top of page
検索
  • takehikomizukami

SMARTからSMARTERへ。環境長期目標をどう設定し、実践するか。

SBTi(Science Based Targets initiative)のもとで意欲的なCO2排出削減目標を設定することにコミットしている企業は、世界で550社を超えています。日本企業でも、これまで環境長期目標の設定に慎重だった企業もどんどん長期目標を設定してきています。環境影響の大きい企業にとっては、一つのノームになってきています。SBTに関連して、サステナビリティ長期目標は、SMARTからSMARTERにシフトすべきという記事があったので、紹介します。


SMARTは、Specific(明確で具体的)、Measurable(達成度が測定可能)、Attainble(達成可能)、Relavant(経営目標に関連)、Time Based(達成期限を設定)という目標設定の必要要素を示したフレームワークで、40年ほど前から使われています。一方SMARTERは、Science-based(科学的知見にも基づく=パリ協定の目標に整合)、Moving the pack(行動に結びつく)、Ambitious(野心的)、Relevant(経営に関連・パリ協定に関連)、Timely(時機を失しない)、Earth-bound(地球のことを考える)、Reaching out(手を伸ばして届く)です。パリ協定に基づくアウトサイトインの野心的な目標でありながら、達成すべきものとして組織の行動を促進する目標といった感じでしょうか。


SMARTERな目標を設定するには、プロセスも重要でしょう。環境部門だけで検討するのではなく、事業部門も納得し、経営の強い意思のもと設定する必要があります。経営や事業部門が、野心的な長期環境目標の必要性を十分理解した上で、議論に参加してアクションプランまで落とし込み、マネジメントしていかなければなりません。


長期環境目標設定の必要性に関して、SBTイニシアチブは、SBT設定のメリットとして、「イノベーションを後押しする」、「(化石燃料の価格上昇が見込まれる中)コスト削減、競争力につながる」、「企業の信頼と評判を築く」、「政策の変更に備える(または政策に影響を与える)」の4つを挙げています。また、CDPは、185の企業エグゼクティブへのアンケート結果に基づき、SBTの意義として、「ブランドの評判」、「投資家の信頼」、「規制に対するレジリエンス」、「イノベーションの促進」、「コスト削減」、「競争優位」の6つを挙げています。アンケートによれば、企業は実際にこうしたメリットを感じているとのことです。


また、長期環境目標設定については、まずは気候変動について検討することになるかと思いますが、事業バリューチェーンごとのカーボンフットフットプリントを可視化し、カーボン排出のホットスポットを把握します。そして事業ごとの機会とリスクを特定して、スコープ1・2・3を含めたSBTを設定します。その後、カーボン排出削減等のロードマップを策定、バリューチェーンにおけるパートナーを巻き込みながら実践していきます。


最近、アマゾンがデータセンターの100%再生可能エネルギー化のコミットメントを、アマゾンウェブサービスの顧客である石油・ガス企業に配慮して取り下げたとして非難され、6,000人を超える従業員がジェフ・ベソス氏に気候変動の取り組みを要請するレターを送付する事態になっていました。多くの企業が長期環境目標を新たに掲げていますが、実践フェーズでは、いろいろなチャレンジがあるでしょう。


しかし、真摯に長期環境目標を実践することは、前述のメリットに加え、アマゾンの事例からも分かるように、人材の惹きつけ・ロイヤルティの獲得というメリットもあります。経営としての本気の取り組みが必要でしょう。

閲覧数:26回0件のコメント

最新記事

すべて表示

トライセクター型人財がより求められる時代になっている

拙著「サステナビリティ -SDGs以後の最重要生存戦略」で、民間、公共、市民社会の3つのセクターの垣根を越えて活躍、協働するリーダーである「トライセクター・リーダー」を紹介しています。 具体的な人物としては、アップルでサプライヤーを巻き込んだ再生可能エネルギー100%推進などを推進するなどサステナビリティの取り組みを先導するリサ・ジャクソン氏などを紹介しています。ジャクソン氏は、2009 年から2

SXとは何か?どう実践するか?

日本人は「X」が好きなようだ。古くはCX、UXが広く使われ、最近はDXから派生して、サステナビリティの領域で日本オリジナルのSX、GXが広く使われている。CX、UXはExperienceだったが、DX以降はTransformationだ。変革が苦手な日本政府、日本企業が言葉だけでも景気のいいものをということで広めているのだろうか。言葉だけ景気がいいのは、最近の政治家にも言えることだが。 それとも日

せめてセルフレジでは、紙レシートを発行しなくても良いようにして欲しい

皆さん、紙レシートはどう扱っていますでしょうか? 私はそのままゴミ箱に捨てています。手間をかけて環境に負荷を与えるLOSE-LOSE、共有損失の創造、シェアードロスになっています。 一枚一枚のレシートは小さなものですが、大量に生産・廃棄されているため環境負荷も馬鹿になりません。日本全国で年間に消費されるレシート用紙は約5.4万トンとされ、A4サイズのコピー用紙約135億枚に相当するとのことです。

bottom of page