top of page

たばこ会社のトランスフォーメーション:長期的な事業環境変化を見据えて如何にトランスフォームするか

  • takehikomizukami
  • 2021年11月13日
  • 読了時間: 4分

脱炭素の動きが加速し、化石燃料を大量に使用する企業は、トランスフォーメーションが求められています。たばこ会社も明確な脱たばこに向けた国際合意があるわけではありませんが、人間社会の発展に伴い、健康への意識は高まる一方と考えられますので、長期的なトランスフォーメーションが求められています。たばこ会社のトランスフォーメーションのオプションとしては、どのようなものがあるでしょうか。トランスフォーメーションに向けては、自社の既存資源を生かすのが基本です。


オプション1は、植物としてのタバコ資源を使ったトランスフォーメーションです。たばこ会社ではありませんが、ボーイングは、南アフリカ航空、オランダのSkyNRG社と組んで、収穫したタバコからバイオ燃料を生成しています。バイオ燃料を研究するSkyNRG社は、南アフリカで、バイオ燃料の原料とすることを念頭に、ニコチンを含まないタバコの交配種「ソラリス(Solaris)」の生産を強化しています。タバコをバイオ燃料として活用することにより、化石燃料の代替、CO2の排出削減に加え、南アフリカの国民の健康増進、タバコ農家の経験とノウハウをバイオ燃料の栽培生かすことによる農業の維持・拡大という価値を生み出すことができます。


タバコからワクチンをつくるという動きもあります。カナダのバイオテクノロジー企業が、タバコを使ったインフルエンザワクチンの試験を進めています。現在のインフルエンザワクチンは、卵の中で育てられるため、製造に時間がかかってしまい、その間にウィルスが変異して効かなくなることがあります。タバコからインフルエンザワクチンをつくることで、ウィルスの製作期間を従来の6カ月から6週間に短縮します。さらに、タバコからの製造は、コストを削減し、大量生産することが可能とのことです。このカナダ企業の株の40%はフィリップモリスが持っています。


このようにタバコが持つ機能を生かして、新しいビジネスを生み出しトランスフォーメーションする方向が考えられます。


オプション2は、タバコそのものの問題をなくすトランスフォーメーションです。これは、多くのタバコ会社のメインシナリオでしょう、フィリップモリスは、「煙のない社会」を目指すとのビジョンを掲げ、紙巻だばこ事業から段階的に撤退し、煙の出ない加熱式たばこへの切り替えを進めています。


しかし加熱式たばごが有害物質を大幅に削減するとしても、たばこの健康被害の問題を解決できるわけではありません。たばこ会社として、健康被害の解決を目指して、たばこそのものイノベーションをさらに促進していくのが、オプション2です。


オプション3は、段階的に資源(強み)を蓄積して新たな事業を展開するトランスフォーメーションです。テクノロジー企業では、デジタル技術(デジタルカメラ)の進化によるフィルム市場の縮小という環境変化を乗り切った富士フィルムのように、自社が培ってきた技術を生かして、事業ポートフォリオを変革するトランスフォーメーションのパターンがあります。たばこ企業は、テクノロジー企業と同じように、要素技術を生かしてすぐに事業を転換するということは難しいかも知れませんが、アイコスを挟むことにより、事業転換の可能性が広がります。


フィリップモリスCEOは、「私たちはテクノロジーとサイエンスを基盤とする企業になりつつある」「純粋たばこ会社にできることはほとんどない」と言っています。従来型のたばこ会社からテクノロジーとサイエンスの企業になることで、トランスフォーメーションの可能性が広がるということでしょう。アイコスの一部モデルには、無線通信機能があり、電子サービスの提供を拡大する意図もあるようです。


これから長期的な事業環境変化を見据えて、多くの企業がトランスフォーメーションを求められます。自社がどのようにトランスフォームしていくか、様々なオプションの中で最も自社にフィットしたものは何か検討し、ビジョンやパーパスを掲げて推進していく必要があります。


 
 
 

最新記事

すべて表示
チーフ・サステナビリティ・オフィサーは不要になりつつあるのか?批判派は、サステナビリティが財務的・運営上の重要性を帯びる中で、権限を伴わない影響力では不十分であるためCSOの存在意義が失われつつあると主張する。擁護派は、気候リスクから地政学、AIに至る複雑性の増大が、統合的なシステムレベルの経営幹部をこれまで以上に不可欠にしているとの反論を展開する。

過去20年間、チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)は、サステナビリティの進化の象徴的存在だった。企業がこの役職を設置することは、気候変動、社会インパクト、ガバナンス、透明性、レジリエンスなどへの真剣な取り組みを示すものだった。 状況は変わりつつある。一部では、CSOはもはや先駆者というより遺物と見なされ、建設的な存在というより官僚的だと見なされる傾向にある。CSOはますます不要になりつつ

 
 
 
サステナビリティとサステナビリティ経営の変遷。1990年代の環境経営、2000年代のCSR経営、2010年代のESG経営を経て、反ESGの動きもある中2020年代のサステナビリティ経営はどう進化するか?

サステナビリティおよびサステナビリティ経営が歴史的にどう進化してきたか、改めておさらいする。 サステナビリティは経済成長の負の側面としての環境問題への対応からはじまった。1962年にはレイチェルカーソンが「沈黙の春」で化学物質の汚染問題を提起している。日本でも1950年代後半から1970年代の高度経済成長期において、工場などから発生した有害物質によって公害病が引き起こされた。WWFやグリーンピース

 
 
 
「生産性と人間性をどう両立するか」「成功できるかではなく、役に立てるかを人生の軸とせよ」サステナビリティ経営や生き方に重要な示唆を与えるP.F.ドラッカーとジム・コリンズの対話

経営にサステナビリティを統合するうえでの理論的支柱となっている代表的経営思想家として、P.F.ドラッカー、ジム・コリンズがあげられる。 ドラッカーは、 「マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させる上で三つの役割がある。①自らの組織に特有の使命を果たす、②仕事を通じて働く人たちを生かす、③自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献することだ」 というサステナビリティ経営

 
 
 

コメント


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page