「気温よりも人間の福祉へのインパクトを成功の指標とすべき。健康、農業などの適応戦略を重視すべき」気候変動に対するビル・ゲイツ氏の主張は現実を見据えている
- takehikomizukami
- 18 時間前
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ビル・ゲイツ氏がブログ「Gates Notes」で10月29日に公開したエッセイ「気候に関する3つの厳しい現実(Three Tough Truths About Climate)」が話題となっている。これまで気候変動対策を重視してきたビル・ゲイツ氏がスタンスを変更したと解釈されている。
「3つの厳しい現実」とは以下だ。
1.気候変動は深刻な問題だが文明を終焉させるものではない
2.気温は気候対策の進歩を測定指標として最適なものではない
3.気候変動に対抗するには健康と繁栄が最も重要だ
これまでの気候変動対策では、気温上昇を止めることが最優先とされてきたが、気温上昇は人類の文明を終焉させるものではなく、最貧国の人々が貧困や病気に苦しむことを防ぐのがより重要だという主張だ。
主張の背景には、豊かな国々が貧困国の支援を削減していることに対する懸念がある。また、気温上昇を抑えることを重視するあまり、気候変動対策投資の優先順位を間違えているのではないかとの懸念がある。
例えば、数年前にある低所得国がGHG排出削減のために合成肥料を禁止したが、農業の生産性が下がり食料不足、食料の高騰につながった。また、富裕国の株主の圧力により金融機関が火力発電への融資を厳しくし、貧困国の人々の生活を支えるエネルギーへの低利融資が得られにくくなっている。
ビル・ゲイツの主張は現実を客観的に見据えたものだ。実際問題、1.5℃目標を実現するのは不可能というのは、専門家の間でも暗黙的な共通認識となっているだろう。2-3℃の気温上昇に抑えて、それに適応するのが現実解と考えている専門家は多いはずだ。
GHG排出目標を掲げることばかりに注力するのではなく、グリーンプレミアム(クリーン技術導入にかかる追加費用)を下げて技術を広く入手できるようにしていくべき。気温上昇よりも人間の福祉へのインパクトを評価軸として適応を重視し、エネルギー、健康、農業
を戦略の中心にすえるべき。そうしたビル・ゲイツ氏の主張も人類を守る気候変動対策としては現実的だ。
1.5℃目標を取り下げることは、気候変動緩和への取組みをなし崩し的に後退させる懸念があるため慎重であるべきだが、現実を見据えた適応の取組み強化は必須だろう。
COP30前に示されたビル・ゲイツ氏の意見。どこまで議論に反映されるだろうか?
(参考)“Three tough truths about climate”, GatesNotes

