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トランプ関税がサーキュラーエコノミーを加速するか?

  • takehikomizukami
  • 4月26日
  • 読了時間: 3分

米国が中国に最大245%の関税をかけるとする中、中国が対抗措置としてヘビーレアアースの7種類(サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウム)を新たな輸出規制の対象にすると発表した。


米中の関税による貿易摩擦が続けば、中国がレアアースによる対米圧力をさらに強める可能性がある。レアアースは冷蔵庫から携帯電話、パソコン、電気自動車、太陽光発電など民生品に広く使われているが、戦闘機のエンジンやミサイル誘導システム、レーダーシステム、高度な光学機器にも不可欠とされ、安全保障上も欠くことのできない重要資源だ。


一方で、米国が輸入するレアアースのおよそ70%が中国からの輸入とされ、「米国にレアアースの加工施設が一つもない」「米国のレアアースの埋蔵量はわずか世界全体の1.5%しかない」とされる。中国からのレアアースが入ってこないと、米国にとって大きなリスクとなる。


こうしたリスクに対して企業は先手を打っている。


マイクロソフトは、酸を使わずにハードディスクからレアアースと貴金属を回収する新たな取り組みで、データセンターからの電子廃棄物回収を拡大すると発表した。ドライブメーカーのウェスタンデジタルに加え、クリティカル・マテリアル・リサイクリング社、ペダルポイント・リサイクル社との協働によるプログラムで、レアアースの米国での生産を拡大することを目的としたものだ。


古くなったドライブは、従来の方法でシュレッダー処理。その材料はペダルポイント社によって選別・処理され、磁石とスチールは選別のためにクリティカル・マテリアルズ社に送られる。その後、レアアース酸化物は、酸を含まない化学リサイクルプロセスで抽出される。


すでにパイロットプロジェクトで、マイクロソフトのデータセンターで回収された5万ポンドの旧式ドライブを処理し、EVや風力タービンに使用される磁石の重要な部品であるネオジム、プラセオジム、ジスプロシウムを含むレアアースを抽出している。


マイクロソフトは、クラウド・コンピューティングの主要な競合であるグーグルやアマゾンと同様、データセンターの設置を猛烈な勢いで進めている。IDCの予測によると、2028年までハイパースケールおよびクラウドサービス施設のデータストレージ容量の約80%はハードドライブが占めるという。ハードドライブは、クリーンエネルギーへの移行を可能にする多くのシステムと同様、レアアースや貴金属に大きく依存している。


マイクロソフトの複数のデータセンターから回収されたレアアースは、レアアース生産量のわずか15%を占める米国のサプライチェーンに戻されている。アップルやグーグルなど他の大手テクノロジー企業も、古い電子機器やコンピューターのハードウェアからレアアースやその他の貴金属を採掘している。


米中の貿易摩擦が激化する中、レアアースの回収は喫緊の課題となっているが、これに限らず、トランプ関税による貿易摩擦、サプライチェーンの分断は、各国・地域での資源の再利用、サーキュラーエコノミーの加速につながる。


(参考)” Microsoft is mining hard drives for rare earths. Why it matters”, TRELLIS

 
 
 

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