域内で完結する、お金に依存しない安全安心なサブシステムを構築するという考えがある。


最近では、経済成長を義務付けられる資本主義のもとでは、脱炭素技術やサーキュラーエコノミーが進展して資源効率が高まったとしても、消費が増え続ける限り脱炭素といった本質的な変革は無理だろうという考え方のもと、人類が環境危機を乗り切り、持続可能で公正な社会を実現するための唯一の選択肢は、「脱成長コミュニズム」であるとの考えが人気を博している。


これらの考え方については、具体的なもの、抽象的なもの、現在の資本主義の延長線上にあるもの、現在の資本主義から脱却しようとするものと、様々なものがある。何を目指すべきかについては、これから時間をかけて検討され、実験がなされていくと考えるが、まず重要なのは、こうした多様な考え方を理解し、受け入れることだろう。

31回の閲覧0件のコメント

最新記事

すべて表示

スポーツにはサステナビリティを促進する力がある

東京オリンピックが始まりました。新型コロナの影響による延期前は、サステナビリティに配慮した調達コードを示すなど、サステナビリティを促進する大会となる期待もありましたが、逆に人権への配慮不足で批判される状況となっています。 しかし、国連が「スポーツは持続可能な開発における重要な鍵となるものである」としているように、スポーツは、サステナビリティを促進する力を持っています。SDGsとの関係で言えば、SD

急速に進む航空の脱炭素化

新型コロナ禍に苦しむ航空業界ですが、脱炭素への備えも進めなければなりません。グレタ・トゥーンベリさんがCO2を大量に排出する航空機を使わないことで、「飛び恥」など言葉も生まれ、気候変動に害を与える悪玉の印象がついています。 一方で、航空機には大きな推進力が必要であり、脱炭素は容易ではないと考えられてきましたが、ここに来て、脱炭素の動きが加速しています。 航空機の脱炭素の方法としては、自動車と同じよ

本質的なサステナビリティ経営の条件。時間軸・空間軸・組織軸の統合

脱炭素を中心に、サステナビリティに対する関心が高まり、サステナビリティを経営に統合するとしている企業も増えている。しかし、本質的にサステナビリティを経営に統合しようとしている企業は、まだ限られるようだ。 脱炭素に向けて、自動車産業はEVシフトを進める、エネルギー産業が脱化石燃料を進めるなどは、政策や投資家などの要請にリアクティブに対応しているだけで、本質的なサステナビリティ経営とは言えない。 また