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「未来を創るイニシアチブ」に日本企業はもっと能動的に対応すべき

  • takehikomizukami
  • 2020年8月8日
  • 読了時間: 4分

サステナビリティの世界では、企業、投資家、NGO等のマルチステークホルダーによる様々なイニシアチブが生まれています。その背景には、サステナビリティ課題解決のためのビジネス環境を整備するには、1社だけでは不可能で、マルチステークホルダーによるイニシアチブが有効であることが、証明されていることがあります。

イニチアチブには、商品に関するもの(MSC、RSPOなど)、業界に関するもの(Marine Stewardship Council, Roundtable on Sustainable Palm Oil, Textile Exchange, Renewable Energy Buyers Alliance)、業界に関するもの(Fashion for Good, Sustainable Packaging Coalition, Climate Collaborative, Green Grid)、地域に関するもの(Midwest Row Crop Collaborative, Sustainable Silicon Valley, Businesses for the Chesapeake Bay)、特定にイシューに関するもの(サプライチェーンに関するThe Sustainable Consortium)などがあります。

イニシアチブには、NGOが中心となって創設されているものも多くあります。最近は、企業や投資家がサステナビリティ課題解決を推進することが増えていることもあり、NGOにとっても、企業や投資家と協働することが、社会課題解決の有効なアプローチになっています。そして、WWF、WRI、BSRなど、企業との友好的なアプローチを志向するNGOも増えています。

企業にとっては、イニチアチブに参加するためには、一定のリソースが必要となり、また、サステナビリティ課題解決に向けた義務を負うこととなり、負担となるものですが、最近は、それ以上の信頼資本や競争優位獲得の機会が得られると考えられるようになっています。

マルチステークホルダーによるイニシアチブは、サステナビリティ課題への注目が集まるとともに加速しており、最近も以下のような重要なイニシアチブがスタートしました。

Transform to Net Zero: NGOのBSR、EDFとマイクロソフト、ダノン、ナイキ、ユニリーバ、スターバックス、メルセデスベンツなどによる2050年までにネットゼロを実現しようとするイニシアチブ。リソース、戦略、脱炭素に向けた技術投資の情報などを共有し、ネットゼロに向けた政策導入を働きかけ、2025年までにネットゼロに向けた動きを加速するために、バリューチェーン全体、スコープ3でのSBT採用の促進など、具体的成果をあげることとしています。

Water Resilience Coalition: NGOのPacific Institute、WRCとABインベブ、ディアジオ、ダウ、GAP、マイクロソフトなどによる2050年までに事業での水資源インパクトをポジティブにすることをコミットするイニシアチブ。2050年までに、事業に関連する水ストレスの高い水系に関し、水資源の利用可能性、アクセス、水質のインパクトを測定しポジティブにすること、サプライチェーン全体で水レジリエンスを高める行動を推進すること、水レジリエンスへのアンビションを掲げるムーブメントを促進することにコミットしています。

Partnership for Carbon Accounting Financials: ASN銀行、ABNアムロ、トリオドス銀行などの欧州の銀行が主導して設立され、シティバンク、バンクオブアメリカ、モルガンスタンレーなどの米系金融機関も参加する、Global Carbon Accounting Standardを策定し、100以上の金融機関に展開しデファクト化しようというイニシアチブ。最近、大手金融機関69社のサポートを得て、投融資のポートフォリオのカーボンフットプリント測定手法・ルールとしてのGlobal Carbon Accounting Standardの初版原案を発表しています。

Center for Climate-Aligned Finance: Rocky Mountain Instituteとバンクオブアメリカ、ゴールドマンサックス、JPモルガンチェース、ウェルズファーゴにより設立された、グローバル経済のネットゼロへの変化に向け金融セクターをサポートし、金融セクターの気候アクションのゴールドスタンダードを策定しようとするイニチアチブ。まず、カーボン排出量の多い産業のリーダー、顧客、金融機関を集め、気候変動対策への合意を得ようとしています。

このようにイニシアチブを通じて、気候変動その他のサステナビリティ課題を解決しようという動きが世界的に加速する中、日本企業の存在感は薄いままです。サステナビリティのイニシアチブは、不確実性が増す世界において、未来を予測する最善の方法である「未来を創る」動きです。日本企業も能動的に「未来を創る」動きをしていくべきではないでしょうか。

※本ブログは、Greenbiz.comの記事”From water to carbon, 5 new sustainable business collaborations”をベースにしています。

 
 
 

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