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コーポレートガバナンス・コード改訂が求めるCSV経営

  • takehikomizukami
  • 15 時間前
  • 読了時間: 3分

先般、「日本の稼ぐ力を取り戻す」ことを目的として導入されたコーポレートガバナンス・コード(CGコード)が改訂された。今回の改訂では、コードへの形式的な対応が目的化していることが課題として認識され、原則数を大幅に削減するなど、「実質化」を重視した内容となっている。


サステナビリティに関する規定も大きく見直された。従来は「第2章 株主以外のステークホルダーとの適切な協働」に位置付けられていたが、「第4章 取締役会等の責務」に移され、原則では「取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティを巡る課題に積極的・能動的に取り組むべき」と規定された。


従来の「上場会社は、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題について、適切な対応を行うべき」という規定と比べると、サステナビリティを企業価値向上のための経営課題として位置付ける姿勢がより明確になったといえる。


その背景には、サステナビリティが中長期的な企業価値を左右する重要な経営課題であり、投資家による企業評価においてもサステナビリティ情報の重要性が高まっていることがある。また、ISSB基準をはじめとする国際的な情報開示基準の整備・適用が進展していることも踏まえ、サステナビリティをコーポレートガバナンスの中核的なテーマとして位置付け直したものと考えられる。


さらに、解釈指針では、気候変動などの地球環境問題への対応、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、自然災害等への危機管理、多様性の推進など、幅広いサステナビリティ課題への対応が求められている。これらの課題については、単なるリスクの低減にとどまらず、新たな収益機会として捉え、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上につなげることが期待されている。


今回の改訂は、サステナビリティについても「日本の稼ぐ力を取り戻す」ための重要な経営要素として、「中長期的な企業価値の向上の観点から、積極的・能動的に取り組むべき」と明確に示したものである。開示対応に偏りがちなサステナビリティへの取組みを、企業価値向上に資する経営へと「実質化」することが求められているのである。


サステナビリティ経営は、1990年代の環境経営(企業活動に伴う環境負荷への対応)、2000年代のCSR経営(環境問題に加え、人権など社会課題に対する企業の責任としての対応)、そして2010年代以降のESG経営(環境・社会課題をリスクと機会の両面から捉える経営)へと発展してきた。


その背景には、ISO14001、GRI、ISO26000、SDGs、TCFD、SSBJなど、多様なマネジメントや情報開示のフレームワークの登場がある。これらは企業のサステナビリティ経営を促進する上で大きな役割を果たしてきた一方、フレームワークへの対応そのものが目的化し、形式的な取組みに陥る要因にもなっている。


今回のCGコード改訂を契機として、サステナビリティ経営を開示や形式的な対応から脱却させ、企業価値向上につながる実践へと転換していく必要がある。その鍵を握るのがCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)の考え方である。


CSVは、「製品・サービス」「バリューチェーン」「クラスター(ビジネスエコシステム)」という3つのアプローチを通じて、社会課題の解決と企業価値の向上を同時に実現する経営戦略である。企業は、自社のビジネスモデルや市場環境に照らしながら、この3つのアプローチを実践することで、サステナビリティを企業成長の原動力へと転換していくことが求められる。(CSVの3つのアプローチについては、拙著『サステナビリティ―SDGs以後の最重要生存戦略』などを参照いただきたい。)


今回のCGコード改訂は、サステナビリティを『守り』ではなく『稼ぐ力』へ転換することを企業に求めている。その実践論こそがCSVである。

 
 
 

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