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サステナビリティ担当者は、フォーカシングイベントに感度高く対応すべき

  • takehikomizukami
  • 2020年12月13日
  • 読了時間: 3分

菅総理が、「2050年までに温室効果ガス実質ゼロ」を宣言して以降、日本でも脱炭素に向けた動きが加速しています。サステナビリティの動きは、何かをきっかけとして急速に動くことがあります。日本にける脱炭素に向けた急速な動きは、日本における政権交代と、米国において気候変動問題への取り組みに積極的なバイデン氏が大統領選で勝利したことがきっかけです。


マスコミや市民、政策担当者が急速に社会的課題に注目し、対策を進めるきっかけとなる出来事を“フォーカシング・イベント(Focusing Event)”と言います。日米の政権交代もフォーカシングイベントの一つですが、サステナビリティの領域は、フォーカシングイベントで急速に動くことがあるので、担当者は感度が求められます。


最近で言えば、2019年には、グレタ・トゥーンベリ氏の気候変動ストライキが世界的に広がり、欧州を中心に気候変動に関する政策、取組みが加速しました。


2018年には、鼻にストローが突き刺さったウミガメの動画、餓死したクジラの胃の中から大量のプラスチックごみが出てきた画像などがSNSで広く共有されたことで、海洋プラスチック問題が急速に注目されました。


2017年には、フォルクスワーゲンのディーゼル不正問題を受けて、欧州自動車メーカーが、ディーゼル車でCO2規制に対応する戦略が狂いEVシフトを進めざるを得ない状況になったため、欧州主要国で、2030年または2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止する方針が示されるなど、急速に自動車の脱化石燃料化の動きが進みました。


2015年には、渋谷区で、同性カップルに対して「結婚に相当する関係」と認める「パートナーシップ証明書」を発行するという、日本で初めての条例が可決・成立し、LGBTが急速にマスコミで報道されるようになり、日本で注目されるようになりました。


2013年には、バングラデシュのラナ・プラザ崩落事故で、アパレル業界のサプライチェーンにおける劣悪な労働環境が明らかになったことで、アパレル業界を中心に、サプライチェーンの人権問題への関心が高まり、取組みが急速に進みました。


2010年には、グリーンピースのネスレに対する、キットカットを子供が食べると血が滴るオランウータンの指になるショッキングなビデオを活用したキャンペーンがきっかけで、インドネシアやマレーシアの森林破壊につながるパーム油の問題に注目が集まりました。


それ以前にも、ナイキの東南アジアの委託工場での強制労働・児童労働がNGOに指摘され不買運動に発展するという事件をきっかけに企業のサプライチェーンにおける人権問題に注目が集まるなど、サステナビリティ領域では、様々なフォーカシングイベントがあります。


サステナビリティ担当者は、次にどのような動きが来るか想定し、社会やNGO等の動向をウォッチしつつ、フォーカシングイベントには感度を高くし、政策やステークホルダーの変化に先んじて備える必要があります。

 
 
 

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