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ビジョナリー・カンパニーとサステナビリティ

ドラッカーの後継者とも言われるジム・コリンズのビジョナリー・カンパニーシリーズは、経営書として特に人気・評価の高いものですが、サステナビリティ推進の観点でも優れた示唆をいくつも与えてくれます。これまで4つのシリーズ書籍が刊行されており、最初の「ビジョナリー・カンパニー① 時代を超える生存の法則」は、経営者が入れ替わっても長期にわたって成長し続ける企業の特徴を洗い出しており、まさに長期的に持続する経営のエッセンスを示しています。2作目の「ビジョナリー・カンパニー② 飛躍の法則」は、ある時点から急に業績を伸ばした企業を分析し、飛躍のために何が行われたのか、その法則をまとめたものです。3作目の「ビジョナリー・カンパニー③ 衰退の五段階」は、過去に偉大だったが転落したり消滅したりした企業を分析し、その衰退の法則を示したものです。「ビジョナリー・カンパニー④ 自分の意志で偉大になる」は、不確実な時代に外部環境に惑わされず自らの意志で長期的に成長し続け偉大になった企業を分析しており、1作目とは異なる視点で、持続的に成長する企業のエッセンスを示しています。

このビジョナリー・カンパニーシリーズ①②④から、サステナビリティ推進に示唆を与えてくれる法則をいくつか紹介します。

ビジョナリー・カンパニー①で示されたサステナビリティに関連する重要な概念は、「ORの重圧をはねのけ、ANDの才能を活かす」「基本理念を維持し、進歩を促す」「社運をかけた大胆な目標(BHAG)」です。まず、ビジョナリー・カンパニーは、利益を超えた目的と現実的な利益の追求は両立できないという「ORの抑圧」に屈することなく、両方を手に入れようとします。ビジョナリー・カンパニーにとっては、利益は存続のための必要条件・手段であり、目的としてもっと意義のある理想を追求しています。ビジョナリー・カンパニーは、業種を問わず理念と利益を同時に追求しています。そして、この基本理念を維持しつつ、基本理念以外は、時代に応じてすべてを進化させています。

また、ビジョナリー・カンパニーは、進歩を促す強力な仕組みとして、ときとして社運を賭けた大胆な目標、BHAG(Big Hairy Audacious Goals)を掲げます。BHAGは、明確で説得力があり、集団の力を終結し、全社一丸となった爆発的なエネルギーを生むものです。今の時代、サステナビリティに関する大胆な目標は、BHAGとして、社員の力を結集し、イノベーションを生み出すものになります。

ビジョナリー・カンパニー②で、サステナビリティに関して重要なのは、針鼠の概念です。「自社が世界一になれる部分」「経済的原動力になるもの」「情熱を持って取り組めるもの」の3つの円が重なる部分を理解し、その領域にこだわります。これは、サステナビリティに関して言えば、マテリアリティに当たる部分で、「自社が価値を生み出せる部分」「自社事業と関わりが大きい部分」「自社が本当にやりたいこと(やるべきこと)」を特定し、そこにリソースを集中します。それが、社会と自社の両方に価値を生み出します。

ビジョナリー・カンパニー④で重要な概念は、「10X型リーダー」「20マイル行進」「銃撃に続いて大大砲発射」です。ビジョナリー・カンパニー④では、経営基盤が脆弱な状況でスタートしたにもかかわらず、不安定な環境下で目覚しい成長を遂げ、偉大になった企業を「10X(10倍)型企業」と命名し、こうした企業を率いたリーダーを「10X型リーダー」と呼んでいます。10X型リーダーは、カリスマ性のあるなしなど、性格はいろいろですが、共通しているのは、「自己を超越した大儀のために全身全霊をささげている」ことです。10X型リーダー全員が大きな大儀を思い描いています。カネ、名誉、権力ではなく、「世界を変えたり、社会に貢献したりする」ことが10X型リーダーの原動力になっています。

10X型企業は、規律と創造力を併せ持っています。規律に関しては、順風でも逆風でも着実に一定の速度で成長する「20マイル行進」を行っています。「20マイル行進」のためには、厳しい状況下でも断固として高い成果を出すことと、快適な状況下でも行き過ぎないように自制することが必要です。これは、長期的視座に立った成長のためには、非常に重要なことです。

創造力に関しては、10X企業は、大きくリスクを取るのではなく、実証的に創造力を発揮しています。そのための手法が「銃撃に続いて大砲発射」です。いきなり大きな賭けにでるのではなく、低コスト・低リスクで事業などの有効性を実証した上で、成功の見込みがあるものに大きな投資をします。10X型企業は、リスクに対しては非常に敏感で、常に慎重かつ冷静な対応を怠りません。社会問題解決型のビジネスの場合は、まず社会貢献活動として始めてみて、ビジネスとして展開可能という見込みが立った上で事業化するというやり方が、「銃撃に続いて大砲発射」に近いと思います。

10X型企業は、良い意味でマイペースです。自らの掲げる大儀を実現するため、株主・投資家や顧客などからのプレッシャーに左右されることなく、自らの信念のもと、長期的視座に立って、自らのペースで着実に前進します。従来の概念に囚われない社会問題解決型のビジネスを成功させるには、こうした信念と規律をもったマイペースさは、極めて重要だと思います。

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