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被災者に持ってほしい「ストックデールの逆説」マインド

  • takehikomizukami
  • 2024年1月13日
  • 読了時間: 3分

私の実家は富山県氷見市。能登半島の付け根にある。

1/1地震発生。東日本大震災の後に見た石巻市の状況が脳裏に浮かぶ。被害の大きかった南浜地区と地形が似ていることもあり、同様の津波が来れば氷見市街区は壊滅的になるだろうと考えていた。


両親に避難を強く促すが、認知症・介護状態の父を抱えていることもあり、母は頑として動こうとしない。電気と通信は使える。東日本大震災のときの津波の高さは8~10m以上。今回想定される津波は3~5m。このあたりなら最悪2階に上がれば何とかなるかと考え、外への避難はあきらめる。


その後は断水が続く。地震発生直後に少し水が出ている間に風呂にためておいたのが良かった。トイレは流せる。


実家は車がなく、水、食事、衛生用品の調達などはもっぱら市内に住んでいる姉頼み。コミュニティが機能していれば、近所で助け合うなどあるのだろうが、高齢化が進み近所付き合いが減る中新型コロナが追い打ちをかけ、コミュニティが弱っていると感じた。コミュニティの再生が課題だ。


市の情報を見ると実家周辺の断水の復旧の見通しは立たないようだ。母は「すぐ出るようになるやろう」と楽観的だが、「暫くは出ないと思っておいたほうがいい。水が出なくても生活は何とかなる」と伝えた。ここで頭にあったのがビジョナリーカンパニー②で紹介されている「ストックデールの逆説」だ。


「ストックデールの逆説」は、ジム・ストックデール将軍に由来している。ストックデール将軍は、ベトナム戦争で捕虜となり、8年間の捕虜生活で、20回以上にわたって拷問を受け、いつ釈放されるか見込みがたたない状況を生き抜いた。さらには、捕虜の責任者の地位を引き受け、できるかぎり多数の捕虜が生き残れる状況を作りつつ、捕虜が敵に利用されないように全力を尽くした。


ビジョナリーカンパニー②の著者ジム・コリンズがストックデール将軍と合って、どのようにして苦境に対処したのか聞いたとき、将軍はこう答えた。「わたしは結末について確信を失うことはなかった。ここから出られるだけでなく、最後にはかならず勝利を収めて、この経験を人生の決定的な出来事にし、あれほど貴重な体験はなかったと言えるようにする。」


次にジム・コリンズが「耐えられなかったのは、どういう人ですか」と聞いたとき、将軍はこう答えた。「それは簡単に答えられる。楽観主義者だ。」ジム・コリンズが先ほどの答えとの矛盾に混乱していると、将軍はこう答えた。「楽観主義者だ。そう、クリスマスまでには出られると考える人たちだ。クリスマスが近づき、終わる。そうすると、復活祭までには出られると考える。そして復活祭が近づき、終わる。つぎは感謝祭、そしてつぎはまたクリスマス。失望が重なって死んでいく。」


将軍はさらに続けた。「これはきわめて重要な教訓だ。最後にはかならず勝つという確信、これを失ってはいけない。だがこの確信と、それがどんなものであれ、自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視する規律とを混同してはいけない。」


奥能登では、まだまだ厳しい状況が続くだろう。被災した方々は、復旧には時間がかかるという現実を見据えつつ、「能登は必ず復興する」という希望・確信を失わないようにして欲しい。支援側の政府、市民、企業は、被災者が日々の生活を持続できるようにするとともに、復興に向けた希望・確信を持ち続けられるよう最大限のサポートをして欲しい。

 
 
 

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