top of page
検索

「パーパスはシェアード・バリューである。」(M.E.ポーター)

takehikomizukami

昨年まで毎年、5月に開催されるCSVの世界大会とも言える、シェアード・バリュー・サミットに参加していたのですが、今年は転職したてのこともあり、参加しませんでした。その代わり、Share Value InitiativeのHPにアップされている今年のビデオを視ています。


今年のサミットのテーマは、「Purpose」。毎年のサミットのハイライトとなっているマイケル・ポーター教授のプレゼンでも「Purpose」について語られています。


ポーター教授は、例年どおり「社会は問題を抱えており、その問題を解決できるのはビジネスだけだ。税金に頼る政府、寄付に頼るNPOは課題解決ためのリソースに限界がある。自ら富を生み出しつつ課題を解決できるビジネスだけが、十分なリソースを提供し、持続可能にスケールしながら課題を解決できる」としています。そして、現在の資本主義が抱えている問題を解決するには、企業は自ら高い目標を掲げ続ける必要があり、その軸となるのがパーパスだとしています。


その後、ビジネスと社会の関わりの変遷、ミルトン・フリードマン的な「株主価値の最大化こそが、ビジネスの社会貢献だ」という考えから、フィランソロピー、CSR(ポーター教授は基本的に社会規範に対するコンプライアンスと捉えている)、トリプルボトムライン、サステナビリティ、コンシャスキャピタリズム、Bコープなどの様々な考えや取り組みについて、語っています。サステナビリティについては、エコノミストの視点からは利益と相反すると考えられており、コントロバーシャルだとしています。また、最近は、企業の社会価値を測定するトレンドもあるが、ESGの多くのフレームワークはチェックボックス的であり、マテリアリティはリスクに着目しているとしています。


そして、「パーパス」がトレンドとなっているとして、ブラックロックCEOラリー・フィンク氏のレターの内容を解説し、2019のレターのほうが、利益との結びつきを語っており面白いとしています。ただ、まだパーパス・ステートメントを掲げる企業は少なく(フォーチュン500のうち46社)、パーパス・ステートメントを掲げている企業も、「自社が何者であるか」「どのような社会インパクトを生み出すか」「戦略との結びつき」といったことを十分示していないと、具体的事例をいくつか挙げて、指摘しています。この中で、ポーター教授のお気に入りのディスカバリー・ヘルスことは、褒めています。


最後にポーター教授は、企業と社会の関わりについて、いろいろな動きはあるが、「シェアード・バリューこそが社会インパクトをレバレッジできる」「パーパスには方法論がないのが問題だが、シェアード・バリューには方法論がある」などとした上で、「ビジネスのパーパスは、経済的価値とともに社会シェアード・バリューを生み出すこと」、さらに「パーパスは、シェアード・バリューだ。パーパス・ステートメントの中心に、如何に社会とビジネスの両方に成長と成果生み出すかを示すべきだ」としています。


ポーター教授は、「パーパスは、シェード・バリュー」というレターをラリー・フィンク氏に書くとも言っていましたので、来年のラリー・フィンク氏のレターのタイトルは、「パーパスとシェアード・バリュー」になるかも知れません。

 
 
 

最新記事

すべて表示

トランプ政権の誕生は、サステナビリティの長期的な発展に向けた小さな揺り戻しに過ぎない。ここから何を学べるかを考え、さらなるサステナビリティの発展につなげていくことが大事だ。

パリ協定からの離脱、EV普及策撤廃、風力発電向け連邦政府の土地利用禁止、LNG開発と輸出の促進、政府のDEIの取り組み廃止、男女以外の性は認めないなど、トランプ政権は反ESG/サステナビリティの政策を矢継ぎ早に打ち出している。...

「サステナビリティ経営」は、「企業を長期的に持続可能にする経営」ではない。

最近、「サステナビリティ経営」=「企業を持続可能にする経営」と解釈している経営者、ビジネスパーソンが多いと感じる。しかし、サステナビリティ経営が求められているのは、企業活動の影響により環境・社会問題が深刻化する中、世界を持続可能にするために経営のあり方を変えていく必要がある...

社会課題を解決するイノベーションを生み出し、マーケティングでその市場を創造する。イノベーションとマーケティングは、社会課題解決ビジネス(CSV)においても基本的機能と言える。

ドラッカー曰く、「企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は2つの、そして2つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。」 この言葉の意図は、「企業の役割は、イノベーションで新たな価値を生み出し、マーケティングでその市場を創り広げること」...

Comentarios


Copyright(c) 2019 Takehiko Mizukami All Rights Reserved.

bottom of page